第2話 真の最強を決めましょ!
魔法陣の中で目覚めた少女。それは昨日と同じでも、いつもの目覚めとは違う。リアルに、何度やられても立ち直れる力を持ったことで、自信を得た。そしてすぐさまおばさんの元へ向かった。
◯
「何だって!? ネオ、正気かい?」
「もちろん!」
「両親がいないあんたをここまで育てたのはこの私だよ! それなのにいきなり旅に出るなんて」
「しょうがないでしょ、昨日あたし最強だってことに気づいたんだから!」
「あんたねぇ、ホント……恩を知れ!」
「恩を、知れ?」
「そうだよ。恩を知れ」
「恥を知れじゃなくて?」
「さっさと行っちまいな!」
「あ、ありがとう」
おばさんは少女こと、ネオにいつも厳しかった。ネオは両親のいない寂しさ、おばさんの厳しさ、ただ石の発掘を繰り返す日々に疲れていた。
しかし自信を持ったネオの心には、何だかおばさんから表面的でない優しさを受け取る余裕があった。
◯
ネオはそれからアテのない旅をする。しかし
そのことを強いて言うなら、ネオは同じことを繰り返し、同じ失敗を繰り返さない。
「ふふ、ふふふん、ふーんふふんふーん♪」
のんきに鼻歌を奏でるネオに試練が訪れた。それは突然のスコールに襲われたある日。旅先の洞窟で雨宿りしようとしたら、そこにネオと同じくらいの背丈で、同じようなマントをし、同じ長さの杖を持った黒髪ショートの少女がいた。
「あなた、もしかして魔法使い?」
ネオは少女の杖を見つめて呟いた。
「そうだけど……キミは誰」
「あたし、最強魔法使いのネオ!」
「へぇ。ボクも最強魔法使いのオルだよ」
「えっ。でも、最強っていうのは普通、この世に一人だよ」
「奇遇だね。ボクもそう思ってた」
静かに、にらみ合う二人。先にネオが口を開いた。
「いいじゃない! 今から真の最強を決めましょ! でもちょっと待っててね!」
「乗った。キミとは気が合いそうだ。じゃあ十分に準備してきなよ」
ネオは雨が上がったのを見届けてから、荒野へ出る。目的はもちろん、
これさえ描けば、負けることはあっても、負けるはずはない。はずだった。
「なんで、どうして」
何度全回復しただろう。相手の隙が見えない。本当に最強なのはオルなのか。いや、隙は見えたはず、倒したはずなのに、気づいたら魔法陣に戻って来ている。
「もしかして!」
ネオは気づいた。オルも同じ魔法を使っているのではないかと。だから何度やっても絶対勝てるし、絶対負ける。
「どうすれば……あっ」
そこで一つ方法を思いついた。それはリスクもあるやり方。自らの魔法陣を消すこと。そうすればどうなるか。
ネオが勝てば、相手は魔法陣を使って繰り返す。しかしもしネオが自らの魔法陣を消した状態で勝利すれば、ネオが勝ったままの世界線と負けた世界線に分岐するのではないかと。
それはある意味、これまでにネオが竜に勝った世界線と負けた世界線があることを意味する。実際にそうなのかはわからない。
さらにリスクはある。ネオはこれまで
ええい、このままではラチがあかないと、ネオは勝利の世界線に行けるよう賭ける。だから足で魔法陣を消した。そして真の最強の魔法使いになるため戦いに向かった!
はずだった。
「「ごめんなさい!」」
「「え」」
二人の声がハモった。どうやらネオもオルも、共に魔法陣を消しあって、正々堂々戦うことにギリギリでビビったみたいだ。そもそも普段、自分だけが時間をやり直すという、ある意味理不尽なチートに頼っている。それを手放して、何が起こるかわからない状況で戦う度胸など二人にはなかった。
「えへへ、ごめんね」
自分の帽子に触れて謝る仕草のネオ。
「ボクも調子に乗りすぎたみたいだ」
ネオと同じ仕草で謝るオル。
「じゃあ、あたしたち二人が最強ってことで」
「いや、きっと二人とも最弱だよ」
にらみ合っていた二人が今度は笑い合った。でも雨上がりに虹がかかった空がずっとは続かないように、二人は一緒にいられない。ネオが切り出す。
「あたしたち、すごい魔法使えるけど、二人で使ったら打ち消し合っちゃうんだね」
「気が合うと思ったのにな」
「別々の道を行こ」
「そうか、これがボクの代償……」
「え、何?」
「いや、ただの推測なんだけどね。こんな凄い魔法には何か、代償が付きものだと思うんだ」
「ふぅん。じゃあ、あたしはもう旅立つ前から払ってたのかなぁ」
「何かあったのかい?」
「まぁ、色々ね。じゃあ、バイバイ!」
ネオは明るく手を振った。その日の夜、ネオはまた
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