第三話 お出かけの時間です!其の一
「ふぃ〜…なんとか今日中におわれてよかったです…」
「儂…もう…動けない…」
「だいじょうぶですか?最近こしがわるいとかはなしていらっしゃったですもんね」
「お〜いちちち…」
数時間後。
(殆どがイチが動いただけであったが)いろんなものを運び出していたカクヅチの邸の庭はすっかりきれいになり、手入れを怠っていた庭の芝まで刈り揃えられ、カクヅチの玄関前だけは、リフォーム番組に出してよいほどにきれいにピカピカになった。
ちなみに一つ一つが洋服箪笥ほどもあるゴミ袋の数々は、イチが予め依頼しておいたゴミ収集業者に丸投げした。
そして今、カグヅチとイチは邸の庭に面する縁側に腰掛けている。
「やはり年寄りには重労働はつらいわい…」
「うう…お悔やみ申し上げます…」
「それは儂が死ぬときにゆうとくれ…」
イチは心配そうな顔をしながら立ち上がり、カグヅチの後ろで肩を揉みだす。
「あれ?でも、カクヅチ様は一昨日ものすっごい火をひとりで消してた気が…」
「アレは儂の限定的な『すーぱーぱわー』というか…火の神の特殊な、『ばふ』というか…」
実際にそうではある。神によるが司る特定の事象に対して他のどんな誰よりも強くなるという性質をほとんどの神は持っている。
例えばカクヅチの場合、『火』『炎』や、『燃焼できるもの』に対する耐性及び特攻性がある。
つまりは、ゲームよりはかなり(捉え方によってはそれこそ無限)あるものの、すくみのような関係が、神にも存在するということである。
「儂は火を目にすると、若い頃のように体が動くのでの。でもその反動もものすごく…あ〜そこ、もっと強く…」
「ふふ♪はーい」
気持ちよさそうな顔をしながら肩もみを受けるカグヅチを見てイチはニッコリ。
しかし…イチの顔はすぐにしゅんとなってしまう。
「でも…うぅ…これじゃあ買い物いけませんね…」
「うぇ?」
「え?あ、いやぁさっきお掃除していたときにカグツチさまのおようふくや食器をみたんですが、あまりにもホコリが被っていたり洗っていなかったのでおもわず捨ててしまいまして…」
「あ、ううむまぁそれはいいんじゃが…」
「それで、せっかくならいっしょに服屋やざっか屋を巡ってカクヅチさまに似合うものをみつくろって差し上げようと思ったのですが…」
「あ…いや…」
「残念です…いくら私よりも長生きしている神さまでも、『じびょー』には逆らえないですよね…」
イチの顔こそ見えないものの、声色が次第に落ち込んでいる事に気づき、胸が詰まるカグツチ。
そして、焦燥。
(こ、これは、もしやイチを悲しませた『判定』に入るのか…?も、もしそうだとしたら…)
『理解ってるヨネ?』
「ヒィッ?!」
「…?どうしたんですか?」
「い、いやなんでもないのじゃすみませんごめんなさい」
「ふえ?」
急に謝り始めたカグヅチに困惑するイチ。小首をかしげる姿も可愛らしい。
キョロキョロとあたりを見渡しながら、振り向いてイチを見、大きな声でカグヅチは話しだした。
「そ、それでじゃ。儂の腰は大丈夫じゃから、一緒に小間物やらを見繕いに行こうぞ!」
「え?い、いいんですか?で、でも…」
戸惑うイチ。
それを黙らせるようにカグヅチはイチの肩を掴む。
「なぁ〜に!どうってことはないわい!儂は火の神にしてイザナギ様に殺されかけても生き残ったという、火之迦具土様じゃぞ!儂に恐れるものはなにもない!」
「は…はぁ」
「よし!それじゃ、早速行こうとするかの!ホイ!」
掛け声とともに、カグヅチはイチの脇をがっしと掴んで放り投げる。
「うわへぇぇぇぇぁ!!」
すると、イチの足の間にカグヅチの頭がすぽっとフィット。
「え?肩車?」
「『愛宕消防団たるもの火の手が上がれば、とお数えるまでに駆けつけよ』ぉぉぉ!」
「ちょっと!急になんドヒィァァァァァァァァァァぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ…!」
刹那、カグヅチとイチの姿は邸から消え去った。
縁側に残ったのは、イチが淹れようとしていた急須と2つの湯呑み(ちなみにかなりの値打ちがするものなので、イチは壊れないようにとお盆を慎重に慎重に運んでいた。)の残骸だけであった。
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『うんうん!カグヅチ様は、やっぱり分かってるお方だよ!どこかの誰かさんとは違ってネ?』
「はいはい。イクヨー!オイテクヨー!意味深な空気出さないノー!」
『ア、ちょっとまってよぉ…』
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区切りが良さそうなのでここで切った。
改めて見ると文字数少ないんで、次の話とつなげる可能性大。
あと、多分二週間ぐらい失踪の可能性大。
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