第二話 お片付けの時間です!
「お、お〜い…大丈夫か…?イチ…」
「…むぐぐぐぐ」
戸を開いた瞬間出てきたのは…。
服や、事務用品、家具はもちろんのこと。階段、畳、トーテムポール…
終いには封印された妖怪に怨霊…更にはどことなくヤバげな雰囲気を纏う剣やら盾やら…
色んな物というもの。それがイチのお腹のにのしかかってきた。
「た、たしゅけて…かぐじゅちさみゃ……むぐ、すぐもどりm」
「…イチ?どうしたんだ…?右手を上げて…って沈んで行くでない!!おーい!イチー!!」
_______________火の神発掘作業中…______________
「むむむむ…ぷひゃっ!!ふ〜…まさかのげんかんですか…危うく押しつぶされるとこでしたよ…ホントに」
五分ほどして、発掘作業が完了した。
イチは、砂埃をぱっと払う。
なだれ込んできたものは、ほとんどホコリを被っているようだ。
「本当ににすまぬ…事前に言っておけばよかったのぅ。」
「どおりできんきゅういらいあつかいだったわけですね…これじゃはいれないわけだ…」
「たまには玄関から帰ってみるかと意気込んだら、扉が何故か上手く開かなんで…嫌な予感がしたのでな。すぐに連絡させてもらった次第じゃ。ま、その気になったら別の扉があるから、そちらから入ればいい話なんじゃが…何分今日はお客が来るもんでの…」
「いえいえ!気にせずに!…さいしょに来たときと比べればマシな方ですよ…」
そう言って、若干…というか結構瞳を暗く濁らせるイチ。アレはまさに悪夢であった…と脳内のイチは語る。彼女の数少ないトラウマの一つだ。
カグツチもその時のことを思い出しているのか、乾いた笑いしか出てこなかった。
「ハハハ…あの時は玄関どころではなかったからの…」
「…わらいごとじゃないですよ?」
「…」
「ささ!逆にはこびだすてまがはぶけたとかんがえて…取りかかりましょう!」
「お〜…」
こうしてビミョーな雰囲気でお屋敷のお掃除が始まった。
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片付けを始めて二十分。
と言っても、玄関で片付けをするには少し手狭…なにせ尋常じゃないモノの山なので、この二十分はずっとカグツチ邸の中庭に山を動かしていた。
家から飛び出るほどに散乱した物品の数々はまだまだ玄関前から減る様子がない。
「…カグツチさま、これは?」
「おお!コイツは儂愛用の火消し用具、『纏』じゃ。こんなところにあったとは…」
「おお!これがウワサの…って!いままでなくされてたんですかっ?!」
「まぁ…正直な話、儂炎の中にいても平気じゃからの。火を消すくらいなんてことはない。じゃがこれを使ったほうがやりやすい感じはあるかのぅ…外聞的にも…」
「はぁ…」
カグツチ愛用の武器(?)が見つかったり―
「…ん?ってうわっ!なんでこんなところにけんが!?」
「あー!!それ、イザナギ様から賜った剣じゃ!やっと見つかったわい!」
「えっ?!イザナギさまから!?」
「うむ…というか、切りつけられたというか…これは
「なんてもの置いとくんですかっ!よくおやしきがきざまれませんでしたねっ!」
明らかにヤバげな、しかもイザナギ様の剣が発掘されたり―
「ぬぐぐぐぐ…カグツチさま手伝ってぇ…」
「お安い御用じゃ。」
「というかなんですかこれぇ…」
「ガスボンベじゃ。」
「え?」
「…ガスボンベじゃ。」
火を司る神が絶対に杜撰に扱っちゃダメなものが出てきたり―
「…」
「…」
「きゅーるっ♪」
「この子は…?」
「知らん…」
「なんでこんなところに…」
「分からん…」
ゴミの山から出てきた謎の生き物を保護したら懐かれたり…
トラブルは他にもかなりあったものの、掃除は進んでいく。
「ふむ…やはりイチは手際が良いのぅ…この儂があの紐をくくる速さに目が追いつかんとは…」
「もちろんです!ボクは『カミサマのお世話をするカミサマ』なんですから!このくらいのことはできてとうぜんです!」
話しながら、イチの手は残像を作る程に素早い手さばきで新聞紙の山をまとめている。カグツチの背丈以上もあった山が、もう片付きそうである。
と思ったら、いつの間にかどこからともなく、人間界の家ほどもある体積の盥と、カクヅチほどの身長もある洗濯板を取り出し、山盛りの服や、布団を全身を使ってゴシゴシと洗っていく。
「…やっぱり歳の割に身体能力がえげつないのぅ…」
「え〜?そうですか?」
「儂がその年の頃は無邪気に山を燃やしておったわい」
あっという間に洗濯物は邸の屋根の上に。
「とぅっ!」
掛け声とともに飛び上がり、これまたどういうわけかさっきまで立っていなかった竿が屋根の上にきれいに五本六本立てられており、一瞬で洗濯物をはたき、竿にかけ、洗濯ばさみをつけ、天気を確認し降りてくる。
「やっぱり、せんたくばさみはいだいです!これで風でたいりょうのせんたくものが、街に降り注ぐなんてことがなくなります!さぎょうもいくらか速くなりました!」
「いくらかとか言うレベルじゃないのじゃが。」
こんなになるまで育てた覚えはないのじゃがのぉ…と首をかしげるカクヅチ。
まぁ、そんなことどうでもいいかと思えるのが神というもの。
(昔は人間じゃと思っていたが今は儂と同等の神という存在。そりゃ、そうなるわの。大体火力『いんふれ』してるもんじゃ。)
と呑気に彼女が超高速でお片付けをするのを見守るのであった。
「ちゃんと手伝ってくださいネ?」
「お、おぅ…」
「きゅ〜…zzz」
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COOLKIDです。
自己中心のドチャクソな不定期投稿なのですみません…
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