第24話 天使

 「水野先輩が居なくなりました」


 麗華ちゃんの表情から冗談じゃない事が伝わってくる。


 「今朝、トイレに行こうと廊下に出たらドアが開いてて中がもぬけの殻だったんです」


 日野さんが近づいてくる。

 

 「ジョウジが1番早く起きてホールで色々と準備してくれてたんだけど、水野ちゃんが外に出たのは確認してないってさ」


「まだ、近くに散歩へ行ってるだけかもしれないし。スマホに連絡は?」


「夏樹先輩、忘れたんですか? ここは圏外です。スマホは使えません。ちなみにジョウジさんや日野さんが確認したところ電話も使えなくなっているみたいです」


 なんてことだ。つまり俺たちはこの島に迎えがくる2日後まで助けが呼べないということだ。


 「水野ちゃんがまだどこかにいるかもしれない。皆んなで手分けをして探そう」

 


 俺は麗華ちゃんと楓、日野さんと一緒に2階を、ジョウジさんは木田さん、金木さんと一緒に1階の探索にあたった。


 2階の作りは1階とほぼ同じ作りで客室を調べたがどこにも水野がいる形跡は見当たらなかった。


 「あとはあそこの部屋ですね」


 唯一鍵のかかったままの部屋がある。例の開かずの間だ。


 「うーん、あの部屋はなぁ……本当は言いたくなかったんだけど俺には兄貴がいるんだよ」


 「つまり、あの部屋はそのお兄さんのものだと?」


 「そうなんだけど、いわゆる引きこもりってやつでさ」


 日野さんは頭をポリポリとかいて苦笑いを浮かべている。


 「だからいつもこの洋館には使用人が1人雇われてるんだ。前の人が最近やめちゃって、ああ見えてジョウジは新しく雇われた人なんだ」


 そうだったのか。ってきり何十年とお抱えの執事かと思ってたよ。


 「じゃあ事情を話して部屋を確認させてもらいましょうよ」

 

 「そうだね」


 日野さんがドアをノックする。


 乾いた音が響くが反応は返ってこない。


 「おーい。たのむ! 1人女の子が行方不明になっちゃってさ。部屋を探させてもらってもいいか?」


 日野さんが大声で声をかけても変わらない。


 「でないですね」


 トイレに出た時を狙うしかないんじゃないかと考えていると日野さんが別人のように叫びだす。


 「おい!! クソ兄貴!! 早く出でこい!! ぶっ殺すぞ!!」


 「ひゃっ」

 「ひ、日野さん?」


 日野さんのあまりの豹変ぶりに2人で驚いてしまう。あんなに爽やかだった印象は見る影もなく、かなり興奮しているようだ。


 「おいっ! 扉ぶっ壊すぞ!!」


 ガチャッ


 「なんだよ」


 扉の中から昨日の男が出てくる。


 よっぽど中が見られたくないのだろう急いで鍵をかけている。


 「だから女の子が行方不明になってるんだって!」


 「それでぇ?」


 「部屋の中を見させろ!」

 

 「断る」


 2人のやり取りを見る限り、よっぽど仲は良くないようだ。


 「あの?」


 麗華ちゃんが勇気を出して2人の間に割って入る。


 「誰だおま……ぶひっ」


 「ひぃ」

 

 男はジロジロと麗華ちゃんをなぶるように見てきたので麗華ちゃんが怯えている。


 「て、天使!! ぶひっ!」


 大の男が両手を上げて喜んでいる。


 わかるぞっ! 麗華ちゃんの美しさは人間の枠には収まらないからな!



✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎



麗華ちゃんマジ天使!!


いつもありがとうございます!


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よろしくお願い致します!


いぬお

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催眠術にかかったふりをするのも楽じゃない ねこやま いぬお @shintashinta

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