第19話 たたり
「美味しかったー!」
楓が嬉しそうにこっちを見ている。
「たしかに、すごく美味しかったです」
さっきまで自己紹介での事故の後遺症でいじけていた麗華ちゃんが通常運転に戻るくらい、衝撃的な美味しさであった。
「喜んでもらえたみたいでよかったよ。そうだ、実は俺たちも大学でオカルト研究サークルをやってるんだよね」
「そうなんですか」
オカルトサークルとは意外だった。日野さんみたいなタイプはってきりテニサーという名の……なんでもない、イメージだけで人を判断するのはよくないな。
「そこで、せっかく曰く付きの洋館にオカルトに携わる者達が泊まってるんだ。怪談話をしないってのはおかしいよね?柳原さん?」
「…………」
日野さんに問いかけに対して考えるポーズをしたまま微動だにしない麗華ちゃん。
「柳原さん?」
麗華ちゃんは怖すぎてフリーズしてしまっている。
「麗華はビビリだから……話だけなら大丈夫だけど、場所が場所だからねー。さっき麗華の客室行った時、自前のぬいぐるみをいっぱい枕元に並べてたくらいだもの」
楓が呆れながら水を一口飲む。
お気に入りのぬいぐるみを枕元に置いてただと!? きっと麗華ちゃんのことだ完璧な配置があるのだろう。一生懸命に今日の夜を乗り切るための布陣を作っていたと考えると……尊い!!
「まぁ怖がりやさんがいる方が盛り上がるしね」
「誰が怖がりやさんですか!」
「うわっ」
麗華ちゃんはプライドの高さは一級品。だからどんな事態でも反応するのだ!
「神隠しの話っていうより、物隠しになるのかなー」
木田さんがめんどくさそうに話し出す。
「神隠しっていうのは子供が居なくなっておしまいでしょ? まぁ探したりってのはあるんだろうけど。」
地方によって少し違いはあるが行方不明者が出るっていう認識が強い。
「物隠しも神さまによって子供が連れ去られてしまうんだけど、対処方法が一応あるんだよ」
「大切なものを隠すとかですか?」
水野が手を上げて発言する。
「違うわ、櫛を隠すのよ」
「さすが麗華ちゃんなんでも知ってるね」
「えーなんで
楓が思ったことは俺も感じていた。
櫛なんかより大切なものはいっぱいあるのになんでだろうか。
「物隠しは神さまが人に乗り移るための儀式なの。だからその儀式に必要な櫛を隠してしまえば神さまも諦めて子どもを返してくれるって話らしいよ」
金木さんも詳しいのかスラスラと説明をしてくれた。なんだか金木さんの声って聞き取りやすい声だなぁ。
「この島や近くの町でも昔から神隠しの話が多くてさ。6年前くらいかな? 近くの町から学校の行事できてた女の子が行方不明になったんだ。古いしきたりのある町だから櫛を隠そうとしたんだけど、とうとうその櫛も女の子も見つかってないんだってさ」
なるほど、まぁ現実的には誘拐や迷子なのだろうけど、大切な人がいなくなったら、そう言った話でさえ信じてしまう気持ちは想像できる。
「おいおい、俺が説明するはずだったのに全部取るなよー」
「ごめんごめん」
木田さんがめんどくさそうに謝っているが特に気にした様子はないようだ。
「だから女の子の部屋のテーブルには櫛が置いてあっただろ? 何かあったらそれを隠せばいいんだ。面白そうだろ?」
うーんなんだか危険な気がする。麗華ちゃんも櫛の所在が気になるのかソワソワしだした。
「日野さん。それって女の子部屋には全部あるんですよね?」
水野が日野さんに確認をしている。
「あぁ、ジョウジが置いてくれているはずだよ」
その後は、怪談話で盛り上がってきたのだが、お風呂に入らなくてはいけないので解散の流れとなった。
「楽しかったねー! あっ、一つ破っちゃいけないルールがあるんだけどさ。」
「ん?」
なんだろう?
「2階の1番奥の部屋は絶対に開けないでね」
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ここまで読んでいただきありがとうございます!
開かずの間、良いですよね!
コメントやレビューをいただけると大変嬉しいです!
よろしくお願い致します!
いぬお
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