第17話 日野さん
車で揺られながら港町を抜けて30分ほど山道を登ると洋館が見えてきた。
そこには開けた土地があり、真ん中に白を基調にした洋館があった。海風にさらされていたせいなのか、単純に築年数の問題か外壁は少し荒れているようだ。
「到着しました。お疲れ様でした。今、扉を開けますね」
「運転ありがとうございました! それくらい自分達でやるから大丈夫ですよ」
水野が車から降りて荷下ろしを始めた。
さっきまで磯の匂いが立ち込めていたが、山に入るとそうでもないようだ。
そんなことを考えながら問題の洋館を改めて観察する。
窓はしっかりとした作りになっているようだ。周りは森に囲まれている。そしてここでもスマホは圏外となっている。
「ここは完全にクローズドサークルだね」
「夏樹先輩、クローズドサークルって何ですか?」
楓がキャリーケースを転がしながら聞いてくる。
「今みたいに閉じ込められてる状況で連絡手段もない状態のことだよ」
麗華ちゃんも体調が良くなったのか自力でキャリーケースを転がしてついてくる。
「まさに、殺人事件の舞台って感じですね。大きな建物ですね、地下室もありそう。そういえば、先に一台車が止まっているけれどアレは誰のかしら?」
「屋根裏と地下にも部屋はございますが、皆さまが利用されるのは1階と2階のご予定になっておりますね。あと、車は日野様が保有してるものになります」
扉を執事さんが開けてくれると中には大学生くらいの男の人が2人と、女の人が1人待っていた。
「お、水野ちゃん! 遠かったでしょ?ごめんねー」
「あ、日野さん! 今日は本当にありがとうございます」
「いいって、今日来る予定だったはずの奴らが急用でキャンセルされて困ってたのはこっちなくらいだし」
そう言って頭をポリポリとかいている人が、きっとここのおぼっちゃまなのだろう。
「ほんと、私たちラッキーでした! えっとこの方が今回招待してくださったバイト先の先輩で日野 さとるさんです!」
「どうも、大学2年になるから少しみんなの先輩かな? たかが少し早く生まれただけだし、気にしないでいいからねー」
お金持ちの坊ちゃんだから勝手に嫌なやつを想像していたけどなんだか良い人そうだ。
そんなことを考えていると日野さんがゆっくりと近づいてくる。
「君が噂の夏樹くんかー。バイト先でいつも水野ちゃんが寂しい寂しいってうるさいんだよ」
「ちょちょちょ!? 何言ってるんですか! いつもじゃないですよ!」
水野がポコポコと日野さんを叩いている。普段からきっと気さくな人なのだろう。
「あと、噂のお姫様にも興味があるんだよねー」
日野さんの言葉に麗華ちゃんがビクッと反応する。
前言撤回、敵なのかもしれない!!
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ここまで読んでいただかありがとうございます!
明日も更新予定ですのでよかったら見てください!
星やコメント頂けると最高にハッピーです!
お待ちしてます!
いぬお
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