第13話 またたび
今日は終業式だ、友達とは会える時間が減るのは名残惜しいが、長期の休みの魅力には誰しもが抗えない。
「夏樹ー!! 今日こそカラオケいこうよー! 明日から夏休みだしさー!」
「水野か。いつも断ってばかりでごめんな。でも、麗華ちゃんが待ってるからさ」
早く部活に行って麗華ちゃんに会いたい! それに、楓も入ってくれて今は同好会が楽しみで仕方ないのだ。
「またかよ!! 今日は大事な話があるの!」
水野が何か言っていたが……今は麗華ちゃんが優先だー!! エンジンを全開にして部室棟へと駆け出す。
「ごめん、遅くなった!」
部室の扉を開けるとそこには麗華ちゃんしかまだ居ないようだ。
「あ、夏樹先輩。一学期はお疲れ様でした」
「ありがとう。そうだね、本当に色々あったけど、楓も加わって楽しいって気持ちの方が強いかな。楓はどうしたの?」
席に座りながらいつも居るはずのメンバーについて尋ねる。
「それが、あの子友達ができたんです。ボッチ同盟を裏切ったんです。絶対、許しません」
「それボッチなの?同盟なの?」
楓も頑張って変わろうとしてるみたいだ。俺なんかに固執してたあの頃と比べると良い兆候だ。
「あっ今やらしいこと考えてましたか? 顔が女のこと考えてる顔です!」
な、なんでわかるんだ!?
「まぁ、そういうわけで楓さんは遅れるそうです。せっかく久しぶりに2人ですし、催眠術の検証しませんか?」
顔を赤らめながらモジモジしている麗華ちゃんにも胸が高鳴るが、今後の展開を想像すると期待により胸が騒がしくなる。そこで、ふと思いつく。
「いいね! ところで、俺が麗華ちゃんに試しにかけてみても良い? 絶対に変なことしないから!」
手を合わせてお祈りをする。
「私がですか!? まぁ、私ばっかりかけてますし……少しだけですよ! 変なことはしないでくださいね!」
そう言ってカバンから取り出した五円玉を手渡される。
そんなものかからないとは思うが、もしかかったらと思うと……よしっ!!
「じゃあ、いくぞ!」
「は、はい!」
「あなたはだんだん眠くなーる」
五円玉を一定の間隔で揺らしていく。
徐々に麗華ちゃんの焦点が合わなくなってくる。
「かかったのか?……あなたは猫です。猫のように甘えてきてください」
普段、冷たい麗華ちゃんが猫みたいに甘えてきたらギャップでキュン死にする自信がある!
麗華ちゃんがスッと床へと座りこっちを見ている。
「……にゃーん」
あれ、かかってる!? 俺死ぬの!?
麗華ちゃんが急に足元に擦り寄ってきて甘えてきている。
「にゃんにゃん」
あぁ、めっちゃ良い匂いがする! 軽く頭を撫でてあげると嬉しそうにゴロゴロ言っている。
撫でられている麗華ちゃんも気持ちよさそうだが、俺も気持ちよくて昇天しそうだ。
「ごめん、友達と話してて遅れましたー!」
ガチャリと扉を開けた状態で楓がフリーズしている。
あぁこれもお約束ですよね。
「な、なにしてるんですかー!!」
楓の声が部室棟へと響く。
「夏が来るねー、麗華にゃん」
「にゃ〜ん」
「無視するなー!!」
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ありがとうございました!
何度見てもトトロは良いものですね
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いぬお
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