第11話 事件解決
今日も学校休みかー。まぁ昨日あんなことがあったし仕方ないよね。
夏樹先輩や麗華には本当に悪いことしたなぁ。お父さんに殴られたところは痛いけど、夏樹先輩はもっと怖かったろうし……
世の中にはお人好しもいるってわかったことだし、人生をもうちょっと頑張ってみようかな。
それに、麗華はあんなにわかりやすいのに、なんであの2人はくっつかないのかなぁ。じゃないと諦めきれないじゃない。
ベッドをゴロゴロしていると、昨日の夏樹先輩のことを思い出してしまう。
「ここで裸の夏樹先輩が……ゴクリッ。ちょっ、ちょっとだけ失礼しまーす」
外から見られないようにカーテンを閉めようと窓へと近づく。
ちなみに、割れてしまったところは応急処置的にブルーシートを被せてある。
いやぁ、こんなところ近所の人に見られたら恥ずかしいな。
ふと、マンションの下へと目線を下ろすと、女の人が見える。
「こっち……見てる?」
気のせいか、目線があった気がする。
あの人、どこかで見たことあるような……
もう、少しで出てきそうなのに出てこないのにモヤモヤとしてくる。そう、悩んでいる間も何故か目が離せない。
ゆっくりと女の人が手を上げて何かを数えている。
「嘘でしょ……」
ネットで似たような話を見たことがある。殺人鬼が目撃者を消すために部屋の数を……
今は昼間で親も仕事で居ない。悪寒が身体を支配する。今自分が何をすれば良いのかが分からない。
とにかく玄関のドアの鍵を確認しなくちゃ。
恐怖でうまく息ができない。廊下へと出るが、今にもドアが開きそうで恐怖で腰が抜けそうになる。
やっとの思いでドアが施錠されているのを確認する。ひとまずこれで安心だ。
せっかく、夏樹先輩や麗華とお友達になれたのになんでこんな目に……
ピンポーン
心臓が止まるんじゃないかと思うくらい胸が締め付けられる。
カタカタと郵便受けを動かしている音がする。そして、ドアノブがゆっくりと動いているのを見てしまった。
「ひっ」
「良かった、見つけた」
女の声が聞こえてしまった。
きっと天罰なのだろう。
次の瞬間、凄い勢いでドアノブが動き始める。
「開けてよー、ねぇ、警察ですよーって信じるわけないか。アハハハハハハッ」
警察! そうだ、警察に連絡しないと、スマホどこだろう!? なんでこんな時に限って見当たらないの!?
過呼吸になっているのか視界がクラクラしてくる。
もうダメかも……
「あのー、なんかようですかね?」
あの人の声が聞こえた。ドア越しで小さかったけど、私にはわかる。
約束、もう守ってくれたんだ。
〜〜〜〜〜〜〜〜
暴れ出す鼓動を抑えつけて冷静に話しかけてみることにする。
「あなた、ファミレスの店員さんですよね? なんか名前で呼んでくるなんて珍しいからよく覚えてたんですよ。帰り道、つけてきたんですか?」
女はこちらをじっと見つめながら爪を齧っている。
「なんで、わざわざ楓を狙ってるかは想像の域を出ないけど、女の人が女を狙うってことは男関係ですかね? 案外この間のストーカー男の彼女さんだったり?」
「うるさい!! 関係ないでしょ!!」
この反応は当たりかな。後ろに何か隠してるのは多分凶器だよなー。
「いやいや、監禁されてたんでここで」
「はっ? あなた何言ってるの?」
「まぁ良いや。とにかく、約束してるんでそこからどいてもらっていいですか?」
恐怖を殺して一歩近づく。
「今度こそ、期待を裏切るわけにはいかないんですよ」
「カッコつけちゃって、気持ち悪いんだよ!!」
女は包丁を取り出して構えている。
やっぱ、凶器持ってたかーあぶねー。というか、今のセリフは自分でも顔から火が出そうだ。
でも、こっちだって負けられないんだよ。
そして俺には作戦がある。一歩後退りして合図を出す。
「出番です!お義父さん!!」
「小僧、誰がお義父さんだー!!」
ひぃ! どっちも怖いぃー!!
「柳原さん、そのくらいにしておいてくださいよ。大人なんだから」
「へっ?」
女の間抜けな声を合図にどんどんと警察が集まってくる。
「えっ、普通考えないですか? こんな危ない人いるの分かってるんだから警察を呼ぶでしょ。普通」
「お、男のくせに、卑怯だぞ!!!」
「はいはい、じゃあよろしくお願い致します」
「お前が命令するな。そしてそこの女無駄な抵抗をするな。抵抗されると、加減できるか分からんからな」
お義父さんが警棒を片手に近づいていく。
女は観念したのか床に座り込み逮捕されることとなった。
「あとは俺たちに任せて、あの子のそばに居てやってくれ。浮気したら殺すぞ?」
「ま、まだ付き合ってないですから!」
「なんでそこで照れるんだよ。まぁいい、ほらいったいった」
お義父さんに事後処理は任せて、楓の元へと向かった。
楓はリビングで警察の人と話をしていた。
「ふふふっ噂の彼がきたみたいね。あとはお任せしますね」
婦警さんが悪戯な笑みを浮かべてさっていく。
「ほら、約束守っただろ?」
「ぐすっ……はい」
「この数日で色んなことがあったな」
「はい……怖かったです」
「そうだな、でもまたなんかあったら助けてやるよ」
「ありがとうございます、でも麗華ちゃんの次でしょ?」
「そ、それは!」
俺が慌てていると、楓は涙を拭いながら、意地悪な笑みを浮かべている。
「冗談ですよ。私は良いんです、この一回で救われました。もう、充分です。幸せすぎるくらいです。」
なんだか、最近は泣いてる楓ばかりを見ている気がする。
「もう大丈夫です。お父さん達が帰ってくるまで警察の方も居てくださるようなので」
「良いのか?」
「良いんです! また部活で会いましょう? これ以上居るなら監禁しますよ?」
「それは困る。……そうだな、じゃあまた部活でな! しばらくは無理だろうけど学校こいよ! 待ってるからな」
「……本当に早く行ってください。これ以上一緒にいると私……」
部屋を後にする時、楓が何か言っているのが聞こえたが聞こえないフリをすることにした。
〜〜〜〜〜〜
あの事件から1週間が経過した。協力してもらった麗華ちゃんには感謝しても感謝しきれない。
「夏樹ー! 今日こそカラオケいこうよー」
「悪い! また今度!」
「お前はいつになったら遊べるんだよ!!」
友達の声を尻目に、部室棟へとかける。
「麗華ちゃん!」
「なんですか? そんなに慌てて」
部室の扉を開けると、麗華ちゃんがいつもの指定席にいる。俺も鞄を置いて指定席である正面へと座る。
「今日は催眠術やらないの?」
「なんですか、急に!?……まぁいいですけど」
麗華ちゃんが5円玉を取り出す。
「あなたはだんだん眠くなーる」
相変わらず、顔を真っ赤にしながら催眠術をかけようとしている麗華ちゃんは可愛い。
「かかったみたいですね」
麗華ちゃんが近づいてくる。
これはまた何かラッキーなことが起きるのではないかと期待していると。
「……もう無茶なことはしないでください」
麗華ちゃんは今にも泣きそうな顔をしている。
しまったな……そんなつもりじゃなかったんだけど……お義父さんも居たし。でも心配をかけちゃったか……
催眠術にかかっているフリをしているので、謝れないのがもどかしい。
「コホンッ……あ、あと監禁されてるときに何をされていたのか教えなさい」
こ、これはまずい!! とてもじゃないけど生きて帰れる自信がない!!
生き残る術を探していると、誰かが近づいてくる音がする。
慌てて麗華ちゃんが催眠術を解除するのと同時に扉が開く。
「麗華ー、夏樹先輩ー! 遅れちゃった! ごめんよー!」
「…ん? お、おぉ楓か!」
「大丈夫ですか?寝起きですか?」
「ま、まぁそんなものよ。それより楓、今日はバイトは良いの?」
「うん、今日はお休みだよ! それより夏休みがくるよ! オカルト同好会だよ! 合宿しようよ!」
今年の夏はいつもより楽しくなりそうだ。
✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
ここまでありがとうございました!
第一章はおしまいです!
第二章は新たな仲間と共に夏休み編へと突入します!
コメントや評価をいただけると嬉しいです!
ありがとうございました!
いぬお
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