第3話 見えるんです
「夏樹ー! 今日こそは私たちについてきてもらうぞ!」
「悪い、今日も部活なんだ」
申し訳なさそうに手を合わせるが頭の中は昨日のことでいっぱいである。
「あれ? 今日はまだ、来てないのか?」
部室の中には誰も居ない。麗華ちゃんはまだクラスに居るのかな。
仕方ないので、部室の椅子に座りながら待つことにした。
しばらく待っていると息を切らせながら麗華ちゃんがやってきた。
「はぁ、はぁ、遅れてすみません」
「大丈夫? どうしたの?」
「校舎の裏に呼びだしを受けてたんです」
「ふーん、大変だったね。また、告白?」
俺の正面の椅子に座って、こっちを見ているだけで、正直胸がバクバクする。
俺、この子にチューされたんだよね……
「まぁ、そんなとこです。その人のために詳しくは伝えられないですけど、私のどんなところが好きか伝えられました」
「そりゃ、時間かかるわけだ。麗華ちゃんは良いところいっぱいあるもんな」
「ま、またそうやって私のポイントを稼ごうとしてるんですね。ホントセコイです、夏樹先輩」
そのポイント、今どのくらい貯まってるのだろうか。
「ちなみに俺の良いところは?」
「うーん……二足歩行出来ているところですかね」
「いやもっとあるでしょ!」
「ふふふ、冗談ですよ。先輩が良い人なことぐらい私にもわかりますよ」
やっぱ、キリッとした麗華ちゃんも良いけど、笑ってる麗華ちゃんが一番だなぁ。
「な、なにニヤニヤしてるんですか! 気持ち悪いです!」
「べっつにー」
今俺、絶対ニヤニヤしてしまっている。
「まぁ良いです。それより、昨日の催眠術についてですが再度検証が必要かと思います」
「お、おう」
5円玉を見ると、昨日のことを思い出して思わず背筋を正してしまう。
「指パッチンもできるようになりました」
1日でマスターするとかさすがだなぁ。
じゃあさっそく始めようという雰囲気になった際にいきなり部室の扉が開く。
「失礼します!」
「ど、どちらさまですか?」
どうやらリボンの色を見る限り一年生のようだ。麗華ちゃんは5円玉を隠すのに必死でワタワタしている。
「先輩が部長さんですか? 私、竹村 楓っていいます。私をオカルト同好会に入れてください」
ようやく落ち着いた麗華ちゃんがビクンッと反応する。
「同じクラスではないみたいね。私は柳原 麗華っていうの。そこの怪しい先輩は山口 夏樹っていうの」
「一応部長みたいなもんかな。よろしくね」
「あなたが噂の姫様ね」
麗華ちゃんの目つきが僅かに険しくなる。
「それより、あなた、こんな時期に入部するなんて珍しいわね。ここは気持ち悪い先輩しか居ない同好会だから入らない方が竹村さんのためよ」
「酷い言われようだ!」
気のせいかなんだかさっきより不機嫌になっている気がする。
「実は私、体調を崩してたの。通院とかもあって部活に入るのは様子見してたのよ」
「なるほどな」
隣で麗華ちゃんもムスッとしながらうなづいている。
「だから、一時期入院もしてたんだけど、その辺りからおかしいのよ」
なんだか、雲行きが怪しくなってきた。
麗華ちゃんも心なしか俺に近づいてきている。
「幽霊が見えるようになっちゃったのよ!」
「よし、夏樹先輩。この人には帰ってもらいましょう」
ガクガク震えながら竹村さんを外へ追い出そうとする麗華ちゃん。
「ま、まってよ! オカルト同好会がスルーして良いの!? 助けてよー」
ついには泣き出す竹村さんを見て、観念したのか力を緩めて席に戻る。
「まぁその話がホントなのかはこれから聞いてみないとわからないけど、詳しく話してもらえるかな?」
隣の麗華ちゃんはますますムッとしてるけど、とにかく話を聞かないと。本当だったら信じてあげないとかわいそうだしな。
でもそれよりなにより、麗華ちゃんが怖い!!
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貴重なお時間を頂きありがとうございました。
次回は22日更新予定です。
レビューやコメントなどがエナジーになります。
よろしくお願い致します。
いぬお
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