第70駅 コールマウンテン周辺探索 ~メタルマイン及びソルトケイブ~
コールマウンテンで開発に従事する人と必要な資材を下ろし、その日は終了した。
僕達は駅の仮眠室で、他の人達はキャンプを張ることで夜を明かすことになった。
翌日。僕達三人と一部の鉄道隊員は再びグラニット号に乗り、コールマウンテンの東西に隣接する領域の調査に出発した。最初は東の方。
「トムから聞いたけど、サバンナ地帯より北側は東西に五つの領域が点在していたけど、南側は三つしか無いみたいだね」
「結構少ないんですね」
「南部大陸は逆三角形の形をしているから、南側の幅は狭いんだよ」
到着したのは、コールマウンテンに似ている岩山。山頂付近に聖樹が生えている点も同じ。
ただ、さっきも言ったとおりサバンナより南側は東西に三つの領域しか無いため、海に隣接している。
とりあえず調査を開始したけど、やっぱり出てくるのは岩、岩、岩。
さすがに今度こそ岩以外無いと思いかけたそのとき、また鉄道隊隊長が報告しに来た。
「失礼します、陛下。例の『鉱石探査』のスキルを持つ部下が、また発見しました」
「あ、やっぱり? それで、何を見つけたの?」
「金属鉱石です。銅や鉄、金銀プラチナ、そしてミスリルやアダマンタイトらしき鉱脈も感知したと」
「ミスリルにアダマンタイトですか!?」
この報告に食いついたのは、アンだった。
「すごいですよ、トシノリさん! 貴重で需要がある鉱石が一通り揃っています!」
アンが言うには、ミスリルは最も魔力を通す金属で、超が付くほど上級魔道具の重要な部品に使われる。アダマンタイトは最も丈夫な金属で、魔道具でなくとも耐久性を要求される部分に使われたり、武具にも使用されるらしい。
道具や魔道具の中にはミスリルやアダマンタイトでなければならない部分があるらしく、しかもこの二種の金属は採掘量が少ない。
そのため、かなりの高額で取引されるらしい。
また、金、銀、プラチナも重要な金属になる。
これらが採掘されることで、グラニット王国が自前で貨幣を鋳造出来るようになるんだから。
これらの特徴を踏まえ、僕は領域と設置する駅の名前を決めた。
金属の鉱山という意味を込め、『メタルマイン』と名付けた。
次に向かったのは、コールマウンテンの西側。
領域内に入ると、そこにあったのは――。
「なんなんですか、アレ!?」
「穴がいっぱい……」
そこにあったのは、海に隣接した荒野に、無数に空いている穴だった。よく見ると、穴は斜めに傾斜していて、結構大きいので穴と言うより洞窟と言った方が正しいかも。
そして異様さに拍車をかけているのは、領域の中央にある聖樹。なんと、木のてっぺんがちょこんと地上に出ているだけで、根元はおろか幹すら見えていなかった。
「あー。ここ、ママにちゅういされたところなのだー」
「知ってるの、エディ?」
「ママが言ってたのだー。どうくつの中はまよいやすいから、入っちゃダメだって」
つまり、穴の中は迷路みたいになってるって事?
でも、今この列車は――。
「穴の中に入っているみたいだけど!?」
「皆様、失礼します」
突然やってきたのは、トム・コンシェルジュだった。
「トムからのメッセージをお伝えします。『当列車は、聖樹の根元までなら迷うこと無く到着できます。逆もまた然りです。なので、この列車に乗っている限り、道に迷って遭難することは決してない』とのことです」
とりあえず、迷子になって彷徨ってしまう事はないみたい。
穴の中に入って最初に目に付いたのは、壁の至る所に埋まっている結晶だった。
聖樹が生えている中心部に降り立つと、その光景はまさに絶景と呼ぶにふさわしい物だった。
「きれーなのだー」
「結晶がキラキラ光って、星みたいですね」
「天井を突き抜けている聖樹も、いい絵になるね」
そして結晶にどこか見覚えがあったので、僕は試しになめてみた。
「しょっぱい? これ、もしかして岩塩!?」
どうやらこの領域の洞窟に埋まっている結晶は、全て岩塩らしい。
しかも種類が豊富で、白や透明、ピンクはもちろん、黒や青といった珍しい色の岩塩まであった。
「岩塩ですか。この国は海があるので塩に不自由はしないですが、いい資源ではありますね」
「海の塩とはまた違うからね。色によって味が変わるから料理に幅が出るし、特殊なレンズを作ることも出来る。それに、ハロセラピーっていう療法があるらしいよ」
なんでも、岩塩に囲まれた部屋に一定時間滞在すると、呼吸器疾患やアレルギー症状が改善されるんだとか。
まぁこの世界ではまだ無い療法らしいから、これからデータを集める必要があると思うけど。
大体この領域の特徴がわかったことだし、この領域と駅の名前が決まった。
『ソルトケイブ』。塩の洞窟という意味を込めてみた。
予定された調査を終え、セントラルシティに帰ってきた。
列車を降りると、なぜかブルネルさんが血相を変えて走りながらこちらに近づいてきた。
「大変です! 国中で謎の疫病が流行しつつあります!!」
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