第61駅 ターンブル奪還戦の後始末 ~ターンブル~

 列車砲による四方面同時砲撃と、その余波によって敵軍が甚大な被害を受けたこともあり、ある程度の抵抗を覚悟していたもののあっけなくターンブルを占領できてしまった。


「いっぱい狩ってきたのだー!」


 帰ってきたエディは、元気な笑顔を浮かべていた。身体は血まみれだったけど。

 この血、どう考えても返り血だよね……。


「お帰り。一般人には手を出してないよね?」


「あたりまえなのだ! あそび半分でころすなんてしないのだー!」


 エディの姿が衝撃的すぎて当たり障りの無い会話しかできなかったけど、まぁ市民を攻撃しなかったことが確認できてよかったと思うことにした。


 さて、無事ターンブルを奪還した僕達は市内に入った。

 ただ、やはり首都なだけあってまとまった土地はほぼ無く、ギリギリ広場のような駅が建てられそうな土地はあったとしても列車を走らせられるほど道は広くなかった。

 そういうわけで、城壁の外側に駅を建てることにした。南側に旅客駅、北側に貨物駅を配置した。


 そして僕達は、警戒しつつ王宮に侵入。捜索を行った。




 幸い、王宮内には敵はいなくなっており、本格的な捜索を行うことができた。


「……意外と、部屋は原型を留めているんですね」


「なんか、殺風景な感じがするけど……」


「花瓶や絵画といった美術品が無いからですね。どうやら持ち去られたみたいですが、生活に必要な家具類はそのままのようです」


 アンの指摘通り、よく見ると部屋の装飾品が全くなかった。これが殺風景さを感じさせる原因だったんだと思う。

 ただ生活に必要な家具類はそのままと言っても、その家具類がどれも一級品なのは素人目で見ても明らかにわかった。


 こういう部屋の状態はすべての部屋で見られていて、もちろんアンが使っていた部屋や国王夫妻の部屋も同様だった。


「服も無くなっていますね。代わりに、スチーブンソン公爵の服や私物が置かれていますが」


 王宮内の部屋の状態を確認していると、マークさんが報告にやってきた。


「執務室の方を見てきました。書類の方は一部失っているものがありますが、政務を行える状態でした」


「ということは――」


「はい。すぐにでもターンブルの統治が可能です」


 それは朗報だった。

 政務を行う部屋が荒らされまくっていた場合、ターンブルの城壁外に止めてある魔力鉄道の車両を使って業務をやらなければならない所だった。


 ――さて、とりあえず政務に関する捜索は一段落。

 後は――個人的な捜索だね。




 アンとは別行動を取って、僕とエディで色々と調べて回った。

 まぁ、捕虜の尋問を見ていただけなんだけど。

 ただ見ているだけでは無く、僕が聞きたいことを聞き出してくれるよう頼んだりするけど。


 で、その結果わかったのが、やはりバルツァー帝国のトレビシック王国侵攻にはスチーブンソン公爵の手引きがあることだった。


 そもそも、ここターンブルにしても堅牢な城壁や様々な防衛設備があり、そう簡単に落ちるはずが無い。

 まぁ、僕達は防衛上の想定を上回る兵器を持ち込んだからあっさり陥落させちゃったけど。


 で、そんな堅牢な防備を持つターンブルやバニスターがなぜ陥落してしまったのかというと、バルツァー帝国の兵力の関係だけでは無く、スチーブンソン公爵による内側からの手引きも絡んでいたんだ。

 この話が聞けただけでも、スチーブンソン公爵を攻める理由になる。


 それと、もう一つ重要な話を聞けた。


「これは……アンには聞かせたくないな……」


「そうなのか、トシノリ?」


「そうだよ。人間にとって重要なことが出来なくなったんだから。でも、黙っているわけにはいかないよね……」


 その後、僕達はアンに話をするため王宮中を探し回った。その結果、アンは王宮の地下牢にいた。

 全ての牢屋を見て回る勢いで何かを探していたんだ。


「あら、トシノリさん。ここまで来てどうされました?」


「アン。こんな所まで探し回っている君にこんな事を言うのは苦しいけど、言わないといけないと思う。落ち着いて聞いてほしい」


 一呼吸置き、僕はこう告げた。


「アンのご両親の遺骨なんだけど……海に散骨されたらしい」


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