第60駅 ターンブル奪還戦 ~ターンブル~
~ジョセフ・スチーブンソンside~
「敵がターンブルを包囲しているだと!?」
ジョセフが朝一番に部下から告げられた報告だった。
「リヒャルダ君! 確か敵は、ターンブルに攻め入る準備に時間がかかるとか言っていなかったか!」
「申し訳ございません。どうやら敵の事情が変わったらしく、予想外に早く攻め入る選択をしたようです」
そして攻め込む時間がまだあると思ってしまったが故に、リヒャルダはトシノリ達の動向を探る手を緩めてしまった。
結果、ターンブルを包囲されるまで気づけなかったという失態を犯してしまった。
「ただ、ターンブルを包囲しているとはいえ、まだ射程距離外にいます。敵が持っている火器の射程範囲外です」
「ということは、まだ猶予はあるのだね?」
「そうですね。しかし、そう残された時間は多くないと思われます。万が一に備え、陛下にはバニスターへ逃げる準備をした方がよろしいかと」
「うむ、そうだな。では早速その準備に取りかかる」
実はリヒャルダは、ある懸念があった。
それは、あの見慣れない乗り物――斥候の情報では『魔力鉄道』と言ったか――が四台がかりでターンブルを取り囲んでおり、それらには一つずつ、覆いが被せられた謎の荷物を牽引していること。
それがリヒャルダには気がかりだった。
(魔法使いに防御魔法を何重にもかけるよう言っておくが……)
それでも、全く足りないかもしれない。
そう思いつつ、兵士達を指揮しに向かった。
~トシノリside~
「全車両、配置につきました」
「よし。覆いを外し、照準を合わせるんだ。敵の妨害を防ぐため、覆いを外したら素早く行動するように」
リットリナさんから送られてきた物のおかげで、予想よりも早くターンブルの奪還に動くことができた。
そして現在はグラニット号を含む四両の魔力鉄道で、ターンブルの四方を取り囲んでいる。それぞれ、街の外につながる門を真正面に捉えている。ちなみにグラニット号は西門担当。
戦闘の指揮はマークさんがやってくれている。どうも指揮の心得があるらしい。
僕達は、指揮の様子を戦闘車両の会議室で見守っている。
『こちら北門担当。準備完了』
『南門、準備完了』
『東門、準備完了』
「西門、完了しました」
「よし、砲撃用意確認! 撃て!!」
ドォーーーーン!! ドォーーーーン!! ドォーーーーン!! ドォーーーーン!!
ものすごい轟音が四発発射されたかと思うと、何かが破壊される音が続けて響いた。
「すごいですね。門が光っていたから防御魔法をかけられていたはずなのに。一撃で破壊されてしまいました」
アンの言うとおり、司令室の計器でも門に魔法がかけられていたことが確認されていた。
実は、リットリナさんから送られてきた物とは『列車砲』。
もちろん戦闘車両につけられている大砲の比ではなく、一両まるごと大砲として設計されている。
そのため、威力は絶大。ターンブルの頑丈そうな門を簡単に破壊……どころか粉々にしてしまった。
まぁ威力が高い分、連射できないし、コントローラーを作る技術が無いためほとんど手動で動かさなくてはいけないとかデメリットが色々あるらしいけど、今回は上手く友好的に使用できたみたい。
「よーし、狩りまくってやるのだー!」
「気をつけてね。それと、狩るのは兵士だけだからね」
「わかってるのだー!」
そう言い、エディは列車の外へ飛び出した。
砲撃によって外壁の門を壊した後、兵士を突入させる流れになっていたんだけど、そこにエディも参加することになっている。エディがそう希望したから。
エディのスキルは戦闘面でかなり強力だし、簡単にはやられることは無いから。
「――それにしても」
「どうしたの、アン?」
「いえ。まさか一年たたずに故郷の街が二度、陥落する所を目にするとは思わなかったな、と思ったんです」
そもそもアンが南部大陸にやってきたのは、バルツァー帝国の侵略から逃げるためだった。
転移魔法でわざと失敗しやすい南部大陸に目標を定め、実際はスタッキーニ王国に転移しようとしたんだけど、目論見は失敗し転移魔法が成功。南部大陸に転移されたところで、僕に発見された。
「その、さ。もしかして、結構複雑?」
「ええ、まあ。二度も戦火に包まれる故郷を見ることになったんですから。でも」
アンは一呼吸置くと、こう続けた。
「ターンブルに戻れたら、色々と調べたいことがあったので。それができることにドキドキしているんです」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます