第58駅 ワトソンバック攻略戦 ~カニンガム・ワトソンバック間~
準備を整えた僕達は、現在カニンガムから東に向かい、ワトソンバックを目指している。
目的はもちろん、ワトソンバックを奪還するため。
「おそらく、ワトソンバックでは市街地での戦闘は起こらないでしょう。その手前で会戦が起こるはずです」
「確かに、あの街の特徴から言えば、そうでしょうね」
戦闘車両内の会議室で、マークさんが口を開き、アンが同意した。。
「何でそう思うの?」
「ワトソンバックは商業都市で、経済を第一に考えるため流通に神経を使っているんです。なので、スムーズな流通を実現するため街に入る際の検問は簡易的、城壁も魔物から最低限守る程度しかなく、とにかく防御に不向きなんです」
「敵もそれを熟知しているはずですので、籠城は逆に勝率を下げる行為。むしろ開けた場所で会戦した方が勝ち目はあるんです」
なるほど、と思っているところへトムからインターホンで連絡が入った。
『申し訳ありません。この先に不審な魔力反応が検知されました。どうしましょうか?』
「一旦列車を止めよう。その間警戒態勢を取りつつ、不審な魔力反応があった場所へ調査に向かわせよう」
「それなら、エディがいくのだー!」
というわけで、列車を止めるとエディが兵士を何人か連れて調査に向かった。
「ただいまなのだー!!」
しばらくして、エディ達が帰ってきた。
その手には、小さい箱のような物が……。
「なんか、列車がいく方向におちてたのだー!」
「これは、爆弾の一種ですね。野盗が馬車を襲うときに使う物ですが、火薬の質と魔法的な処置が施されているようです。下手な爆弾よりも威力が高いですよ」
箱を分解して調べたマークさんがそう言った。
ただ、マークさんが言ったことって――。
「手間と高い技術がかかっているように聞こえるんだけど」
「そうですよ。そして、そんなことができる組織というと――――」
バルツァー帝国軍。正確に言えば、事実上バルツァー帝国軍の支配下にあるトレビシック王国軍、だね。
「そうそう。エディたちが箱をひろったとき、にげていくヤツらがいたのだー」
詳しく話を聞くと、その『逃げたヤツら』というのは五人組だったらしい。
もっとも、トラの身体能力を身につけたエディから逃げ切れるほどの距離にいたわけではなかったらしいので、すぐに追いつけたらしい。
「三人ころしちゃったけど、二人つかまえておいたのだー。うでとか足とかとれちゃったけど」
「すごいことあっさり言うね……。人を殺したのに何か思わなかったの?」
「べっつにー。エディは狩るほう、あいつらは獲物。獲物を狩るんだからころして当たり前だし、もしあいつらが抵抗してエディがやられたら、それはエディが弱かっただけなのだ」
どうも人間同士の戦いは、エディにとって狩りの延長らしい。
後でアンに聞いてみたんだけど、エディみたいに動物の加護系のスキルを持つと、思考が動物のものに寄るらしい。
だからエディの考えは変わらないだろうし、それを僕達は受け入れてうまく人間社会に馴染むように調整していくしかないそう。
色々思うところはあるけど、今はトラウマにならなくてよかったと思うことにした。
その後の展開だけど、予想通りワトソンバック手前の平原で敵と遭遇、会戦。
敵はグラニット号の進行ルートに爆弾を仕掛け列車を損壊、それから奇襲を狙おうとしたらしいけどエディの活躍によってこれを阻止。
結果、僕達は万全の状態で戦うことができ、危なげなく勝利できた。
そしてワトソンバックは降伏。僕達はワトソンバックの奪還に成功した。
ここまでは順調だったけど、アンが警告じみたことを言っていた。
「カニンガム、ワトソンバックと防備が薄い都市を奪還してきました。しかし、残るは首都ターンブルと軍港都市バニスター。防御が厚く、攻めにくい場所です」
「つまり、これまでみたいに順調には行かない、ってことだね」
これからの攻略の難しさを確かめつつ、奪還した都市の地盤固めを僕は考えていた。
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