第55駅 カニンガム奪還戦 ~カニンガム~
「見えました。カニンガムの港と、少数の戦艦が」
「手はず通り、戦艦を列車砲で殲滅。その後上陸戦に移行しよう」
カニンガムが近くなったので、僕達は戦闘車両に移動。そこでトレビシック王国の士官だったという冒険者に指示を出し、作戦を開始した。
「列車砲用意。目標、前方敵戦艦」
「準備完了。照準合わせ、よし」
「撃て!」
ドオオォォォン!! という轟音と共に、前方にわずかながら見えていた戦艦が大爆発を起こし、沈没した。
「着弾確認。敵戦艦、沈没!」
「よし。次の目標を設定。どんどん沈めるぞ。それと客車に待機している兵士にも伝令。すぐに上陸作戦を行えるよう準備せよと」
そしてほぼ一方的に敵の戦艦を沈めると、そのまま全速力で港に突入。
アンからの情報で列車を停められる広い広場があることがわかっていたので、そこで停車。兵士として志願していた冒険者達を降ろすと、街の制圧に乗り出した。
「戦闘は最小限に! 街庁舎を制圧せよ!」
その後、一時間ほど戦闘を行い、街庁舎の制圧に成功。高性能な銃を始め、圧倒的に高性能な装備を持っていることが大きな勝因となった。
さらに数時間後、街全体の掌握に成功。バルツァー帝国の息がかかった兵士を追い出すことに成功した。
街庁舎を制圧してしばらくした後、ある人物が面会にやって来た。
「お初にお目にかかります」
「あれ、ブルネルさん!? なんでここに……」
その人物を目にしたとき、僕は驚いてしまった。なにせ、グラニット王国にいるはずのブルネルさんが目の前にいたんだから。
でも、アンだけは少し反応が違った。
「あ、もしかして、マーク・ブルネルさんですか?」
「はい、その通りです、王女殿下」
どうやら、アンはこの人物に心当たりがあるらしいけど……。
「紹介します、トシノリさん。彼はマーク・ブルネルさん。グラニット王国にいるジョージ・ブルネルさんの従兄弟に当たる方です」
「従兄弟!? 双子じゃなくて?」
「よくそう言われますが、間違いなくジョージと私は従兄弟ですよ、グラニット国王陛下。まぁ、ジョージとは同じ十六歳ですし、血縁関係もあるので似ていても当然だとは思っていますが」
いやぁ、同い年とか血縁関係とか含めても似すぎだと思うんだけど……。
「とりあえず、本題に入らさせていただきます。私はトレビシック王国が占領されてから、仲間と共にカニンガムに潜伏し、国を奪還すべく機会をうかがっていました。そのような時、皆様がやって来たのです」
「それで、これを皮切りにトレビシック王国奪還を実行に移したいと」
「その通りです。幸い、トレビシック王国の各都市に我々の仲間が潜伏しています。さすがにカニンガムほど警備が緩くないので、情報収集ぐらいしか出来ない人数ですが……」
マークさん達の事情は大体わかった。
その上で、確認したいことがいくつかある。
「実行するかはさておき、トレビシック王国を奪還するにはどうすればいい?」
「条件が二つ。一つは主要都市四カ所の奪還です。ここ『カニンガム』、トレビシック王国の地理的な中心地で商都でもある『ワトソンバック』、首都『ターンブル』、北部大陸に面し防衛の要でもある軍港都市『バニスター』。
この四カ所は他の都市とは別格で、政治的・心理的影響が大きい場所です。なので、これらの都市を制圧すれば他の町や村もついてきます」
「なるほど。もう一つは?」
「バルツァー帝国の傀儡となったトレビシック王国を支配する者を殺害、もしくは捕縛することです。一人は、バルツァー帝国から監視役として派遣されている女性将校『リヒャルダ・ローゼン』。もう一人は、現在国王を名乗っている『ジョセフ・スチーブンソン』」
「スチーブンソン!?」
突然、アンが声を上げた。どうも聞き覚えがある名前らしいけど……。
「知ってるの、アン?」
「はい。スチーブンソン家は公爵、つまりトレビシック王家の分家筋に当たる貴族家で、有事の際は王位を継げる立場にある家です。ですが、今代の当主であるジョージ卿は可も無く不可も無い、平凡な人物であるという評判だったはず。なぜ国王などに……」
「性格面では、かなり強い出世欲を持った人物とのことです。おそらく、そこをバルツァー帝国につけ込まれ、傀儡の国王となったのでしょう」
とりあえず、こちらの勝利条件と現在のトレビシック王国の内情についてはわかった。
トレビシック王国奪還に本腰を入れるかどうかは別にして、すぐに取りかからなければならない事がある。
まずは、それを片付けるとしよう。こっちの生死に関わることだし。
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