第48駅 特急! 未調査領域の探索 その1 ~未調査領域4カ所~
新しい車両の確認が終わった次の日、僕達は未調査の領域へと乗り出した。
っていっても、すでに冒険者を送り込んだ調査は済んだらしいから、僕達は実地確認と駅の設置をすれば良いんだけどね。
その代わり、一度の調査で複数の領域を確認する。ある程度領域の全容が掴めているから、一つの領域にあんまり時間をかけなくてもいいんだよね。
最初は、セントラルシティの北にあるグレインハイランドを経由し、そこから東端を目指す。
ナッツガーデンの東だね。
「事前に聞いていたけど、これは……」
「圧倒されますね……」
「いつ来ても、元気をもらえるのだー!」
エディは何度か来たことがあるらしいけど、初めてやって来た僕とアンはその光景に圧倒されていた。
青く輝く海をバックに、一面に咲く太陽のような黄色い花。
ヒマワリが領域の全領域で咲いていたんだ。
「ヒマワリは面白い植物でね。花が太陽に向くように動くんだよ」
「へぇ。不思議ですね」
「見るだけじゃなくて、食べることも出来る。種はナッツとして食べられるし、絞れば油が採れる」
「ヒマワリのタネ! 香ばしくっておいしいのだー!」
一通り領域を見た後、聖樹の麓に駅を設置。ヒマワリ畑にちなんで『サンフラワーガーデン』と名付けた。
続けて訪れたのは、サンフラワーガーデンのちょうど反対側。グレインハイランドを挟んで西端の領域、ファイバーランドの西隣に当たる。
この領域も、サンフラワーガーデンとは別の意味で圧倒されていた。いや、ある意味似ているのかな?
「ここはまた……」
「カラフルで楽しいですね」
「エディには、ちょっとニオイがキツいのだ……」
この領域は、ハイビスカス、アンスリウム、イランイランといった熱帯性の花、トロピカルフラワーがそこかしこに咲いていた。
エディが『ニオイがキツい』と言ったのは、香料の原料になる花があるからじゃ無いかな?
「それにしても美しいですね。庭師のブラックさんに持って行ったら喜ばれるかも知れません」
「いいかもね。一旦セントラルシティに寄るから、その時に渡そうか」
「庭に植えるんだったら、なるべくニオイがしないヤツにしてほしいのだ……」
この領域も一通り見終わり、駅を設置。トロピカルフラワーの花畑ということで『トロピカルフラワーガーデン』と命名した。
一度セントラルシティに戻り、補給等を済ませた後、そのまま西へと出発した。
スパイスプレインを経由しさらに西へ進むと、海岸が広がる領域に辿り着いた。
「ここの海岸、油っぽいカタマリがよく落ちているのだー」
「正確には、竜涎香だね。香料の原料になる」
「なかなか入手出来ない物です。北部大陸でも入手出来ますが、相当高値で取引されますね」
事前情報で、竜涎香がたくさん落ちている海岸であることは把握していた。
竜涎香とは、クジラが体内で生成する結石で、基本的にクジラが自然排出して漂着した物か、捕鯨により入手出来る。前の世界では捕鯨が規制されていることもあり、漂着した物を拾うか人工合成したものしか存在せず、天然物はものすごい高い値段で落札されたというmニュースを聞いたことがある。
この世界の場合、クジラのみならず一部の魔物のような巨大生物も竜涎香を作り出すらしい。
ただし、クジラが生息するような海域は必ず魔物も徘徊するという危険地帯でもあるので、漁で竜涎香をゲットしようとすると常に命の危険がつきまとう。
こういった事情もあり、竜涎香は高値で取引されるのが普通らしい。
「それにしても、なんでこんなに竜涎香が落ちているんだろう?」
「海流の関係ですね。ここの沖は海流によって世界中の巨大生物の死骸が集まってくるんです。そこから竜涎香が流出し、この海岸に漂着するんです」
トムが解説してくれた。
また、トムによれば毎年数キログラム程度の竜涎香がコンスタントに漂着するとか。
なので、竜涎香採取を事業化するのはアリだろう。
「この領域と駅は『グリスコレクト』と名付けよう」
グリスは竜涎香の英語『アンバークリス』から。それを収拾するという意味で『グリスコレクト』にした。
最後に調査したのは、セントラルシティの東、フルーツタウンをさらに東へ行った東端の領域。
ここも海岸になっているんだけど、やはりかなり特徴的な領域だった。
「見たことがない木ばかりですね。似通っているから、同系統でしょうか?」
「ここもエディお気に入りの場所なのだ! おいしい木の実がたくさんあるのだー!!」
「ヤシの木がこんなに生えていると、なかなか壮観だね」
生えていたのは、ヤシの木だった。
ヤシの木と一言で言っても、種類は多種多様。
ココナッツになる『ココヤシ』、パームオイルを採取できる『アブラヤシ』、デーツの材料になる『ナツメヤシ』、パームシュガーが採れる『オウギヤシ』等々。
「他にも、大型の種類は建材になるし、実の殻は炭になるし、外皮の繊維は掃除用のブラシとかにできるよ」
「様々な用途に利用できるんですね。商業的にも注目したい作物です」
「見た目もキレイだしなー。庭にピッタリだと思うのだー!」
この領域と駅の名前は、ヤシの海岸という意味で『パームビーチ』とした。
今回の調査は、これで終了。どれもグラニット王国の発展に繋がりそうな領域だった。
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