第44.5駅 メイデン共和国首都・タロコ ~プユマ及びタロコ~
「街をご案内する前に、一つだけ。実は、プユマとタロコに駅を設置する土地をご用意してあります。メイデン共和国から、グラニット王国への便宜です」
「なるほど。その代わり、自分たちにも使わせて欲しい、と?」
「ご明察ですね。国王陛下のスキルで呼び出す施設なので所有権を我々が主張することは不可能ですが、使わせていただければと。メイデン共和国としても、陸上輸送として魔力鉄道は注目しておりますので」
つまり、将来メイデン共和国が魔力鉄道を開発なり導入なりした時に、僕が呼び出した駅を拠点として使用するつもりらしい。
プユマとタロコはメイデン共和国の南北に離れて存在しているので、その間については自分たちで駅を建設するんだろう。
「アン、どう思う?」
「私はこのお話をお受けしてもいいと思います。メイデン共和国との友好の証になりますし、トシノリさんが呼び出した駅を接収するつもりも無いようですので。それに、駅が無いと色々と大変なんですよね?」
そう。グラニット号とボールドウィン号、僕のスキルで呼び出した二両の魔道鉄道は、僕が呼び出した駅に停車しないとメンテナンスや修理が行われない。
長く駅に停車できないとなると、ちょっと不安になってくる。
ただ、アンの考えではメイデン共和国内での駅の設置は問題ないらしい。
それを踏まえて、僕はこの件を了承した。
「……狭いね」
案内された場所は、港の一角だった。
ただ、思ったよりも狭い。駅と貨物駅を設置しようとすると、土地が足りなくなることは明白だった。
「プユマ港は将来の拡張を見越して多めに土地を確保していたのですが、それでも歴史を重ねるとどんどん土地が使われてしまいまして。ご用意出来たのが、やっとこの土地だけでして……」
「いえ、なんとかなります」
こういう狭い土地に適した駅がある。それが『橋上駅舎』。
設置出来るようになってから使う機会が無かったけど、ようやく日の目を見たって感じだね。
ちなみに、駅名は街の名前を取って『プユマ駅』にした。
「駅が出現するのを初めて見ますが、驚くやら不思議な物やら……。ところで、列車をこちらに停めてから街を案内する、という流れでよろしいですか?」
「それで結構です、トウさん」
その後、グラニット号をプユマ駅に停車させ、トウさんの案内で宿にチェックイン。そして街を案内された。
翌日、僕達はトウさんを乗せてプユマ駅を出発。北にある首都・タロコを目指した。
「皆様、昨日のプユマはいかがでしたか?」
「とても堪能させていただきました。私は本でしかこの国の事を知らなかったので……」
「僕は自国以外にはスタッキーニ王国しか知らなかったのですが、スタッキーニとはまた違う異国情緒に溢れていましたね」
「珍しいものも食べれておいしかったのだー!」
プユマの街の様子だけど、前の世界で言うところの伝統的な中華風の町並みだった。食事はもちろん中華料理。
中華料理の一部は販売車や売店で買えるけど、やっぱりプロが手ずから作る料理はひと味違う。
最近中華料理を食べたのは――たしか、トウさんと藤田さんを連れてグラニット王国に招待する道すがら、グラニット号の食堂車で食べたんだった。
あの時は、トウさんが連れていた料理人の人が作ったんだっけ。
「お楽しみいただけたようで嬉しく思います。プユマは港街なので海鮮を使う料理が主流でしたが、タロコはまた違った雰囲気の料理を楽しめますよ」
タロコに到着したのは、プユマを出発してから三日ほど経過した頃だった。
トウさんの案内で駅の用地に誘導されると、プユマの時と同じく橋上駅舎と貨物駅を設置。街の名を取り『タロコ駅』と命名した。
「すみません。本来であれば我が国の代表が出迎える予定だったのですが、現在の状況ではその時間が取れず……。おそらく、対面するのは会議の場になると思います」
「構いませんよ。現在の状況であれば仕方がありません」
「ありがとうございます。では皆様の宿に案内致します。その後、会議の具体的な日程を確認した上でお伝えしますので。他の国の方々の集合状況を知らなければなりませんので」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます