第43駅 砂糖の領域 ~シュガーフィールド~

 宮殿や庭について決まってからは、僕達にやることは無い。

 実際に作業するのは作業員さん達だし、そこに監督としてブルーノさんやブラックさんがいるだけ。

 街の開発については、ブルネルさんが主導で計画している。

 僕達の意見も取り入れつつ、クロスタウンでの開発経験を加味して、より効率的・機能的に開発してくれていると思う。


 そういうわけで開発については僕達の出る幕はすでに無いので、僕達にしか出来ない仕事――つまり、未知の聖樹の領域へ行って調査に向かっている。

 今回は、セントラルシティの南にある領域『カフェマウンテン』の西を調査する予定。




 目的の領域に到着すると、僕はいつものように聖樹の麓に駅を出現させ、乗せてきた冒険者と一緒に探索を行った。


「ここ、来るのが楽しみだったのだー!」


「来たことあるの、エディ?」


「そうなのだー! ここ、あまい物がたくさんあるのだー!!」


 『あまい物』という意味は考えられる物が多すぎてわからなかったけど、ちょっと探索したら答えが出た。


「あら、これ……サトウキビでしょうか?」


「あ、確かに……。ところで、アンがサトウキビの事を知ってるって事は、北部大陸でも作られてるの?」


「はい。北部大陸の南部、スタッキーニ王国やメイデン共和国で作られています。ただ、栽培条件が合う土地が少なく、世界的な需要に比べて生産数が圧倒的に少ないため、砂糖は非常に高価なんです」


 逆に言えば、輸出品として非常に優秀ですよね、と付け足すアン。

 確かに、高価で売れるのなら外貨獲得の有力な品になるはず。


 続いて見つけたのは、リュウゼツランだった。


「あら、これ……サイザルアサでしょうか? でも、なんでここに……?」


「ちがうのだ、アン。たしかに似てるけど、根元からあまい汁が出てくるのだー!」


「って事は、アガベかな?」


 サイザルアサと同じく、リュウゼツランの仲間。花茎に甘い樹液を貯めており、この樹液を『アガベシロップ』という。


「ちなみに、アガベシロップを発酵させると『プルケ』、それを蒸留すると『メスカル』っていうお酒になるんだって」


「サトウキビと同じですね。サトウキビもラム酒の原料になりますし。まあ、砂糖よりもさらに生産量は少ないですが……」


 ちなみに、メスカルの中でも特定の基準を満たした物が、有名な『テキーラ』。アガベと一言で言ってもいろいろ種類があるらしく、その中に『テキーラリュウゼツラン』なる種もあるらしい。

 まぁ、そこまで細かくなると僕も見分けが付かないけど。




 またさらに調査を進めていると、エディが声を上げた。


「これ、けっこう甘いヤツなのだー!」


「見たところ、普通の草のようですけど……」


「ん-、あ、もしかしてこれ、ステビア?」


 ステビアとは、南アメリカ原産の、甘味を持った植物。

 実は甘味料の他に、薬草としての効能も持っている。


「甘味であり薬草ですか。効能にもよりますけど、確実に需要はある植物ですね」


「そうだね。それと、この領域の特徴が大体わかった」


 この領域、サトウキビといいアガベといいステビアといい、甘味料の原料になる植物が多い。

 だから、領域と駅の名前はすぐ決まった。


「『シュガーフィールド』と名付けよう。『砂糖の畑』っていう意味だよ」


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