第31駅 ギルド開設・魔力鉄道開発事業 ~クロスタウン~

「ギルド関係者ですか。良い人材を拾ってきましたね」


 クロスタウンに戻って早々、僕達はブルネルさんにジョシアさんとエドワードさんを紹介した。

 やはりブルネルさんもギルド開設は必ず行わなければならないと認識していたようで、今回の二人の移住も願ったり叶ったりだったようで、早速ギルド開設へ動き出すようだ。


「とりあえずギルドの建物については建築士のブルーノさんにお願いするとして、お二人はしばらく駅の事務室を中心にギルド開設へ向けての活動をお願いします。それと、ジョシアさん――でしたっけ?」


「はい。私が何か?」


「これに目を通していただきたいのです」


 ブルネルさんがジョシアさんに渡したのは、分厚い本の山だった。


「鉄道の運営方法に関する資料です。将来、事業ベースで魔力鉄道が本格始動した際、ジョシアさんに運営を一任したいので。もちろん、すぐに全て覚えるのは無理ですので、徐々に覚えていただければ」


「はぁ……わかりました……」


 ジョシアさんは資料の量に一瞬顔が引きつったが、魔力鉄道は将来この国……いや世界中の経済が変わりうるポテンシャルを秘めていることを見抜いていたらしく、なんとかやって見せようとしているようだ。


 ちなみに、この資料は駅の事務室にあったもの。この資料のおかげで、鉄オタのくせに鉄道運営システムにあまり詳しくない僕でも、他の人に鉄道運営のノウハウを伝えることが出来る。


「それと、陛下。リットリナさんが何か報告したい事があるとか。後でお会いになられた方がよろしいかと」


「わかった。すぐに向かうよ」




 リットリナさんは、すでにクロスタウンに工房を構えていた。

 ただ、やはり入植したてなので、他の建物に比べて大きいとは言え、シンプルな小屋っぽい感じだった。

 もっとも、本人はいずれセントラルシティに拠点を定める考えらしく、現在の仮設のような工房は非常に都合がいいらしい。


「リットリナさん。僕に何か用があるとか……」


「ああ、国王陛下。実は報告したい事があってさ。とりあえず、レイラインから魔力を吸い上げる機構が完成した」


 なんと、あまりグラニット号を見せる時間がなかったにもかかわらず、もう魔力鉄道の基幹技術を完成させたとは!


「ただ、ものすごく大きすぎて場所を取る。魔力鉄道みたいな大型の魔道具じゃないと搭載は無理だね」


「なんとか小型化は出来ないのですか?」


 尋ねたのはアンだった。魔石に頼らず、レイラインから無限に魔力を使えるのは非常に魅力的で、様々な魔道具に応用したいらしい。


「今現在の予測だと、がんばってもせいぜい十パーセントの縮小にしかならないね。使いどころは限られると思う」


「そうですか……」


 アンが残念そうな顔をしている。

 まぁアンの考えは実現不可能に近いが、僕としては魔力鉄道の方が気になっている。


「魔力鉄道の量産化についてはどう?」


「今のペースで行けば、早くて半年後とかね。もっとグラニット号を見せてもらえる時間が増えれば、量産化できる期間が短くなるけど」


 ちょっとそれは難しい。グラニット号にはまだまだ仕事がたくさんあって、これ以上長い間拘束されると、色々と支障が出てきてしまう。


 ただ、今回の件でリットリナさんの突出した才能が垣間見えた。わずかな期間で魔力鉄道の基幹技術を模倣してしまったのだから。

 この人には、これからも期待できると確信した。




 駅の宿直室に戻ると、僕はステータスを確認した。

 やはり魔力鉄道を量産化するには、見本として列車がもう一台必要だと感じた。そういうことが出来ないかなと思って、ついついステータスを覗いてしまった。


「あ、レベルが上がってできる事が増えてる」


 スタッキーニ王国との往復が功を奏したのか、レベルが四十五になっていた。建てられる建物が増えている。


「『橋上駅舎』か」


「なんなのだ、それ?」


「線路の上に橋が架かっているような見た目をしている駅のことだよ。駅の事務所も橋の中にあって、小さいスペースで駅が建てられるんだ」


「なるほど……。ですが、グラニット王国では使いそうにありませんね」


 アンの言うとおり、土地が余りまくっているグラニット王国では、使う機会がなさそうだった。

 そもそも、ブルネルさんとの話し合いでグラニット王国は魔力鉄道の活用を前提とした街作りをすることになっているので、用地確保に頭を悩ます心配がない。


「強いて言うなら、北部大陸の街に駅を建てることになったら使うかもね」


 まぁ、そうなる機会は当分先だと思うけどね。


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