第30駅 ギルド開設 ~ウリッセ~
今日は、スタッキーニ王国に滞在していた。
また新しく採取した商品を売りに行くのと、遅れてスタッキーニ王国に辿り着いたトレビシック王国の亡命者達を迎えに行くためだった。
この辺はすでにスタッキーニ国王との合意に則って行う手はずになっていて、今回の訪問では僕達が王宮へ向かうことはないはずだった。入国したことを知らせはしたけど。
でも、なぜか王宮へ招待されてしまったんだよね……。
「どう思う、アン?」
「スタッキーニ王国が私達のことを『言うことを聞く配下』の様に思っているのであれば問題ですが――今はなんとも言えませんね。とりあえず今回は招待に応じてみて、相手の出方を見てから判断したらいいと思います。あまりにも横暴であれば、招待に応じる頻度を下げればいいですし」
というわけで、王宮の方で用意された馬車に乗り込み、スタッキーニ王国の王宮へ参上した。
そのまま会議室に通されると、そろそろ見慣れてきたスタッキーニ国王がすでにイスに座っていた。
「突然お呼び立てして申し訳ありません。グラニット国王陛下がお持ちになった品々は、かなりの評判を得ていますよ」
「それはありがとうございます。ところで、僕達と会談する理由はそれだけではありませんよね、スタッキーニ国王陛下?」
「そうですね。むしろそちらが本題です。ところでグラニット国王陛下は、ギルドについてご存じでしょうか?」
「ええ、まあ」
ギルドについては、以前アンから教えて貰った。
なんでもこの世界、どの国でも同業者同士で組合のような物を作っているらしく、それがギルドと呼ばれているようだ。
その中でも魔物の退治や素材の採集等を行う『冒険者ギルド』と商人が所属する『商人ギルド』が二大ギルドとして認知されており、規模も大きいらしい。
「これからグラニット王国の規模が大きくなれば、ギルドは必ず必要になるのはご理解いただけるかと思います」
「それはそうなのですが……実際に立ち上げるとなると色々と問題が……」
建物を造るのはがんばればどうにかなると思うけど、問題は実務の方。
どういう手順で、どういう方法で運営し、書類は何が必要か、どういう役割の人が必要かとか、そういった事がわからない。
アンはギルドの役割については知っているけど、実務については何も知らない。現場の事をそんなに知らなくても良い立場だったからだろうけど、それが今回響いている形だった。
「そうだと思って、ご紹介したい方がいます」
そう言ってスタッキーニ国王が入室させたのは、二人の男性だった。
「紹介しましょう。ジョシアさんとエドワードさんです」
「ジョシアです。商業ギルドで仕事をしておりました」
「エドワードと申します。以前は冒険者をしておりましたが、すでに引退してギルドの仕事に従事していました」
ジョシアさんは四十代頃、エドワードさんは三十代頃の年齢だった。
そしてなんとこの二人、ブルネルさんが率いていたトレビシック王国の亡命民らしい。
「南部大陸に打ち立てられたというグラニット王国への移民の話は聞いておりました。しかし、スタッキーニ王国の商業ギルドと顔を繋いでからの方がお役に立てるだろうと、移民を見送ったのです」
「オレもジョシアさんと同じ考えで、この国の冒険者ギルドで縁を繋ごうとしておりました。その活動も一段落したので、グラニット王国へ移住しギルドの立ち上げをしようかと」
ここまでの話を聞き、僕はアンに目配せをした。
「前向きに受け入れるべきだと思います。どのみち、ギルドはグラニット王国に必要な物ですし……」
「なるほど。ところで、スタッキーニ国王が紹介してきた理由って何だと思う? 彼らの経歴からすれば、別にスタッキーニ国王を介さなくてもいいような……」
「太鼓判の意味でしょうね。スタッキーニ国王の紹介なしでいきなり『ギルドを立ち上げたい』と言っても、私達では実力もわかりませんし、どこか疑った目で見てしまうかも知れませんので……」
確かに。支援を引き出すだけ引き出して何もせず消息不明に……みたいな詐欺師だと疑っていたかも知れない。そういう考えが少しでもあると、こちらが出す支援が少なくなり、立ち上げに時間がかかっていたかも。
でも、スタッキーニ国王の紹介であればそういった疑念も弱くなり、最初から全力で支援。スピーディーにギルドを立ち上げられる。
今後の事を考えると、ギルドは欲しいし、早めに立ち上がればグラニット王国の特色を掴んだ状態で本格始動できるしね。
「――わかりました。お二人のことは歓迎しましょう。グラニット王国に到着次第、すぐにギルドの立ち上げを行って下さい」
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