第18駅 最北の領域と新施設 ~クロスタウン~

 方針が決まったので、僕達はひたすら北を目指すことになった。

 ただ、そろそろフルーツのストックが切れかかっているので、セントラルシティに戻った後、そのまま東へ行きフルーツタウンへ。そこでフルーツを補充する。

 また、北に向かう途中にあるグレインハイランド、ターキーウッズで消費した穀物や七面鳥を補充し、そこからさらに北へ向かった。


 そういうわけで、ターキーウッズの北にある領域に着いたのは、カフェマウンテンを発ってから五日後の事だった。


「到着しました。ここが南部大陸最北端の領域です。このまま北に行けば、北部大陸へ行けます」


「ありがとう、トム。じゃ、早速駅を召喚してっと」


 いつも通り、僕は聖樹の麓に駅を設置した。

 すると、ホームに見慣れない設備があった。


「しっかりした素材で作った露店、という感じですね」


「小さいのだー」


 アンとエディは初めて見ると思うけど、僕にとっては見覚えがあった。

 前の世界で、駅のホームにあった売店とほとんど同じだった。

 ただデザインが違っていて、緑を主体に黄色の草花模様が描かれていて、アール・ヌーヴォー調のように曲線を優美に強調した字体で『SHOP』と書かれていた。


 僕は自分のスキルを確認してみた。

 やっぱり、レベルが二十五に上がっていて、新しい設備が使えるようになっていた。

 その一つが売店。ステータス上では『売店設置』となっていたけど。

 名前の通り、ホームと構内に売店を設置出来るらしい。もちろん、スタッフはトム・クラーク。


「ここ、やっぱり売店で間違いないみたいだね。構内にもあるみたいだから、見に行ってみようか」


 というわけで構内に入ると、やっぱりあった。しかも建物内だから、ホームの売店と違ってコンビニ風になっている。


「販売車よりも品数が少ないですね」


「まぁ、駅の規模が小さいからね。売店に割ける面積が少ないし」


 それと、駅にもう一つ変化があった。なんと、ポスターを貼れるスペースが構内とホームの所々に出来ていたんだ。

 今のところ、前の世界で十九世紀フランスの画家だったロートレックの描いたポスターみたいなタッチで、グラニット号を描いたポスターが貼られている。


「そうそう。さっき確認したけど、『貨物駅』も設置出来るようになったみたい」


「貨物駅ですか。運んできた荷物を降ろしたり、運びたい荷物を詰めたりする駅のことですよね? まぁ、便利だとは思いますけど……」


「今のエディ達には、あんまり必要ない気がするのだー」


 みんなに確認を取ったけど、やっぱり今のところ貨物駅を設置する必要性は薄いみたいだね。いずれは必要になると思うけど。




 所々変わった駅を見回った後、領域の調査に出掛けてみた。得られた成果はと言うと……。


「あんまり変わったところがないのだー」


「木材となる木は豊富にありますし、土壌も作物がよく育ちそうです。水源もありました。しかし、あまり特色が無いような……」


「セントラルシティと似たような環境だね。強いて言うなら、領域の面積がセントラルシティより狭いかな? それでもそこそこの広さはあるみたいだけど」


 ということは、ここは将来北部大陸との玄関口になる場所と言うこと。逆に言えば、そういう機能がない現在は無個性な場所だった。

 それを踏まえて、この地と駅名を付けるとすると。


「この場所は『クロスタウン』って呼ぶことにしよう。駅も同じ名前ね」


 北部大陸との交差地点である町、ということで『クロスタウン』と名付けた。


「まぁ、ブナンな名前だなー」


「私はいいと思いますよ。将来的に、ここは北部大陸との交流と交易の場となるのは確実でしょうから」


 今回は、エディとアンで評価が分かれたかな。




 翌日、南部大陸最北端の地を目指すべく僕達は北上していた。

 まぁ北部大陸へそのまま行くワケでは無いけど、とりあえず下見と言うことで南部大陸最北端まで行ってみようということになったんだ。


 で、間もなく南部大陸最北端に到達しようかという、正にその時。


『緊急停車します。大きく揺れますので注意して下さい』


「え……うわっ!?」


「ガルッ!?」


「きゃあっ!」


 反動で前のめりになったんだけど、僕達はシートに座っていたから大したケガをせずに済んだ。


 僕はすぐにデッキに行き、内線でトムに連絡した。


「何があったの!?」


『巨大な岩が進路上にありました。周囲は森ですので迂回も難しいかと……すみません、緊急発車です! バックしますので気をつけて!』


「わわっ!?」


 いきなり後退したから、思わず尻餅をついてしまった。

 そして列車がバックを始めると同時に。


 ドーン! ドーン!


「この音は……?」


 デッキ乗降扉の窓から外を覗くと、巨大な岩が列車を狙って落ちているのが見えた。

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