第4話

 大佐がある時、資料を持って私の正面から目を直視しながら近づいてきた。


「日本は戦う相手を誉め称えることはあるか?」


 私は少し考えて、『平家物語』の那須の与一の話をした。戦の中で平家方の一艘の船が、扇を立ててこれを矢で撃ち抜けと源氏方の那須の与一に洋上で誘い、那須の与一は見事にその扇を矢で撃ち抜いた。


 合戦の中でのひとときの雅な時間。


 大佐は、その話を聞き終えると、無言で大きな封筒から資料を取り出し何枚も私に見せてくれた。


 「これは、1945年の資料だ。」

そう言って1枚づつ広げるように私に見せてくれた。


 その資料には、当時の英国軍の記録が何枚も記されていた。その記録の中に私の祖父がいた。


 大佐は、私の祖父が当時の英国軍の大佐から、名誉の「少尉」の階級を授与されている、と資料を読みながら私に言った。


 大佐の側にいたもう一人の人が、その部屋の大きなスクリーンを用意した。大佐が「あれを見ろ」と言った。


 白黒の古いフィルム映像。空にプロペラ機が飛んでいる。その飛行機を撮影しているフィルムの目線は、同じ高さの上空にある。しばらくすると、上空でコックピットが開いて中のパイロットが右翼の上にゆっくりと歩いて出てきた。


 その翼の真ん中あたりで、パイロットは立ち止まり合掌をして数秒後に翼から空へ飛んだ。


 パイロットが合掌したままの姿で海へと飛んだのだ。


 その時に、上空にもう一機の戦闘機が飛んで来て、上空でコックピットを開けてパイロットが出てきて飛んだ。合掌したままの姿の者へ向かって真っ直ぐ垂直に飛んだ。


 そのパイロットが先に飛んだパイロットの胸を一瞬掴んだ時、そのパイロットのパラシュートが開いた。その衝撃でその2人は離れていった。2人空中で顔を見合せながら。


 私の祖父は合掌したまま海へと沈んでいった。

その後に、もう一人のパイロットの白いパラシュートが、海面に花を咲かせるように大きく広がり浮かんだ。


 英国軍の大佐の音声で「攻撃するな」と聞こえた。

白く海面に咲いた花で映像は終わった。




 



 




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