第11話

「結婚する。」


「え?」


武蔵くんの一言に、晴香は驚いた。

今日で会うのは最後にしよう、そう思っていたのに。


何よりも、武蔵くんがそこまで真剣に晴香のことを考えていたというのが意外だった。


「俺、頑張って稼ぐし、、」


稼ぐ?

結婚と稼ぐ、という言葉が交わらなくて、しばらく考えてしまった。


そっか。

俺が養うてきな?


便利だな、と晴香は思った。

頑張って稼いで私のことを養ってくれる。

武蔵くんはそう言ってるんだ。


「本当に美容師なの?」


お母さんの言葉から武蔵くんのことを信じられなくなっていた私は、そうきいた。


「ほんとだよ!」


武蔵くんはそう言ったが、いまいち信用できない。ふわふわした喋り方のせいだろうか。


晴香は武蔵くんの手のひらを触った。

晴香より大きな手はカサカサして黒く汚れている。爪の間も汚れている。


晴香が手を見ていると、武蔵くんは

「カラーとかしてるからさ、汚れてる。」と言った。

黒くなっているのは、美容院でカラーをしてる時についたということなのだろうか。


晴香は本当に美容師なのかも、と思った。


「武蔵くんっていっつもここでナンパとかしてるんだと思ってた。まさかほんとに美容師だったなんて。」


「そう見える?笑」


「うん。笑」


「いろんな女の子と遊んでるのかと思った。」


「そんなことしないよ。」


「ほんとに?」


「だって、晴香ちゃんこわいし、、。」


「・・・」

そんなこわいイメージなのか私。汗






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