第10話

朝学校に行くと、下駄箱の入り口に田口先生がいた。

先生は私に気づかず、花壇に水をあげている。


先生、と後ろから声をかけると、

「わっ!びっくりした!河野さん」

というとわはは、と笑った。


先生って朝が似合うなあ、と思う。

武蔵くんが夜の世界の住民なら、田口先生は昼間の世界の住民だ。

なんかそんな感じがする。真面目というか。

例の面談の時も、いろいろ心配してくれた。

きっといままで悪いこととかしたことないんだろうな。

一部の生徒からはうざがられている。きっと真面目で明るすぎるからだろう。だけど晴香は先生のことは嫌いではない。


先生はまた花に水を上げ始めてた。

さっきと同じような軽い足取りで。


晴香は先生に悪かったな、と思った。

先生のびっくりした顔を思い出した。

自分の生徒がヤンキーと夜歩いているところに出くわして、びっくりしただろうし、怖かったに違いない。


だって私が一番怖いし不安だもの。

このまま武蔵くんみたいなヤンキーと会ってて良いのだろうか。



良くないよね。

こんなのもうやめよう。

先生をこれ以上困らせちゃいけない。




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