第5話 真実への一歩

さっきまではみんなで来ていたのでそこまで何も感じていなかったが、さすがに一人だと薄気味が悪いととむらは思った。

旧校舎に入り、少し右手側に進むとさっきの地下への入り口がある。

(とりあえず行ってみるか)

少し悪いことをしている気がしたが、好奇心がとむらの背中を後押しした。


階段を下りていくとさっきも見た大きな扉がある。

やはりここだけ少し雰囲気が違っている気がする。


少しドキドキしながらもとむらは鍵穴に鍵を差し込んだ。

カチャ

鍵が開いた


扉を慎重に開けてみるとそこは小さいコンピューター室のような場所だった。

(なんだ、ただの倉庫みたいな場所か)

一瞬、とむらは拍子抜けした

だが、せっかくだからどんなものがあるのか見ていこうととむらは思った。


とりあえず机の上にあった資料を一つ手にとってみる


人体改造によるの発現


(なんだこれ?)

ここにはただの学校の資料しかないと思っていたが、どうやら違うようだ。

とむらは他の資料にも手を出してみる


ファントムの固形物での使用


さっぱり資料の内容は分からないが、ただの誰かのいたずらではなさそうだ。

とりあえず、もっとあたりを念入りに探ってみる必要があるととむらは思った。

PCをつけてみる

(ここに何か情報があったりしないか?)

ただパスワードを入力せねばならず、そこまで情報を得ることはできなかった。


机やロッカーの引き出しを開けてみることにする。

そうすると気になるものが出てきた。


C16の活動記録


その資料をめくってみると高校生の調査記録が示されていた

そこにはその人がやっていたことや一日のルーティーンが書かれていた

そして、読んでいくうちに違和感が増してきた。

(これ、僕が行っていた店だ)

そこにはとむらがよく通っていた喫茶店が記録として残されていた。

とむらの鼓動が急に早くなってきた。

そして、恐る恐る次のページをめくってみる。

そこには


交友関係

1年2組 沖村優愛


1年2組 利根川和義


とむらは少し吐き気がしてきた。

(なぜこんなものがある?僕はなんなんだ?)


地面にしりもちをついてとむらは考えだす。

もしかしたら今までの違和感はすべて本物で実際に誰かに観察されていたのではないか?

そして、今まで過去が曖昧だったり、実家がある場所に行こうとしても帰れなかったのは、ぼくを陰で見ている人間たちが仕組んだことではないのか?

そうだとしたらぼくはいったい何なんだ?


考えれば考えるほどとむらは気持ち悪くなるばかりだった。

1時間ぐらい唖然としてしまっていた。

だがようやくとむらも冷静に少しなってきた


(何はともあれこれからどうするか考えなければ)

それを考えるためにはもう少しこの資料を読み込まなければいけないだろう

とむらは資料のページをめくるのに抵抗感を覚えながらも次のページを開いた

そしてとむらが知りたい情報が出てきた




不都合な行動を抑制するために


実験体の不都合な行動を抑制し、生活に違和感を抱かせないために、今回では、マイクロチップを体内に埋め込み行動の制限を設けることとする。




(そういうことだったのか)

とむらの一つの疑問が解決して、すっきりしたと同時に気持ち悪くもなった。

(この体にチップが埋め込まれてるのか…)


どうにかそれを解除するために

その部分を読み込んでみたがこの資料には載ってはいなかった。


他の場所も調べてみたが、もうここから得られることはなさそうだ。

今の状態を見てみるにもうここは使われてはいない。

だから、今でも自分の研究をしているのであれば、研究されている場所に何か

チップを取り出すための解決策があるのではないかととむらは思った。

(でも場所がわからないんだよな)


ここにもそんな情報はなかった。


もう夜も更けてきた。

(もしぼくが観察されているのだとしたらここに長くいることは危険かもな)


とりあえずめぼしい資料とさっき鍵と一緒に拾ったブレスレットを持って帰ることにした。

(これはいったい何に使うんだ?)

もしかしたら研究員のただのアクセサリーかもしれない

とむらはそこまで気にはしなかった。


帰ると緊張から解放され、突然睡魔が襲ってきた。



目が覚めてとむらは時計を探す。

どうやら帰ってきて、すぐに寝てしまったようだ。


(もう遅刻だな)

これから学校に行く気にもなれなかったし、とむらは学校をサボることにした。


空いた時間で持ち帰った資料を読んでみることにした。

(やっぱり夢じゃないんだな)

そう思いながら、資料を眺めていると昨日は気づかなかったことに気か付いた。

何個かの資料にロゴがついている。

それに隣に富川と書いてある。

(どこかで見たことあるぞ)


そう思い、とりあえずPCに座って検索してみることにした。

(やっと見つけた!)

とむらが見つけたものは富川薬品という会社だった。


この会社は名前の通り薬品会社だが、いろんな違法なものを研究しているのではないかという黒い噂もある。


(とりあえずここを調べてみるしかなさそうだ)


正直、もう手掛かりはここしかない

とむらはそう思い、この会社を調べ始めた。










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