第2話 違和感
今日の授業を終え、とむらは下校していた。
川沿いの道を歩いていると桜が散り、緑が生い茂る木々たちの姿があった。
もう少しすれば暑くなるだろう
途中で少し気分を変えようととむらは別の道から帰ろうとした。
だが、できなかった。
(体が動かない?)
特にどこから帰ろうとも問題はなかったが、だがとむらは日々の生活に違和感を覚えるばかりだった。
家に帰り、とむらは気になって家の整理をした。
どうも最近の違和感をぬぐい切れないようだ
とむらは一人暮らしだが実家のことも覚えているし、両親の顔と名前だって思い出せるだが、本当にそれが正しいのか
とむらの心が何かおかしいとささやきかけてくる。
そして家の整理をして気づいたことだが、家族に関する思い出の品などが全くないことに気づいた。
とむらはどうしても謎が頭を離れなくなり、取り越し苦労かもしれないが実家に行ってみることにした。
だが、実家の場所に行こうとするとまたもや体が動かなくなる
(どうしてだ?)
自分の体さえも真実から遠ざけようとしているようだった。
家の整理をしたり、考え事をしていたら気づいたらもう日が暮れていた。
とむらの中の謎は深まるばかりだが、現状ではどうしようもない。
いったん、そのことを置いておいて夕食を買いに行くことにした
(コンビニ行くときは体が止まらないのにな)
そんなことを考えながら、コンビニに行っていた。
コンビニに行く道は薄暗く、住宅街ではあるが人はほとんど歩いてはいない
まだ春だが、少し寒気を感じる。
何か嫌なものが近くにいる気がして、すぐにとむらはコンビニに向かいたいと思い、早足になる。
そんなとむらの後ろでは確かに黒くうごめいているものがあった。
コンビニに着いた時にはもうその気配は消えていた。
いつもの生活圏に戻ったような安心感がある。
とむらは片手で簡単に食べられるものが好きだったので、サンドイッチを適当に二つ取り、レジに向かった。
会計が終わった後、少しコンビニから出るのが怖かった
(ここで突っ立っていてもしかたないか)
少しの勇気を出して一歩外に出てみた。
「もしかして、とむら?」
少し遠くからそんな声が聞こえてきて、とむらは正直ほっとしていた。
この声はいつも聞いている聞きなじみのある
透き通ったキレイな声だ
「どうしたんだ?沖村もここに用なのか?」
「うん、少し飲み物が欲しくなってね。そっちは?」
「ただ飯を買いに来ただけだよ」
優愛は少し不思議そうにした
「君ってひとりぐらいだっけ?」
「知らなかったのか?」
「あんまり自分のこと話さないじゃん」
「聞かれなかったからな」
ほっとしたとむらだったが、少し不安が頭をよぎる
「お前はここに来る途中になんか変なことなかったか?」
「何それ?」
(この様子なら問題なさそうだな)
「いやなんでもない。何もなければそれでいいんだ」
「???、ならいいけどどうしたの?」
「少し聞いてみただけだ。長話もなんだし僕はもう行くよ」
「そう?じゃあまた明日ね」
「ああ。」
その後の帰り道にもう怪しい気配は感じなかった。
会社帰りのサラリーマンや犬の散歩をしている人などいつもと変わらぬ日常がそこにはあった。
(僕の気のせいかもな)
そうとむらは思い、先ほどのことは頭の片隅へと消えていった。
家についてからさっき買ったサンドイッチを食べながら考えていた。
残念ながら家族のことなどの知りたい情報を知ろうとするとどうしても
自分の体が動かなくなる。
それに疑問を持っていなかったが家に家族や自分の過去に関係あるものがほとんどない。
もしかしたら今まで疑問を持たなかったのではなく持たないようにされていたのかもしれない。
だが、もしそうなら自分は誰かに操られているということになる。
とむらは何ともいえない不気味な恐怖心に襲われた。
(しかし、操られているとしたらなぜこの疑問が頭に浮かんだんだ?)
ここまで行った時点でとむらは考えても何もわからないと思った。
これ以上考えたとしても混乱するだけだろう。
今の生活に支障はきたしていない
だから、少しずつ謎を解き明かす方法を考えようと思い始めた。
(風呂入ってさっさと寝るか)
そう思い、とむらは寝る準備を始めた。
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