第2幕第3話 ガエラボルンの虐殺

 プラスニュウム独特の照り返しが船体を虹色に染め上げていた。

 女皇騎士団が秘匿していた偽装空中戦艦である《ブラムド・リンク》。

 中原最強の傭兵騎士団エルミタージュの誇る所属不明にして中規模クラスの飛空戦艦。

 女皇騎士団旗艦のロード・ストーン、ナカリアのマッキャオが最大級とするとブラムド・リンクは二周りも小さい。

「これより敵反応エリアに突入します」

「よしっ、現在の速度と高度を維持したまま南南東からフォートセバーン東側ガエラボルン宮殿上空に突入する」

 フォートセバーンとはゼダの西に位置する隣国メルヒンの首都だ。

 いや、正確をきすのであれば“首都だったところ”だ。

 長らくメルヒンとゼダとは平和的に共存してきているため、もともと国境検問所がない。

 険峻なファルガー山脈の山越えルートで危険を冒して国境を越える者もほとんどいない。

 山越えルートがまったくない訳ではなかったが、鉄道敷設後に危険を冒すだけの意味が薄れた。

 このため、24年前のアラウネの改革時にゼダが西部地域の鉄道網施設を大々的に行った際にはメルヒン側も協力してファルガー山脈のトンネル掘削工事を行った。

 両側から掘り進めて合流した際には両国民が抱き合って大工事の完遂を喜んだ。

 いうならばトレド-フォートセバーン間の大陸横断鉄道は両国にとって平和の象徴だった。 

 皮肉にして龍虫はこのトンネルを利用し、フォートセバーン制圧からトレドに急襲したのだ。

 ベリア半島側にまだ生きている人間がいるならどれほど希望になったことだろう。

 しかし、情報が正確なら、其処に生きている人間は最早ほとんど存在していない。

 艦長席のイアン・フューリー提督は再度同僚たちに意志を確認する。 

「分かってるよな“ディーン”にラファールのお嬢。ここでの失敗は絶対に許されない。回収失敗なら潔くプランC採用で作戦を中止する」

「言われずとも」と“ディーン”。

「お願いしますよ、フューリー提督。回収と離脱。それがすべて終わるまでが任務です」とルイス・ラファールは念押しする。

「わーってるよ、お前等をアルマスまで無事に連れ帰らないと俺が《鉄舟》サンにどやされる」

 二人の騎士たちはとっくに腹をくくっていた。

 すっかり自分の席にした副長席で黙々と思案に耽っているスレイと、軽装甲冑姿の友人たちに不安な眼差しを向けるメリエル。

 どだい心配するなというのが無理な話だった。

 なにしろ、これから“ディーン”とルイスがやろうとしていることとは、真戦兵なしで龍虫の支配領域に突入して最新式の真戦兵を無傷で回収し、場合によっては戦果を挙げろという途方もなく困難な任務だった。

 トレドでは無線報告を待ち受ける後詰めのフェルナン・フィーゴ大佐たちが待機している。

 耀家の小僧さんこと公明を至極あっさりと発見回収した“ディーン”は、アルマスのホテルシンクレア臨時司令部に居るミシェル・ファンフリート大佐とトレド増援部隊をマッキャオで運び入れて空港待機するフェルナン・フィーゴ大佐らに今後の作戦計画と無線通信を合図としたその後の行動指針を示した。

 つまりは使徒機回収作戦はそれを契機として龍虫への反抗作戦として始められるか否かの正念場だ。

 イアン・フューリー少佐としても戦線での立場が問われている。

 ただの船乗りとなるか、作戦参謀たるか。

 その意気込みが声を荒げさせる。

「トレドで回収した耀家の小僧はどうしている?」

「突入ルートの再確認を念入りにやってます。けれど、廃都の今現在の状況がどうなっているかなんて・・・」

 スレイは眼下に見えてきたフォートセバーンの惨状を想像して絶望的だとさえ思った。

「かぁぁぁ、百識ベックスの一番弟子と二番弟子が揃い踏みしてて、出たとこ勝負の無茶な賭けになるなんて、師匠に遭わせる顔がないぜ、スレイ」とイアン・フューリー提督は目一杯にボヤいた。

「やめましょうや、イアン師兄。ミュルンの使徒搭載機の開発を国レベルで進めてくれていただけ、メルヒンにゃ感謝するよりないですから」

 確かにと頷きつつ、イアンは改めて敵の厄介さを再認識した。

「其処をベリア上陸してから真っ先に叩きに来やがったってことは、アイツら生物兵器としての戦略知能をいまだ喪っちゃいねぇってことだものな」

 イアンとスレイの会話が続く間、不安げなメリエルにルイスは例の黄色い布を手渡した。

「メリエル、髪を結んでくれる?」

「うん、わかった」とメリエルは受け取った紋章布でルイスの長い髪をリボンのように束ねた。

「これは私たちだけの戦いじゃないの。当代最強騎士フィンツ・スタームではなくて、私だけに託された思いの象徴・・・」

「此処にいられない“母さん”の思い?」とメリエルはルイスを真っ直ぐに見据えた。

「それと、私たちに万一のことがあったら、貴方だけは覚えておいてね、親友として、見届け人として・・・」

 「これからも戦いが終わるまではずっと」という言葉をルイスは敢えて呑み込んだ。

 エルシニエ大学で毎日講義を受けていた日々がまるで遠い日の出来事のように感じられる。

「わかってる、絶対に生きて帰ってきてね」

 いつになく真剣な顔をしたメリエルは言われた通りにルイスの長いブロンドヘアを黄色の布地で束ね、その背中をそっと抱いた。

「行くぞルイス、お前だけは絶対に死なせねぇ!」

 “ディーン”の一言にルイスは深く頷く。

「その言葉。そっくりお返しするわ。あなたを死なせたらトワント父様やあの人に会わせる顔がない」

 支度の調った“ディーン”、ルイス、耀公明の三人はカーゴへと移動する。

「上空旋回の後に急速降下。各部迷彩稼働を維持。推進機関を一時停止。これより作戦を発動する」

 イアン・フューリーの号令で作戦は発動した。

 ブラムド・リンクの真下にはかつての王宮が無残な姿を晒していた。


 本来なら真戦兵を格納する巨大な櫃。

 それがカーゴだ。

 本来は空挺揚陸作戦時に使用する。

 空っぽで運用するなど考えられないことで、スレイの発案でトレドで回収作戦計画立案時のアイデアで重し替わりに石塊を詰め込んだ箱をロープで束ねて乗せていた。

 その重量がなければ三人は軽すぎる櫃の中でミキサーされた後に肉塊になりかねない。

 カーゴを地表スレスレに投下しピタリと空中で静止する。

 そんな操艦が出来るのは世界中、エウロペア大陸中探してもブラムド・リンクのフューリー提督だけだろう。

 あるいはフェルナン・フィーゴ提督にも出来るかどうかだ。

 卓越した作戦立案能力と絶妙な操艦技術。

 それこそがぼやきのと形容のつく、イアン・フューリー少佐の真骨頂だった。

 難民キャンプに身を潜め、事態の推移を見守るしかなかった耀公明たちは“ディーン”の使う符丁で自分たちが呼ばれているのだと察した。

 耀家の者を誰にも悟られずに探し当てる符丁を“ディーン”は使った。

 天才マイスターである耀公明はそれでやっと自分たちに気づいた“誰か”が回収に来たのだと察した。

 迂闊には名乗り出られなかった。

 なにしろ公明たちは機密兵器の担当者たちだ。

 完全に信用出来ると判断がつくか、アルバート・ベルレーヌ大佐が現れない限りは避難民達に混じって身を潜めていた。

 ブラムド・リンクに乗艦した他のメルヒンメンテナンサーたちは格納庫で待機していた。

 “ディーン”が適正を確認すると言っていた通り、揺れる飛空戦艦の艦内では胃に来て吐く者もいたが、そうでもないとあっけらかんとしている者もいる。

 メルヒンの旗艦格レッセル・ミードに乗艦経験のある者も居たからだ。

 余裕のある者たちはゼダの最新鋭機であるアドバンスドダーインシリーズのスカーレット・ダーインとトリケロス・ダーインをブラムド専属のメンテナンサーに説明されながら確認していた。

 降下したパージルーム内で黙り込んでいた三人は地表スレスレに投下されたパージルームの外に出て状況を確認した。

「左宮前広場だ。流石はエルミタージュの旗艦だという。正にドンピシャだ」と合流以来沈みがちだった耀公明は少しだけ気を良くした。

「こまかいのに気づかれる前に距離を稼ぐぞ」と“ディーン”とルイスは抜刀し、ガイド役の公明に従って左宮地下区画へと入っていく。

「しかし、何処の国も考えることは似たようなもんだ」

 パルムの女皇宮殿も広大な地下区画は女皇座乗艦ロード・ストーンやブラムド・リンクの格納庫と真戦兵の格納区画になっている。

 異なっていたのは急遽の迎撃戦により格納区画は空っぽも同然で激しい戦闘の痕跡が生々しく残っていた。

 壁には引き裂かれた龍虫の爪痕が残され、緊急発進を余儀なくされて鋼鉄製の扉が破られている。

「ああ、バリアント卿・・・」

 公明は旧知の騎士の戦死現場に思わず悲痛な声を上げる。

 メルヒンの旗機シュナイゼルが龍虫と相討ちで果てていた。

 操縦席を龍虫の堅い爪が深々と貫く一方でシュナイゼルが右手に構えた槍が龍虫の急所を的確に捉えていた。

「公明、気持ちは分かるが今は急ごう」

 “ディーン”に促されて公明は涙を振り払った。

「確か事前情報だと工房区画は地下第三層だったわよね」

「ええ、そうですが」

 先行するルイスが何故そんなことを改めて確かめたのかを公明はすぐに悟って絶望感に顔を歪めた。

 地下区画第二層が中型龍虫の蹂躙を許して滅茶滅茶に壊されていた。

 かつてはヒトだったものの上に灰のように覆い被さるものはナノ粒子だ。

 それ自体が肺病や喘息を引き起こす猛毒だ。

 その一方で最低限の消化器官しか持たない龍虫の餌となるのだ。

 分泌したナノ粒子で人間や動植物といった有機生命を微細に分解し、粒子の再取り込みによって活動エネルギーとする。

「こういう有様を見ると龍虫が確かに自律型戦略兵器だってことを思い知らされるわね」

「陽動で西風騎士団を出払わせておいて、その急所を抉ったか・・・」

 そうした作戦行動をするのが龍虫という単なる虫ではないバケモノの力だった。

 敵の主力を別の場所におびき出しておき、本陣を急襲する。

 首都であり、西風騎士団の最大拠点・ガエラボルン宮殿はそうして陥落させられた。

「だけど、どうやら俺たちはアイツを見くびってたみたいだぜ」

 “ディーン”は先ほどから感じていた“ソレ”の発する気配を感じ取っていた。

「龍虫の野郎共が自律型戦略兵器なら“お前も”そうだったよなミュルンの使徒」

「マサカっ!?」とルイス。

「確かに可能性はあるけど・・・」と公明。

「ミュルンの使徒・・・お前は単騎で群がり来る中型龍虫を片付けて籠城してたんだな」

(・・・・・・)

「ねぇ、“ディーン”。あなたが会話している相手ってマサカ」

「確かにミュルンの使徒ならあり得る」と公明が呟いたそのとき・・・。

「お前の強さはよーくわかった。けど、オツムの弱さもな。やっぱお前らに欠けたるモノは騎士様の頭脳ってことだ。俺ならお前みたいに埋められて身動きとれなくなるなんてことはねーぞっ、ソレを恥じて反省したのならちょっとばかし大人しくしてろや」

 “ディーン”は独り言を一法的に打ち切り、虎の子の携帯式無線装置を用意した。

「あー、こちらディーン。プランB即時実行」

『おいおい、こっちから視認出来るだけでも侵入に気づいた大型龍虫が二桁は集まってきているぞっ』とスレイの声が無線越しに聞こえる。

「だからこそのプランBだっ!ミュルンの使徒搭載機は健在。だが、地下区画第2層で身動きが取れなくなってる。精密砲撃でドカンと穴っぽこあけてやってくれ、場所は俺の立ってる位置からキッチリ南南西に30m。斜角修正下方-0.5度、左右そのまま。発射カウントダウン20・・・」と言ってから“ディーン”は不意に公明に向き直った。

「お前等は使徒機をなんて呼んでたんだ?」

 一瞬、面食らった耀公明は“ディーン”の言わんとしていることを理解した。

「あっ、フレアールです。メルヒンに伝わる伝承と言葉とで“炎の申し子”。設計用の試作機がエリシオン。楽園を意味する」

「フレアールとエリシオン・・・」

 ルイスは不思議な響きに反芻したが・・・

「おいフレ公、今からキッチリ10秒後に爆発が起きる。それに乗じて姉ちゃん抱えて地上に飛べっ!」

「フレ公って・・・」と公明。

「はいっ!?」と耳を疑うルイス。

 公明とルイスの驚愕など、耳に入っていないかのように“ディーン”はカウントダウンをやめなかった。

「カウント3、2、1・・・発射!」

 プランBことブラムド・リンクからの徹甲弾砲撃による対地攻撃の衝撃波でフォートセバーンの象徴だったガエラボルン宮殿左宮地下第二層は見事に吹き飛んだ。

 意匠を懲らした外壁が石塊となって舞う。

 そして、フレアールは“ディーン”の命令を忠実に実行した。

「フツー、お姫様だっこするかぁ」

 なんだか昨年末の舞踏会のときを思いだし、ルイスは自分の愛機となる予定のエリシオンがディーンの愛機となるフレアールに横抱きに抱えられていることを恥じらって顔を真っ赤にした。

 文字通りの表現で姉弟機であるエリシオンを抱えたフレアールが地表に舞い上がる。

「見てるこっちがなんかこっ恥ずかしいわっ」とルイスは軽い目眩を覚えた。

「おしっ、まずはよくやったぞ、フレ公。姉ちゃんを立たせて搭乗口開口。それとルイスはエリシオンで公明抱えて《神速》でブラムドのカーゴに逃げ込め」

「“ディーン”、アンタはどうする気よ?」

「何事もねぇ、最初が肝心なんだよねぇ・・・」

 “ディーン”はどういうわけか嬉々とした様子でポキポキと指を鳴らす。

「どういうことかな、ディーンさんっ?」

「これからフレ公とどっちが“主”でどっちが“僕”か白黒ハッキリさせてくるわ。“幸いにして”大型龍虫が二桁集まったとかいうじゃん。“使徒”と“騎士”とどっちが上なんだか・・・とことんやりあって来るわさ」

「え゛っ!」とルイス、公明は同時に発した。

 エリシオンを恭しく抱きかかえたフレアールが眼前に着地し、エリシオンを屹立させるとコクピットを開いた。

「さーて勝負といこうぜ、フレ公」

 “ディーン”は意気揚々と飛び乗る。

 “ディーン”を乗せたフレアールはいきなり大型龍虫の群れに突っ込む。

 こうして“ディーン”のじゃじゃ馬慣らしが始まったのだった。

「まったくセコいヤツだなお前、武器ナシで何処までやれるか見せてみろってか」

 それこそ願ったり叶ったりだ。

 “ディーン”はフレアールが徒手空拳状態なのもお構いなしに手近の龍虫の首を体ごと一回転させて捥ぎ取った。

「ほいっ、まずは一匹。んでもって、武器げっとな」と腕を捥ぎ取って鎌状の腕そのものを武器としてまだジタバタしている大型龍虫マンティスの胴体を凪いだ。

「コイツ等が如何に旧世界最強の兵器だってな」と“ディーン”は二体目に鎌状腕を振り回してズタズタにしながら言い放つ。「“自分たちが”武器そのものにされるのは想定外だっ!だからこうもアッサリと餌食になるし・・・」二体目の大型龍虫は機能不全で擱座した。「作戦を立てる知性やら理性やらがあるってことは当然“恐怖”という感情も知っている」

 一度離脱して体勢を立て直すべきだという“恐怖”から出た作戦を実行しようとした三匹目の大型砲戦型龍虫ハウリングワームが背を向けるとすかさず無防備な頭部にめがけてブーメランのように武器にしていた腕を投げつける。

 ものの見事にスポーンと頭部が取れて血飛沫が舞う。

「ヤツらは色々と考え始める」と手近な瓦礫を拾って偵察行動をしようとしていた飛行小型龍虫フライアイに投げつける。

「その時点で既に劣勢なのだと、まぁだ気づかない」

 迷彩を利用して背後から近付いていた大型龍虫マンティスがフレアールの裏拳を食らって倒れる。

 またしてもフレアールは腕を捥いで武器にしたのと同時に腹部を踏み抜く。

「劣勢だと分かっているのに無闇に戦いを続けるから被害は深刻化して」

 捥いだ腕をまたもブーメランのように投げつけられた大型龍虫ハウリングワームがまた一匹倒れる。

「しまいにゃ、思考停止に陥る。つまりだっ!“考える事が取り柄の兵器”が“考えることをやめちまう”」

 包囲陣形でフレアールを取り囲もうと近付いていた部隊が“ディーン”が繰り広げる想定外の戦闘に棒立ちになった。

 先頭の大型龍虫ハウリングワームを蹴殺すと、追随していた小型龍虫キルアントはただただ踏み潰された。

「その後はさ、一方的な“虐殺”。増える味方の損害、為す術もない仲間たち、最後にはさ」

 フレアールを攻撃しようとしていたマンティスが味方である筈の龍虫マンティスを攻撃してしまう。

「恥も外聞もない同士討ち」

 “ディーン”はフレアールを屹立させると猛然と啖呵を切った。

「タッスルもフォートセバーンもお前等の蹂躙を許したっ!だが覚えておけよ、“真のアークスの騎士”たるこの俺様に同じ手が通用するなんて思い上がるなよゴミ虫ども。かつて、我が祖アルフレッド・フェリオンはフェリオの王子という高貴な立場故に本気を出さなかった。その子、ファーン・スタームもお前等相手に本気を見せなかった。だが、俺はお行儀の良かったご先祖たちとは違うぞっ!虐殺こそ我が快楽。我が求めるは地表を覆う鮮血。知性あるモノの嘆きと哀れみを請う平伏こそが我が本懐。誇りある敗戦などクソ喰らえっ!戦慄と恐怖、無慈悲と圧倒的な暴力とでお前等時代遅れの旧式兵器を完全否定してやるっ!」


「あーあ、やっぱり“こうなったか”」

 イアン・フューリーは同僚だけに女皇正騎士“フィンツ・スターム”の真の実力と素顔を知っている。

 血に興奮してあの俺様暴君キャラが出てしまうのは無理もない話だ。

 もともと俺様だし、女系相続でなければ本物の暴君化している。

「いままでは一応、大人しくしていたのですね」とスレイは頬を引きつらせながらイアンを振り返る。

「並の真戦兵じゃアイツらの規格外の力にかかると一回の戦闘でスクラップにされる。だから重装甲型のトリケロス・ダーインはほぼアイツ専用機」

「しかし、また。全然臆していないのはどうしたわけです?」

 スレイは全く臆するするように見えない戦いぶりに舌を巻く。

 使徒搭載機は真っ白な機体でとても目立っていた。

「単なる実戦慣れだろ。アイツの場合は」

「あー、そうでしたか」と言ってスレイは自分を指した。「マサカとは思いますけど、俺の建てた作戦も?」

 イアンは弟弟子を横目にイヤな顔をした。

「“俺好みのゲスな作戦最高”と嬉々として採用した。『リヤド奇襲作戦』通称『海モグラ叩き作戦』がお前のデビュー戦になったのはそういう事情だ」

 オラトリエス首都への電撃降下作戦。

 狙いははなから真戦兵マリーンをほぼ無傷で差し押さえること。

 巣穴に誘導した後、火計で退路を断ち、もう一つの出入り口に腕の立つ騎士の真戦兵を配置する。

 そして出入り口でいぶし続ける。

 地下格納庫に煙が充満し、一酸化炭素で中にいる人間たちを全滅させる。

 抵抗できる真戦兵も待ち構えているところに慌てて出てくるので、倒したあと穴を塞ぐのに使う。

 戦力として使える真戦兵にしか用がないし、半端物の裏切り騎士などいらない。

 だから、殺虫よろしくに燻り殺す。

 騎士嫌いのスレイが嫌がらせで立案した作戦だというのに、後で大成功したと聞いて、いやぁな気持ちになった。

 メルには聞かせられないし、ルイスが聞いたらぶっ殺されそうだし、ディーンからは「お前は人の命をなんだと思っているんだ」と怒られた。

 なんの躊躇もなく非人道的な作戦を立案出来るのがスレイ・シェリフィスの取り柄で、幸いにしてこれから立てる作戦はそもそも相手は人ではないので非人道的な作戦でもかまし放題。

 腕によりをかけて殺虫術を磨くのが良さそうだった。

「ある目的のため、ドールマイスターの耀犀辰先代がこさえた世界最軽量かつ最脆弱なジェッタを用いてもエドナ杯で優勝した“ご褒美”で手合いが解禁になってからは、ひたすらの憂さ晴らしで挑まれれば手合いを受けて200戦無敗。それでも発揮した力はせいぜい最大でも6割程度。なにしろ、戦技訓練用のレジスタ“しか”使わせて貰えなかったからな。それでいて《騎士喰らい》とはよく言ったもんだろ」

「・・・・・・」

「オレが使徒搭載機の回収に“ディーン”を向かわせるのに反対してたのは、生まれて初めて存分に力を発揮しても“壊れないオモチャ”を手にした“ディーン”が思う存分に大暴れしたら、こうなることは目に見えていたからさっ」

 イアン・フューリーはブラムドの高度計に目を光らせつつも地上での戦闘状況を確認していた。

「ほっとくと永遠にやってそうですね・・・」

 心の底からあきれ返ったスレイは跳び蹴りを食らわせるわ、中型龍虫を投げつけて大型龍虫の頭部を破壊するなど、正に“やりたい放題”の親友の姿に露骨にイヤな顔をした。

 折角使えるという「天技」すらまったく使っていない。

 その必要がないからだった。

「これでトレドの包囲解放は成ったな。たった一人の騎士のせいで、龍虫どもは戦線を下げるしかなくなる」

 ブラムド・リンクが引き上げたカーゴから帰還したルイスは眼下の光景を目にして「はぁ」とタメ息をついた。

「戦い方が非道いわ」

「だよなぁ、どう見ても・・・」とイアンは頭を抱える。「フィンツが本気を垣間見せた相手はルイス嬢を含めてたった7人しかいねぇ」とイアンは指を数えてボヤく。

「そうですね、アタシとウチの兄貴シモン・ラファール。決勝戦の相手だった国家騎士団黒騎士隊の現エース、アリオン・フェレメイフ大尉とマイオドール・ウルベイン中佐」

「それにアイツの実の父親たるオーギュスト・スターム元司令、ハニバル・トラベイヨ現司令、ビルビット・ミラー少佐・・・女皇正騎士に3人、国騎に3人・・・あとは規格外なお嬢と自分のオヤジだけ。なにせお嬢は攻撃速度だけならフィンツを超えてるから」

「嘘っ!」とスレイが慌てる。

「つーか、知らないでツルんでたのか?呆れたヤツだな、スレイ。天技十六夜と《紅孔雀》の使い手で二つ名が“剣聖エリンの再来”。ジェッタで戦ったのを割引しても、フィンツに膝を付かせたのは今のとこお嬢と太陽の騎士だけさ」

 「太陽の騎士」というのがオーギュスト・スタームの二つ名だ。

 そして、エドナ杯の名前にも残る光の剣聖エドナ・ラルシュが剣聖と呼ばれた騎士たちの得意技に命名して、修練の方法だけは伝道書として後世に遺した。

 エドナの天技指南書。

 なんの為にそんなことをしたかは眼下を見れば一目瞭然だ。

 「騎士の本懐」こと龍虫との戦いにおいて通用すると判断した技を再度の襲来に備え、技の本質と習得方法とを後世の騎士達に遺したのだ。

 こうした日のために。

「フューリー提督。“剣聖エリンの再来”は幾ら何でも言い過ぎ・・・」とルイスは少しはにかんだ。

 かつてスカートの剣聖、剣聖女王エリンと呼ばれたエリンベルク・ルートシュタインが、夫を王位に就けてメルヒン統一を成し遂げた時に遷都した都が正しく“ディーン”が大暴れしているフォートセバーンだった。

 十字軍結成時、齢60歳を超えながら並の騎士でないと見抜いた若者たちを身分に関係なく「特別選抜隊」としてシゴキにシゴいた。

 それが、後に剣聖として世に知られる若者たちだった。

「まっ、俺の見たとこファンフリート卿で保って三合。まっ、アノ人も俺等と同じ頭脳労働タイプだからそれでもいいんだけどね。それともし本当にいればの話だが、ヴェローム公国に居るというウワサのファルケン子爵。“ディーン”どもと相対して“戦い”になるのはその程度だな」

「うへぇ」

「大体、先のエドナ杯で準々決勝でルイスお嬢の倒した相手。それが東方外征軍を悩ませている噂の《疾風の剣聖》だな」

「えっ、変な冗談はやめてください」とルイスがたじろぐ。

「冗談なもんか、それと知られているなら国籍と名前を偽るのがエドナ杯出場時の作法。フィンツ坊やがベルカ・トラインという偽名で出場していたように、ソイツもパーン・クライスとか名乗ってた」

「えっ、パーン・クライスって?」

 ルイスが準々決勝で速度勝負に持ち込み片手槍で仕留めた相手だ。

「だが、ありゃ間違いなくフェリオの遊撃騎士メディーナ・ハイラルさ。東征偵察行動中の上空待機でも見間違うかよ。見間違えたとするならお嬢とだ。よほどお嬢に速度負けしたことを病んだんだろうぜ、お嬢ばりの高速展開戦術に双剣での抜刀切り込み突撃で槍持ちのファングどもをなぎ倒すんだもの。そりゃ、すぐに《疾風》の二つ名がつくわけさ。ヤツのタイアロット・アルビオレ“もどき”は高速機動戦術が売りだから正に相性バッチリ」

「げっ、メディーナって《フェリオ遊撃騎士団》のトップエースですよね?」と東方外征に関しては参戦済みで事情通のスレイが驚く。

「だいたい《疾風》って二つ名がつくほどのヤツだぜ。それにお嬢は攻め勝った。スピード勝負でメディーナより上行くヤツがいないってことはお嬢の二つ名に《神速》とつく日も近いかもな。ちなみにシモン大佐は先頃ものの見事に負けてる。ウチのビルビットが悔しがってたわ」

 実際のところ真戦兵同士の戦闘は個人戦でなく団体戦であり、ルイスの実兄シモン・ラファール大佐は中隊指揮官なので「負けた」という表現には齟齬があるが、イアンの言う「負けた」は指揮能力では、単騎で荒らし回るメディーナをあしらえなかったという意味であろう。

「流石に本家(女皇騎士団)は情報通ですね」と分家(外殻部隊エルミタージュ)所属のスレイは皮肉った。

 作戦自体はパルムの片隅で次々に立案していたが、実戦を見る機会はこれが初めてだった。

 なんでそんなに詳しいかはディーンが国家騎士団外征部隊の駐屯地をこの《ブラムド・リンク》で襲撃したのだという話を聞いていたからだった。

「まっ、アリオンまでやられたんで、アリオンより実力上位のヤツが次の最本命だとされている。ソレが下で暴れているアレだ。カロリファル公が恥を忍んで“フィンツ”を与力として貸してくれといつ言い出すかを“テリー”と賭けているとこさ・・・ソレもいつになるかわかんねぇが」

 特記6号条項の発動でパルムに帰るに帰れないイアンは意外と近くにいるニヤけた中年小男よりも妻子の顔を思い出して嘆いた。

 テリーことトリエル・シェンバッハは女皇騎士団副司令でイアンとは同期の悪友だ。

 メリエルが話について行けずにキョロキョロしているのを見かねたスレイは心底あきれ返った様子で説明する。

「どうやら、アッチの“ディーン”も桁違いのバケモノらしいよ」

「ここから見てればわかるよ。もう数えただけで70匹は倒しているもの・・・」

 《ブラムド・リンク》の艦橋から見え隠れする「敵」龍虫を相手の“ディーン”の大暴れを冷静に観察していたメルの慧眼とそれでいてしっかりイアンやルイスの語る騎士談義も聞いていたらしい様子にスレイはメリエルもただ者ではないと悟った。


 ・・・・・・

「えっ、女皇戦争で最強騎士のディーン・スタームは戦闘狂?」とティルトは呆れて大声を上げた。

 其処が法都ミロアの中枢たるファーバ大神殿だということもすっかり失念してのことだった。

「ええ、それが最後のアークスの騎士が辿り着いた境地です。いえ、より正確をきせば数多の天技が使えるのに技に頼ることもせず、圧倒的な暴力を行使する正に地上最強かつ史上最強の破壊者です」

 現法皇ファイサル・オクシオンは天を仰いで十字を切った。

 事が本人の捏造した史実の通りだとしたらどんなに気が楽だったと言わんばかりだ。

「武器も持たずに数多の龍虫を蹴散らす圧倒的な暴力ですか・・・」

 それでは本当のことなど書けるはずがないし、張本人は素知らぬ顔でデタラメを書いたのだと頷いた。

 ディーン・エクセイルとはどうにも厚顔無恥かつ相当に強かな性格だったらしい。

「《純白のフレアール》というのは正に皮肉です。良質なプラスニュウムを得られなかったフレアールの初期タイプは素体となった《ミュルンの使徒》との相性が悪く、装甲に難があり、真戦兵本来の迷彩機能を喪失して機体の色が真っ白でした。後に《フレアール・ネオン》と呼ばれるようになりますが、返り血に染まり、暴力そのものとなって龍虫を蹴散らして頭蓋を踏み砕き、平然と高笑いしてみせる。野生そのものの根源的な人間の強さ。それを体現したのが《純白のフレアール》と『剣皇ディーン』です」

 ファイサル法皇の表現はあくまでオブラートに包んでいる。

 つまり、不穏当な表現を敢えてしていない。

 実際は相当に滅茶苦茶だったのだとティルト・リムストンは察した。

「メロウの用意した決戦兵器ミュルンの使徒をも凌駕した?」

「“屈服させた”というのが正確な表現でしょうね。単独稼働でも中型龍虫と互角なのにアークスの覚醒騎士ディーン・フェイルズ・スタームにかかればフレアールも丈夫なのが取り柄の人型人形です」

 ティルトはその言葉にどう反応したものかと正に天を仰ぎ、ファイサルの言葉を訂正した。

「この緒戦の『剣皇ディーン』はディーン本人ではないですね」

「えっ?」

「趣向と戦い方がホンモノの『剣皇ディーン』、つまりはディーン・フェイルズ・スタームと違い過ぎます。無手格闘術の使い手で了解の上でディーンと入れ替われる人物が、自ら危険な任務に赴いた。つまり、“ガエラボルンのディーン”はトリエル・メイル皇子です」

「なんとっ!」

「おそらくは軍事機密事項として『剣皇ディーン』は複数の人間が演じたのです。ディーン・フェイルズ・スターム本人、トリエル・メイル皇子、そしてトゥドゥール・カロリファル公爵。いうならば《剣皇機関》。最高司令官の性格や趣向、戦い方は《虫使い》側にとっては一番把握しておきたい情報です。だから、『ナコト写本』には各剣皇の戦い方や特技は一切記されていませんでした。それが知られると不都合だったからでしょう」

 初代アルフレッド・フェリオンの戦い方は全くの未知。

 二代目ファーン・フェイルズ・スタームの戦い方は空と陸とを自在に移動しての高速立体戦術。

 三代目エセル・フェイルズ・スタームは高速接敵からの矢継ぎ早の連続攻撃。

 四代目カール・ルジェンテは重厚感溢れる打突技と周囲を囲ませない範囲攻撃。

 そして五代目ディーン・フェイルズ・スタームは無手による格闘技主体の機動防御戦術と、息もつかせぬ天技の連発発動による高機動戦術と、自身を囮として味方機の連携攻撃と連携防御を的確に繰り出す非凡な指揮能力による集団戦闘。

 そして、最終剣皇は・・・。

 ティルト・リムストンがナコト写本の行間から大まかに読み解いたのは、剣皇が筆頭騎士と呼ばれる存在だけあるそれぞれ桁違いの実力者故の戦いぶりだった。

 そして真実とは往々にして残酷なものだが、それを遙かに通り越したところに五代目たる『剣皇ディーン』は位置し、三人三様の変幻自在の戦いぶりを示していた。

 敵とした《虫使い》たちを唖然とさせたであろう《剣皇機関》。

 エリザベートに話した際に、一体彼女がどんな顔をするだろうかとティルトは正に余計な心配をしたのだった。


 ここで敢えて、十字軍当時の剣聖たちについて語っておく。

 「スカートの剣聖」あるいは「剣聖女王」と呼ばれた剣聖エリンこと、エリンベルク・ルートシュタイン(過去にはガードナー。夫の即位後はロックフォート。王都フォートセバーンは王姓に由来する)については前述した通りだ。

 《紅孔雀》など鳥に纏わる天技は、全盛期は“ベリアの魔帝”やら“魔鳥”とも呼ばれたエリンの駆使した技だった。

 たった一騎で数多の騎士たちを蹴散らして夫に王位を“与えた”前半生の武勇伝は既に説明した通りだ。

 そして、孫の治政で余生を愉しんでいる矢先に発生した「十字軍」と呼ばれる大陸諸国連合軍の総指揮官として齢60歳を超えても尚、その傍若無人ぶりと桁外れの強さは龍虫と数多に集められた大陸諸国の騎士たちを圧倒した。

 剣皇という存在を産み出した零番目の剣皇と言い換えても良い。

 彼女は並の騎士では拠点防衛にしか役に立たず、徒に戦死者を出して祖国の恨みを買うだけとアッサリと見切りをつけて、やはり並の騎士ではなかったボルニア王国出身の《闇の剣聖》マガール・ブラウシュタインと共に十字軍に参加した騎士たちの選別を行った。

 その眼鏡に適い、龍虫と互角以上に戦える騎士たちを「特別選抜隊」としてシゴいた。

 これも説明した通りだ。

 その筆頭がアルフレッド・フェリオン。

 後の初代剣皇だ。

 フェリオの事実上の王太子にしてゼダ女皇の実子という曰く付きの若者こそが、後に伝説となる最初の「アークスの騎士」だった。

 彼は口もお行儀も素行も悪いディーン役のトリエルと違い、王子としての品格と実力とを兼ね備えた真の英雄だった。

 なにより目端の良さにかけては後世のディーンなぞ、遠く及ばない。

 もっともトリエルが豪語した通り、本来の実力に関しては巧妙に隠していた。

 フェリオ帰国後に暗殺されたことがその後の混乱を招き、彼の遺児(十字軍出征前に祖国に残した許嫁の子)が後の2代目剣皇ファーン・フェイルズ・スターム。

 セスタのスターム一族直系の祖であり、《ゼピュロス》による戦いぶりは先に記した通りだし、絶技の《神風》でヴォイド・ハイランダーやエルザ・ファーレンハイトをも退けた。

 アルフレッド直属の部下であり、同じくフェリオの英雄騎士が《青狼》ライアック・カスパール。

 大戦で主を『剣皇』として勝利させた後、主が暗殺されたと知ると野に下って最初の遊騎士と呼ばれる。

 その後の詳細は謎だ。

 今はフェリオに併呑されたファルツ王国の“黒太子”ことレイゴール・ル・ロンデの末裔が第一幕終盤に登場したヴェローム公国の誇る英雄騎士クシャナド・ファルケン子爵である。

 《紅の剣聖》と呼ばれ、《虎砲》、《餓狼乱》、《獅子舞》など猛獣由来の天技はもともと彼の特技だった。

 十字軍や大戦と外国での転戦を重ねるうち、祖国で父王にかわり即位した異母兄に疎まれ、帰国を許されず流浪の身となり、晩年は親交の深かった獅子心公レイス・ヴェロームの招聘を容れてヴェローム公国の剣術指南役となって同地に骨を埋めた。

 その際にミトラ・ファルケン子爵と名乗った。

 その死後、子爵位は公に返上した為、改めて子爵位を賜りファルケン子爵と呼ばれるクシャナドこそ、レイゴールの正当な末裔である。

 レイス・ヴェロームはその名の通り、その大半が役立たずと見做されたゼダの禁門騎士たちを差し置いて「特別選抜隊」に抜擢されたゼダの公子だ。

 怯まず、退かず、臆さないことから「獅子心公」と呼ばれ、ヴェローム公は代々彼の偉業を後世に伝えるため「レオハート」を名乗るようになる。

 元より大国ゼダの公子故に剣聖位は名乗っていない。

 《風の剣聖》または《黒豹》リュカイン・アラバスタは現存せずフェリオに併呑された小国マルゴーの剣聖。

 特別選抜隊最年少にして男装の麗人・・・つまりは女性騎士である。

 剣聖エリンの手がけた最後の直弟子と讃えられる。

 彼女の娘であるソシア・アラバスタも《霧の剣聖》として半兄ファーンの片腕となった。

 ここに天技を奥伝として伝えた《光の剣聖》エドナ・ラルシュこそが『十字軍』『大戦』当時の剣聖たちだった。

 『十字軍』とは龍虫の大出現に対して大陸規模の連合軍で迎撃した歴史的事実であり、『大戦』とは龍虫の蹂躙によって人が住めない土地となった各国難民たちと亡国の騎士たちによる悲しい戦いだった。

 それから400年の刻を経て、剣皇と剣聖の血脈は女皇暦1188年に次々と蘇るのだ。

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