第3会場

  ※一読してからご覧ください※

 少々長いですが、予防線であり警告です。

 

 あまり心が強くない方、商業は目指しておらず、自分の好きなものを書きたいだけの方は見ないほうがいいかもしれません。

 ベースが辛口で、しかも誉め言葉を選んで書いていません。

 一応、全ての作品を最低三回は読んで書いています。


 下記感想は全て「商業作品として作るなら」を前提としています。

 なので面白く見せる構造に触れている部分が多いです。

 ただまさに私自身のように、商業では絶対無理だよなという趣味作品を投稿している人もいると思うので、その場合はだいたい見当違いになります。

 性癖メインの作品とかですね……その場合は笑ってやってください。


 また、書き出し祭りの特性ですが、第一話としての書き出しよりもそこがピークの実質短編のほうが評価されますが、私の場合はあくまで「書き出し」の評価をしています。

 書き出し祭り部分の満足度の評価でなく、次の話が読みたくなるか、の評価です。

「何をどう楽しむ作品で、どこに向けたものなのか」がしっかり提示してある作品の評価が高めになっています。


 プロでない方の場合、前提となる居場所と情報量、理解度が違うので、納得できない部分も多々あると思います。

 でもいつかプロになって企画を立ち上げるときには、私の書いていることの意味が分かるかなと。

 プロ作家の場合は共感してもらえる部分も多いのでは。

 

 せっかくプロサイドとして参加するのなら、ただ褒めるよりは嫌われても何か掴めるものを提示できればと思い、筆を執りました。

 私にとって、真面目に誠実に向き合うということはこういうことだと思いました。

 ですので少々厳しい言葉が並ぶ部分もありますが、改善案や間口の広げ方も同時に提案させていただいております。批判は代案ありきですね。

 指摘点を踏まえて改善、もしくはほかの作品に活かすなどできると思います。


 感想はもちろん絶対にこうすべき、しなければならないという意味ではありません。

 一笑に付してもらってもいいです。所詮は一つの方法論でしかないです。

 しかし私が指摘するのは、音楽で言うところの譜面通りに弾くことに近いものです。

 まずは楽器の使い方、譜面の読み方を覚えよう。アレンジはそこから。

 

 私自身まだ言語化できていない部分も多いですが、これを読んだ皆様に何かきっかけを与えられれば。私のこれもまた、練習です。


 できればご自身の作品の感想だけでなく、すべての感想を読んで、気になったところがあればその作品を読んで指摘を見る……なんて使い方をしてくださると本望です。

 私自身も含めて、みんなでレベルアップしましょう。


 だいたい、自分より売れてたり先輩作家がいるだろう企画でこんな危険なことやっても基本得はないんですよ!

 絶対に角が立つし、嫌われるし、文量やばいしで何も得はありません……!(本音)

 だから逆説的に善意がなければできないと解釈していただければありがたいです。


 私にとっていい編集さんは、手放しでは褒めず、基本は味方でも作品作りでは対立して代案や新しい方向性を提示してくれる方です。

 みなさんにとってそうなれれば。敵ではありませんよ。


3-01 あの夏に君がいる


 一発目からいいのが来てくれてよかった!

 ただ単純に文章が上手く、そして構成もいい。

 仲が良かった幼馴染の中に犯人がいる――いい引きですね。

 この作品は純粋に面白く、ぜひとも続きが読みたいと思いました。

 漫画になっててもいいですね。

 タイトルが出てこないですが、同じような構成の漫画があったはずです。そんなに古くはなかったはず。

 

3-02 毎日僕をイジメていたガキ大将の男の子がTSしました。


 どうでもいいことですが、小学生のゲーム機がswitchなんだと思い、自分の年齢を自覚して悲しくなりました。

 主人公の感情の動きはきっと賛否両論で、放置する、参加するなど色々な意見があるように思います。でもきっとイジメの当事者じゃないとわからないことがある……ということなんでしょうね。

 正直タイトルから色物を想像して読み始めたのですが、内容も構造もよくできていました。

 本番はこれから。続きが気になるいい作品でした。


3-03 ルゼの喝采、あるいはファランディールの偽典


 こちら木野先生の企画で「書き出し祭りの作品をコミカライズするなら感想!」にリストアップされていますので、スペースにて改めてお話させていただきます。


 しっかり先を考えていそうな作りでした。

 

 ポイントは取れなさそうなので、そういう意味で書籍化からのコミカライズは難しそうですが、企画から提出する形であれば可能性はあると思います。

 小学館とか全部署でこういうの好きですよね。

 さすがにこの書き出し祭りの範囲では何ともですが、構造をもっとわかりやすく天才ものに寄せて最初から活躍を見せてあげる……とかすればもっと良かったと思います。

 現状だとちょっと主人公のキャラが弱いです。話を俯瞰的に見すぎですね。主人公の目で進むのがやはり物語の基本です。

 ヒカルの碁みたいに、何をしているのかは全然わからないけどキャラが魅力的だからどんどん先が気になる系にするといいですよ。


3-04 呪われた厄災令嬢は幸運王子の【お守り】です!〜外堀陥没で溺愛ルートのできあがり〜


 普通にポイント取ってさくっと書籍化しそう。

 女性向けは詳しくありませんが、何をしていく話なのかの展開を想像させるように作り直しすればそのままポイント取れるんじゃないかなと。

 このままだとあらすじにふくらみがない。恋愛メインでもヒーローの属性とどんな恋愛をするのかの提示は必要だと思います。

 たぶんこの辺は男性向けラブコメと同じかな。

 

3-05 家出王子の世直し旅 〜幼女剣聖を添えて〜

 

 これもタイトルをなろうランキングに寄せればそのままポイント取れそうですね。動きがあるのでコミカライズ映えもしそうです。

 その場合は全体の作りを追放系にしていくことになるかな。

 スキルが面白いです。

 

3-06 自律式可動人形のとっておき


 単純に技術的なアドバイスですが、主人公とリアトリスの一人称が両方とも「私」なのはいただけません。

 それと一話の段階で視点の移動もあまり好ましくありません。

 まぁそれそのものは技術があればどうとでもなる部分なのですが、一人称が同じなので何が起きたのかよくわかりにくかったです。

 おそらくはバディものなのでしょうが、群像的に書くのは難しい技術です。

 文字数の割に本題があまり進まないこと、読者の側にも要求する理解水準が高いこと、など理由は色々あります。調べれば色々出てきますので、興味があればぜひ。主催の肥前先生も何か書いていた気がします。


 まずは主人公の視点のみに限って書いてみることをオススメします。

 主人公の目は読者の視点です。

 後半、リアトリスの視点から戻ってきてからは、一人称と三人称もめちゃくちゃになっていました。おそらく作者さんも少々困惑していたのだと思います。


 ––(作者さんの使ってるこれ、どれなのかわかりませんでした)はダッシュ(――)が全ての本で使用されているものです。二個セットで使います。

 しばらくなろうに投稿していないのでわかりませんが、前はダッシュだと一繋ぎにならず、罫線のほうだと一繋ぎで表示されていました。なのでなろうだけ罫線なんて使いかたをしていた気がします。

 

 まだ書き始めか、それほど量を書いたわけではない作者さんだと思います。色々厳しく書きましたが、めげずに頑張っていただければ。

 書ききるのが難しいテーマですが、しっかり最後まで書けば実力もつくと思います。


3-07 ドヤ街からの異世界進出 ~手配師から侯爵兼副社長へ~


 これ面白かったです。

 設定面の面白さとリアリティ、色々な面で見ても高得点だなと。

 強いのは異世界もので受ける成り上がりが簡単に書けること。

 エルフがフィリピーナ(今は差別用語かもしれません。少なくとも出版では使えなさそう)扱いなのにちょっと笑いました。

 

3-08 Boy Meets Hemorrhoids


 こちら木野先生の企画で「書き出し祭りの作品をコミカライズするなら感想!」にリストアップされています。

 その視点で見ると「本気で言っているのか……!?」でした。

 いや、面白かったですよ。主人公の尻から流れる血のようにスムーズに読ませられました。

 ただこれ絶対商業化は無理でしょ! 痔だぞ! 主人公が痔に悩んでるところから始まる漫画なんて見たことないぞ! 見てみたい。

 

 話そのものはこれジャンルなんなんだろう……ホラー? 

 一番インパクトがある場面は手首が出てくるところだったので、ホラーかなと感じました。

 とまぁそういった点ジャンルを絞れていないので商業化は難しく、作品の魅力は文体にあるので、それの大半を使えない時点で難しい。


 ジャンルを絞れていないということは、「何を楽しむ作品なのか」を提示できていないのと同義で、その場合読者の大半は手に取りません。

 黙っていても面白いものに囲まれる現代人は、その時々で自分が楽しみたいものを選びます。

 説明があってわかりやすくないと候補にすらしません。なろう系と呼ばれる作品のタイトルが長いのはそのせいです。要素だったり方法を最初から提示してあげることで間口を広げているわけですね。


 何より題材がね……SNSでバズっても、お金を出すところまではたどり着かないタイプの題材かなと。

 でも面白かったです。

 しかし出オチ(色々な意味で)。

 

3-09 走れ、敗者復活線!


 これ面白かったです。

 文句を付けられる場所は特になし。

 技術も内容も抜けている印象でした。

 なんというか、小説からそのまま映像化するタイプの作品ですよね。

 少し前の池井戸潤先生のブームを思い出しました。

 こういうのが読めるから書き出し祭りは面白い。

 投票対象です。


3-10 ねこ ~未知なる王国を目指して~


 猫飼いの私としても悲しい病気だ……。

 なんだか児童文学を連想とさせるような優しいお話でした。

 正直難しいのはわかるのですが、主人公をもっと冒頭から出してもらえるともっとよかったかなと。

 それほど違和感なく読めましたが、最初に提示された大筋と主人公の目的が違うのなら最初にあったほうがよかったかなと思います。

 借金の提示、そのあとに設定を書いていく……ということです。

 

3-11 レディ・プリンスは偽りだらけ


 む、難しい……! ベネディクトの本当の性別は男なのか、女なのか……!

 LGBTへの配慮が叫ばれる中、あえて言わせてもらいますが、ベネディクトが本当は女の子でというのが物語的には「普通」ですかね。

 女の子として生まれてしまったが、ベネディクトの国には男がおらず跡継ぎに困っていた……ということかなと予想。

 面白かったです。

 先も気になるいい書き出しでした。

 書き出し祭りの狡いテクニックですが、主人公の名前を短くするともっとたくさん書けますよ!


3-12 耳なしウサギと硝煙と彼女の夢が覚めないうちに


 素敵な関係性でした。

 優しくて穏やかで……書き出しとしてはちょっと情報量と引きが足りないので、どこかを削って、次に続く問題があればよかったです。

 

3-13 三文小説家、華の帝都の闇に墜つ


 こちら木野先生の企画で「書き出し祭りの作品をコミカライズするなら感想!」にリストアップされています。


 和風ファンタジーですね。

 この作品はよくできていると思いました。面白かったです。

 わかりにくく見える設定もすんなり理解させてくれるし、構造的にもしっかりしています。

 キャラも主人公の偏屈さやヒロインの飄々さなどがしっかり提示されていますね。


 第一会場で書きましたが、第一話の段階だと役割を持つメインキャラクターが三人までがベターです。

 主人公+主人公の現状を変える人(樺太)+敵(この場合は、主人公に同調していない人物の意味合い。必ずしも敵ではない)です。

 ほかのキャラはいますが、どれも大きくは物語に影響していないので、構造面で言えば存在しない扱いにしています。

 別なキャラがそこにいても構わない存在ですね。


 この作品はその構造になっているため、シンプルでわかりやすく構築されていました。

 和のテイストがどう評価されるかにもよりけりですが、先の展開次第では十分商業水準で書かれていると思いました。


3-14 ネイビーカラード・モダンガール


 設定が面白いですね。

 本格的なスパイものの空気でした。

 実質的に顔のない少女なので、誰にも覚えられない天才ものですね。

 

3-15 偽神殺しは祈らない


 ディーグレイマン的なダークファンタジー。

 明確に書きたいキャラクターがあるのがわかって好感が持てました。

 スーツで戦わせたいのわかる……人類みんな好きでしょ!

 

3-16 さっさと死んどけクソ野郎〜探偵の口が思っていた以上に悪すぎる〜 


 バディもの探偵を見る側という珍しい視点。

 最初の誤字は勿体ないですね……「bird」です。「bard(吟遊詩人)」で頭の悪い鳥、なんて意味のスラングなのかな? と調べてみましたが、たぶんおそらくきっと誤字。バカなことをさえずる鳥だとか、そういった意味合いなのかなと最初は思いました。

 

 話の引きや不気味さなどはいい感じ。

 両親はなぜ送り出そうとしているのか。このぶんだと兄も送り込まれてますよね。

 内容は普通に面白く、もっと先まで読みたくなりました。

 

3-17 皇后筆頭候補(代理) は、“粛正皇帝”の最愛を求めない。


 こちら木野先生の企画で「書き出し祭りの作品をコミカライズするなら感想!」にリストアップされています。


 人狼ゲームのような構造が使えて面白いですね。

 主人公の目的がはっきりしているともっと良いとは思いましたが、話の作りはとてもよかったです。

 主人公の人間性を考えると、強固な意志があってしかるべくかなと。

 現状だと国への忠誠心から、ということですかね。

 全体の構造をしっかり考えて、そのうえで要素や内容を配置していけば書籍化もコミカライズも普通にある作品だと思います。

 

3-18 猫⭐︎ファイブ・ギア・ファイブ!〜地域猫活動と猫嫌いな俺〜


 難しいテーマですね。

 私は猫を飼っていますが、だからといって野良猫にまで何かすることはありません。

 やはり責任の伴うべき行為であると認識していますから。

 その場だけの奉仕は最終的には誰も幸せにしませんしね……。

 主人公の思想や行動にはまぁ普通に賛否あると思います。

 ただ、他人の持ち物だとわかっているケースを蹴り飛ばすなど、猫のことに限らず振る舞いには好感が持てる人物ではありませんね。そこを削除するだけでより好感の持てる人物になりそう。


 話そのものも面白かったです。

 引きもよくできていました。猫嫌いが猫を救うことになるのがわかりますし。

 ドラマなどになっていても不思議ではないと感じました。

 

3-19 婿入りの宴

 

 因習ものですね。

 私はこういう和風因習ものが大好きなのでとても楽しみです。

 謎の儀式のおぼろげな概要が見えていて、それでいて主人公が巻き込まれていく……この手の話の場合、この導入しかなさそうです。ベストではなくベターの範囲ですが。

 ぜひ漫画で読みたいですね。


3-20 ゴミの王vs透明人間


 主人公が誰なのか。

 もう少し視点を絞ったほうがいいですね。

 ハンターハンターのメレオロンをちょっと思い出しました。

 

3-21 駄菓子屋主人のエテルナちゃん


 陰の実力者系。

 駄菓子屋の日常とのギャップを作れるし、感動や残虐系もできるし、優れた構成ですね。

 

3-22 油彩『或る女の屍』


 面白い!

 オチを予想できるように作ってあるのがいいですね。

 見たまましか描けない。なのにグロ絵画を描いたことがある。それはつまり……で、最後にちゃんと答えがある。

 主人公の人間性や葛藤などもしっかり書かれているし、文句なくいい「書き出し」でした。

 個人的な嗜好も優先して投票対象です。

 なんとなく、二人くらいまで作者さんを絞れた気がする。


3-23 底辺探索者の逆転成り上がり 古代遺跡から最高のメイドロイドを手に入れて


 私はこういう空気の作品好きです。

 大昔に現行世界より優れた文明があった……はロマンですよね。アトランティスが好きな人もきっとそう。

 私にとってはラピュタが原点です。ネズミのような生き物が水に潜っていき、水の中に文明があるのが見えるシーンは今見てもうっとりします。

 おそらくメイドロイドであろうものが入っている箱に社名が入ってるのがとても好き。

 風の谷のナウシカ(漫画版)で巨神兵に社名が入っているのですが、あの描写で文明の格差を思い知らされるのがテンション上がりますね。

 腐りかけの一体であの脅威なのに、旧文明ではただの一製品でしかない。


 展開に無理もなく、また、主人公がチート(この場合は力だけでなく)を手に入れることも不自然ではないようにほかの探索者の成功例も書かれている。

 ダンジョンものの楽しさですね。クリアすれば人生が変わる。


 一冊単位で書いて投稿……という形なら書籍化も普通にありそうな作品でした。

 この状態でなろうに投稿するなら少々テンポが遅めなので。

 追放ものの感情の動かし方と同じにして、この冒頭をコンパクトにまとめるといいかも。理想は半分の文量でしょうか。まぁ三人称でそれが難しいことはよくわかりますが……。

 情景描写を減らすのが手っ取り早いです。掘りまくってるところとか。

 漫画原作としてみると、ヒロイン(メイドロイド)を発見してヒロインのキャラ立てて、そこから次につながる謎で引き……が良さそうですね。

 

3-24 影の令嬢は、しらない間に愛をしる


 面白かったです。

 個人的に勘違いもののすれ違いが好きというのも前提にはあるのですが、単純に出来がよかったなと。

 男の私でもロジャーが可愛く見えたので、ヒーローとしてのキャラ立ちはできていますね。

 どっちもどこかポンコツなのは人間味があっていいです。

 女性向けは勉強不足ですが、ベタゆえに読者の間口は広く、これはかなり商業化の可能性が高いのではないでしょうか。

 コメディテイストなので、女性向けだとそれがどこまで受け入れられるか、が焦点になりそうです。

 タイトルの「知る」が開かれていますが、ほかに何か意味合いがあるのでしょうか。

 何もないなら普通に漢字でいいと思います。


 こちら木野先生の企画で「書き出し祭りの作品をコミカライズするなら感想!」にリストアップされています。

 

 漫画として見ても、主人公の能力があるおかげで動きやビジュアルがつけやすいですね。

 個人的にはかなり高評価。

 この作品に限らず、女性向けのジャンルに当てはまりそうなものは平均的に出来がいいですね。

 

3-25 星降る夜に嘘をつく


 普段会わないからどちらも嘘をつく。

 これまで会ったときもずっとそうだったんでしょうね。

 綺麗で切なさがある内容でした。

 書き出しとして見れば方向性の提示がないのであまり高く評価はできませんが、書き出し祭りであれば票が入りそうです。

 何をどうする話なのか、をあらすじに入れてあったら、もう少し高く評価できたと思いますね。

 

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