第2会場

  ※一読してからご覧ください※

 少々長いですが、予防線であり警告です。

 

 あまり心が強くない方、商業は目指しておらず、自分の好きなものを書きたいだけの方は見ないほうがいいかもしれません。

 ベースが辛口で、しかも誉め言葉を選んで書いていません。

 一応、全ての作品を最低三回は読んで書いています。


 下記感想は全て「商業作品として作るなら」を前提としています。

 なので面白く見せる構造に触れている部分が多いです。

 ただまさに私自身のように、商業では絶対無理だよなという趣味作品を投稿している人もいると思うので、その場合はだいたい見当違いになります。

 性癖メインの作品とかですね……その場合は笑ってやってください。


 また、書き出し祭りの特性ですが、第一話としての書き出しよりもそこがピークの実質短編のほうが評価されますが、私の場合はあくまで「書き出し」の評価をしています。

 書き出し祭り部分の満足度の評価でなく、次の話が読みたくなるか、の評価です。

「何をどう楽しむ作品で、どこに向けたものなのか」がしっかり提示してある作品の評価が高めになっています。


 プロでない方の場合、前提となる居場所と情報量、理解度が違うので、納得できない部分も多々あると思います。

 でもいつかプロになって企画を立ち上げるときには、私の書いていることの意味が分かるかなと。

 プロ作家の場合は共感してもらえる部分も多いのでは。

 

 せっかくプロサイドとして参加するのなら、ただ褒めるよりは嫌われても何か掴めるものを提示できればと思い、筆を執りました。

 私にとって、真面目に誠実に向き合うということはこういうことだと思いました。

 ですので少々厳しい言葉が並ぶ部分もありますが、改善案や間口の広げ方も同時に提案させていただいております。批判は代案ありきですね。

 指摘点を踏まえて改善、もしくはほかの作品に活かすなどできると思います。


 感想はもちろん絶対にこうすべき、しなければならないという意味ではありません。

 一笑に付してもらってもいいです。所詮は一つの方法論でしかないです。

 しかし私が指摘するのは、音楽で言うところの譜面通りに弾くことに近いものです。

 まずは楽器の使い方、譜面の読み方を覚えよう。アレンジはそこから。

 

 私自身まだ言語化できていない部分も多いですが、これを読んだ皆様に何かきっかけを与えられれば。私のこれもまた、練習です。


 できればご自身の作品の感想だけでなく、すべての感想を読んで、気になったところがあればその作品を読んで指摘を見る……なんて使い方をしてくださると本望です。

 私自身も含めて、みんなでレベルアップしましょう。


 だいたい、自分より売れてたり先輩作家がいるだろう企画でこんな危険なことやっても基本得はないんですよ!

 絶対に角が立つし、嫌われるし、文量やばいしで何も得はありません……!(本音)

 だから逆説的に善意がなければできないと解釈していただければありがたいです。


 私にとっていい編集さんは、手放しでは褒めず、基本は味方でも作品作りでは対立して代案や新しい方向性を提示してくれる方です。

 みなさんにとってそうなれれば。敵ではありませんよ。

 


2-01 お狐さんとロボ嫁さん。


 エモーい!

 一発目からいいのが来ましたね!

 ロボが感情手に入れる系に反応してしまう私はノックアウトされました。

 何より締めがいい。

 難点を無理矢理挙げるなら綺麗にまとまりすぎていること。書き出しというよりは短編ですね。書き出し祭りではこの形式のほうが受けるという策でこうしている気もします。そういう戦略を技術的に使えるレベルの方でしょうから。

 でもそんなのどうでもいいくらいは出来がいい!

 冒頭の作りは追放系のそれで、しっかりと読者を掴んで誘導して……これはプロ作家さんかな?

 テンプレの使いかたと消化が上手です。自分のモノにしてるのがよくわかります。

 ツイッターの4P漫画でバズりそう。

 もちろん投票候補です。


2-02 湯レッジっ!!! -Yu-llege-


 温泉行きたいな……。

 妄想を予定と言い切る主人公にちょっと笑ってしまう。

 二本の珍百景にも笑う。

 全体的なセンスが面白いですね。

 単純に私とツボが同じ説もありますが、軽妙な文体とセンスが心地いいです。


 話の書き出しとしても上手なうえ、面白い。

 これ本になってたら普通に最後まで読んじゃうな……漫画でも良さそう。

 第二会場二作品目でもう投票候補が二つも……魔境かな?


2-03 青春なんてしなくていい、って思っていたはずなのに。


 この作品、こなれた感じがプロの仕事を確信させます。

 プロでなくても、ラブコメジャンルなどでは上位者なんじゃないかな?

 とはいえこの作品に限って言えば、ちょっとフックが弱い気はしました。インパクトが薄いですね。

 ゲーム的に恋愛をクリアしていく……なんて提示があれば先が気になる作りになるんじゃないかなと。それかもっとヒロイン自体を強化するとか。

 前者なら青春小説的、後者ならラブコメ的かな。

 今のところだと青春小説とラブコメの中間の空気ですね。寄せたほうがいいと思います。


2-04 ファミリア


 設定に面白さがありますね。

 少し重めの文体でもすんなり読めて、こちらもレベルの高さを感じます。

 第二会場は今のところレベル高いな……。

 気になるところとしてはテンポですね。

 この作品はある程度先まで考えて作られているのがわかるのですが、だからこそテンポが悪くなる、書下ろしあるあるになっているかなと。一冊書下ろししたことある人はわかってもらえるんじゃないかな……最後思いっきり削るんですよね。

 もう少し場面の状況説明減らして、いきなりクロード(先輩騎士)が殺されるところから始めてもよかった気はします。

 読みたいところはもう少し先の部分ですね。


2-05 やさおとモンモン


 あらすじのハチャメチャさがすごい。

 モンモンがまずわからないし、現れた理由を知るためになぜアイドルになるのかもわからない。

 でも気になっちゃうし笑っちゃう。


 そこで本文を見て、「モンモンって紋々かよ!」とツッコミました。

 面白かったです。

 あらすじの要素だけを見ると取っ散らかってるはずなのに、話の筋もしっかりしていて、アイドルやらなきゃに説得力がある。

 これよくまとめましたね。笑

 気になる点も特になし。キャラが多いのに全員に必然性があり上手く扱えてる。

 第二会場はプロ作家が多いんでしょうかね。この作品もプロが趣味で書いたみたいな空気があります。

 

2-06 刑吏代行 骨原火鉢と礼儀正しい死体


 これはあらすじの段階でプロ作家の仕事だろうなと感じました。

 本文を読んで改めて感じました。

 なので特に気になる点もなく、しいて言うなら続きが気になるくらいなものです。

 

 ライト文芸で活躍してる方かなと。

 丁寧な筆致でありながら、各々のキャラもしっかり定義されていて。

 難解だろう設定や展開をあえて最初に持ち込まない、捨てる選択ができているのがプロだと思ったポイントです。プロじゃなくてもすぐプロになるでしょう、このレベルなら。だって面白いし読みやすいですから。

 まぁプロでしょうね。なんというか、前にもやったことがあります感が強いです。


 最初に定義すべきはキャラである。キャラが嫌いや興味を持たれないとそもそも面白い場所まで読んでもらえない。そういう基本をしっかり理解している方ですね。

 私はこういった趣向の作品が大好きなのでぜひ続きを読みたいです。

 骨原さんが可愛い。男なのに。


 少し脱線して。

 これはこの作品の作者さんに向けてではなく、全体に向けてのものです。

 

 私が上手いと書いている場合は、その作りが上手いという意味合いで使用しています。

 理解しやすく、話の筋や楽しみ方が自然に頭に入ってくる配置のことですね。

 

 必要な要素の選び方、捨てるものの選択能力。

 それらがプロをプロ足らしめていると私は考えています。

 本筋を魅力的にする蛇足、ただ単に蛇足、これらをしっかり理解しているかどうか。

 この作品で言うなら主人公の潔癖症は魅力的な蛇足です。そのおかげで部屋が汚いこと、骨原さんが薄汚いことなどが強調されていますから。反対の属性まで強調できる蛇足は素晴らしいですね。つまりはまぁ、蛇足ではないのですが。笑 

 しかしこの話の本筋に関係あるかといえばそうでもない。梗概を書くなら入れませんよね。なので蛇足と定義しました。言葉選びが悪いですが……。

 

 この全感想は自分より先輩だったり売れている方にも失礼な批判をする可能性が高く、割とビビりつつ書いている部分があるのですが、ぶっちゃけ、プロかそれに連なる者だなって作品についてはわかります。やはり構造のレベル違いは感じますね。

 失礼な物言いですが、私が長々と批判や提案を書いている作品について、私はたいていの場合「この作品についてはプロレベルではない」と判断していると思ってもらって構いません。

 もちろんプロだって百発百中ではないので、その時々の作品によってはプロレベルではないということは往々にしてあります。私もよくあります。むしろプロじゃないときのほうが多いかも。書き出し祭りにおいて私は毎度プロじゃないと思います。


 脱線のほうが長くなってしまいましたが、素晴らしい作品でした。

 当然投票候補です。


2-07 弔い錆


 何をどうしたらこんな設定が頭から出てくるんですか?(誉め言葉)


 しかし活かしきれてはいないなと感じました。

 次から次へと新しい設定が出てきて、その設定に一つも答えがないまま進むので、終始「?」でした。

 悪い言い方をすれば、全体的に取っ散らかってるというか……整頓してほしかったです。

 色々惜しい作品な印象。


 不穏なワードや思わせぶりな発言が多いのに、それについての説明がなくて主人公(?)が切迫している理由がわからない。

 まず、どうして錆びさせなければならないのかが謎です。もちろんその謎を誘引材料にして書いていくのは全然ありなのですが、この作品の場合は説明が必要だと思います。

 この左手を錆びさせなければ悪いこと(具体的に)が起きる、と最初に提示してあれば感じる印象は大きく違いました。

 

 弔うといっても、埋めてしまうだとか、破壊するとか、遺体と一緒に火葬してしまうとか、そういったほうが自然な発想だと思うんですよね。

 それができないのなら、なぜできないのかの説明が欲しい。

 

 奪われるのも誰に? と疑問に思いました。それとも主人公(?)の命が奪われてしまうのか。

 みんなが基本的に武器を生み出せるなら、わざわざ奪う必要なくないかなと。

 しかもナイフを。核兵器だった、とかなら狙われるのもわかるのですが。

 知りたい情報について触れられないのに、いきなり兄の刀が出てきたり、主人公(?)の掃除機が出てきたり、取捨選択の優先順位がわからない。

 追われている理由や錆びさせないといけない理由より上記要素は大事ですか……?


 結局のところ、一言でまとめてしまえば、この作品は何をどう楽しむ話? ということですね。

 軸がない。怪異もの、不思議なお仕事物、そういった簡単なジャンル分けができるようにしたほうがいいですよ。

 

 最初に書きましたが設定そのものは奇抜で面白いです。


 これ、語り手は主人公ではないようなので、古書店の主人、もしくはペアの男性の目線に変えて、そこに持ち込まれる形で話を進めたほうがいいんじゃないかと思います。

 私なら男性のほうを主人公(読者と同じ目線のキャラ)にして、古書店の女性と持ち込まれる部位にまつわる話にします。男性がかみ砕いて読者に不思議を教えてくれる形です。

 ライト文芸でよくあるジャンルですね。

 この作品にしてもオムニバスっぽく展開しそうなので、その場合は確固たる軸があると続きを書くのが楽ですし、単純に面白くなります。

 古い作品ですが、ドラマのトリック(仲間由紀恵さん主演)のようにバディの定義をはっきりさせてあるとどんな話でも対応可能です。


 でも見てる感じ周りの評価は高め。

 書き出し祭り特攻なのか、普通に私が読めていないのか、びっくりするほどセンスが合わないのか、今のところこの作品が一番私を悩ませています。

 冗談抜きに十回以上読みました。


 加筆:

 「説明なさすぎてモヤモヤする」派と「説明はないけど、とりあえず読みすすもう」派で評価が分かれるのか! とスッキリしました。

 そして脳内補完で話を広げる人は面白いと評価するんだなと。

 私はどうしてもしっかり書かれていて、その上での脳内補完を前提にしているので合わなかったようです。


2-08 心の中のパペッティア


 面白かったです。

 邦画的ですね。

 私はすんなり最後まで読めてしまったので、実際これでいいのかなとも思うのですが、別な視点があったほうが作者さん的にも面白いと思うので一応書きます。


 私がこれを書くなら、最初の事件シーンのあと、いきなり椿沢 晶さんを出します。

 飲み会の途中で酔って少し寝てしまった、という設定ですね。

 そして起きて飲み会シーンをやって、気遣いの人である名木野さんのキャラを立て(飲みすぎよ、みたいな)、主人公を心配する様子を見せる。

 そこから椿沢さんを出して、あらすじにある様に展開。

 帰り道、名木野さんに呼び止められたり一緒に帰るなりして、「すべて失いたくないなら、絶対にやめなさい」と不気味な演出で〆、とします。


 インパクトと引きならこちらのほうが強いかなと。まぁ一例です。


2-09 冷凍睡眠で200年、世界はAR全盛期になっていた


 SFですね。

 未来感はPSYCHO-PASSくらいかな?

 ほかの人には見えない本当の世界を見ることができる主人公が、ARで隠された痕跡だとかを探して捜査……みたいな感じですかね。

 実はこれでPSYCHO-PASSを思い出しました。ロボットにARをかぶせていたりしましたよね。

 まだ設定段階なので何ともですが、現状でも面白かったです。


2-10 悪女代打のダリアは淫魔 〜淫魔に淑女のフリはムリですっ!〜

 

 面白かったです。

 これは女性向けのプロ作家でしょうね。

 過不足なく、それでいて先まで想像できる作りです。

 絶対にエライザの真似できないんですけど!? くらい何かポンコツエピソードがあったり、強めの絶望感があるとより一層面白くなりそうです。


2-11 神機装光ジャスティセイバー


 これいいですね。

 偽物のヒーローが本物になっていく……という流れが構造的に想像できるので。

 熱い展開は好物です。

 

 元ネタのヒーローはだいたいわからなかったのですが、そういった細かいところはどうでもよく思えるくらい、異世界人のポンコツ感が笑えました。

 

 主人公に多少心の動きがあると、先々の期待ができていいかなと。

 

2-12 ややこしい『てんせい』


 タイトル通り状況がややこしいですね。

 色々なものが反転している……という感じなのでしょうか。

 冒頭はナニが消えたのか。女性から男性になってるんですよね? なら増えてない?


2-13 愛みのリリウム


 リリアンが大切な人たちが幸せになるのを妨害(直接的でなくても)している?

 実は五回読み直しましたが、いまいちしっくり理解できませんでした。

 これは私の読解力がないのか……? 文体や書き方は慣れている様子なので、そうなると私がわからなかっただけかもしれない。

 冒頭と終わりの少女が悪魔という認識であっているのだろうか。

 何か根幹が理解できていない気がします。私に向いていないだけ説。


2-14 小公女リゼットは、魔法の装丁と謎がお好き?


 本ではなく装丁が好き。ちょっとわからないでもないですね。

 綺麗な装丁の本は欲しくなります。同じライトノベルでもつるつるではなくエンボス加工されているようなのとか。

 不思議お仕事系ですかね。

 謎が好きとのことですから、本にまつわる謎を解いていく……という流れみたいです。

 現状そこまでは書かれていませんが、キャラ立てとキャラ登場に振った感じでしょうか。


2-15 完全犯罪Dreamer


 これジャンルはまさかのラブコメですね。

 パロディタイトルから色物かな……と思いつつ読み始めて引き込まれました。

 ダーティーマネーファイナンスで笑ってしまってからは一気に最後まで。

 会話劇が軽妙で、それでいて必要な情報の出し方も上手。

 キャラもしっかり立っているし文句の付けどころはありませんね。

 これもプロの仕業かなと。出オチ感は否めませんが……書き出し祭りなのでいいと思います。面白かったです。

 金髪碧眼で拳銃を扱えるアメリカハーフ関西弁JK共犯者で何をするのかはわかりませんが(作者さんも考えてない気がする。笑)、勢いそのままに読ませていただけました。

 

2-16 毛玉悪魔と探すのは、醜い私の願いごと

 

 みりんとあら塩とちょっとの血と猫の毛で召喚されちゃうルシファーさん……。

 コミカルな文体と内容でした。

 いい意味で深刻さは薄く、このテイストで書ききって欲しいと思いました。

 このルシファーさんは命を取らずに普通に飼い猫にしそう。


2-17 神様フュージョンで異世界救済~自転車操業でハーレムとかやってる暇とかないです~

 

 タイトルと本文がまったく別と言っていいくらい空気が違う!

 書き出しとして見るなら地に足ついてないです。

 タイトル的に、これはクラリス以外の男主人公のお話ですよね?

 この部分についてはファンタジー作品の幕間、主人公の視点ではない物語という感じ。

 これはこれで悪くないと思ったのですが、まぁやはり書き出しとして見るなら、タイトル通りにするか、タイトルを変えるかのどちらかだと思います。

 あと、ゼルダの伝説を思い出しました。空気が近いんですね、たぶん。

 しかしあの作品も主役はリンクなので、やはりリンクの冒険を書いてあげましょう。

 

2-18 平成真っ只中、おしまい、ノストラダムスでレインボー。


 久しぶりに聞いたノストラダムス! 当時は小さくてよくわかってなかったな……今にして思えば、どこかのおっさんの妄想で大人がみんなして騒いでたわけですね。めちゃくちゃ平和だったんだなと感じます。


 センスが勝ち。

 いいもの投げてくるね! というのが率直な感想です。


 一見すれば読みにくくも思いました。癖が強いんですね。文章の切り方も癖の強さがあります。小説ってよりは詩のほうが近いのかな。

 でも、私この作品の空気好きです。

 くーちゃんのセリフをあえて「」で覆わないのも、セリフパートそのものは基本的に超長いのに一文自体は短くしてるのも。

 この作者さんのセンスなんでしょうね。

 すごいのが、この作品全く動きがないんですよ。

 おそらく玄関先だけで、くーちゃんとつーちゃんの表情すら最後のほうまで書かれてない。びっくりするほど冷淡。

 ずっとずっと、くーちゃんの惨めさだけが書かれてる。

 彼女たちの年齢の提示はなされていませんが、なんとなく中学生くらいで想像してます。たぶん高校に行ける家庭じゃないでしょうから、サボることさえできないと逆説的に考えて。時代的にもそういう人は普通にいたでしょう。

 

 ノストラダムスの予言なんかなくても、くーちゃんはもう終わってるんですよね。

 貧困家庭で虐待されていて、学校にも行けず、真っ当な恰好すらできず水のマルチをやらされていて……。

 確実に詐欺である水にすら縋るくらいは終わってる。

 主人公との思い出が少ないにもかかわらず、まるで何度も繰り返したように認識しているのは、それだけくーちゃんの中にほかの思い出がないってことなのかな。何回も思い出して回数のカウントがおかしくなるくらい。

 まぁ、格差を認識しない小さなころならともかく、現状のくーちゃんと友達になる人なんていないですよね。

 

 最後に主人公が「」で逃げようとセリフを言った時、ああ、この作品、ずっとくーちゃんがしゃべってるのを聞いていただけだったのか、と気づきました。

 ものすごい評価難しいなぁ、と思ってるのが正直な気持ちですが、先は気になりますし、本当に不思議だけど好き。

 ライトノベルとしての書籍化はまず無理だと思いますが、逆に純文なら賞に通っててもそんな違和感ない。純文はエンタメではなく、人間を書くセンスを求められるジャンルだと認識しています。

 

 アドバイスを一つするなら、ジャンルを提示しましょう。それでもっと引き込まれると思います。純文テイストはやはり人を選びますから。

 くーちゃんの問題を解決する形で「逃げ」を達成するミステリ、サスペンス形式。

 方法は何もわからないけど、とにかく遠くに逃げるんだ、といった風に作る青春小説形式。今はこれかな?

 現状だと色々派生できる状態ですが、それゆえにジャンルは定まっていません。

 親を殺そう、とか、この作品なら結構色々なことができると思いますよ。

 でもまぁ、私的にはママでもいい気はしてます。このセンスが大事。

 構造に口を出しまくっている今回の全感想ですが、最後の最後に物を言うのは作者のセンスです。構造を理解して使用し、センスで塗りつぶすのが理想だと思っています。


2-19 一枚の壁に隔たれて


 好きな空気の作品です。

 青春小説でしょうね。生霊なのか死んでしまっているのか。

 内容は上手です。部長が犯罪映画ばりにスムーズにピッキングしてるので笑いました。


 ここがピークにならないように一冊構築できればいい作品になりそうですね。

 書き出し祭りではこうした設定のエモさで〆る作品のウケがいいですが、一番面白い場所がそこにならないよう作るのって大変なんですよね。

 

2-20 僕とママと世間の不健全な関係〜死んだはずのママを探しにいきます〜


 約束のネバーランドを思い出しました。作者さんが意識しているとは思いますが。

 ディストピア感のあるお話ですね。

 まだまだ謎は多い状態。具体的なジャンルはどうなるのか。

 

2-21 ゆくすえ

 

 不思議な空気……読点の多さが読み始めは少し気にならないでもないですが、慣れてくると平気になってくるの不思議ですよね。

 青年向けラブコメでしょうか。

 ぱっと見釣り合わないカップルはこんな感じなのかもしれませんね。

 書き出しとしては引きがないなとは思いましたが、あらすじを見るにこれを続けるのでしょうから、これはこれでいいのかなと。


2-22 これから大好きになる彼女は叔母さんで年下で


 オーソドックスな同居ラブコメ。

 実は叔母ではないのかな?

 

 前に全感想したときにも書きましたが、ラブコメならば主人公だけが好かれる要素の提示があったほうがいいです。俺にだけ、がヒットの秘訣です。

 ヒロインが主人公を好きになる理由ですね。ヒロインの秘密であったり、ヒロインの弱点が主人公により的確にカバーされていたり。

 売れている作品はたいていしっかりこの構造が最初から提示されています。

 こんなヒロインとこんなことをします、の構造です。


 ヒロインの人気を表現し、そのうえで主人公だけがヒロインの本当の姿を知っている。

 この作品の場合は最初から同居状態で始めて、そこから物語を動かすのがスマートじゃないかな。家庭環境などは後からでも全然問題ない部分ですから。

 テレビの中の叔母さんを見て、それが家ではこうなんだからな……みたいな提示の仕方でいいかと。

 14回の書き出し祭りの第四会場、「4-17 不死宮さんはむっちゃ死ぬ」のところで色々書いてありますので、参考にしていただければ。

 今のトレンドでも基本骨子は何も変わっていません。普遍的な構造です。


2-23 ティエスちゃんは中隊長


 読み味の軽い幼女戦記、という感じですかね。

 ただ主題は全く違い、こちらは女の子としての生活を楽しむ方向性ですね。

 個人的には階級まで書いてほしかったかな。好きなんですよね。

 中隊長なら大尉くらいかな。


2-24 今から病んでも良いですか?


 ほかでも書きましたが推敲不足を感じます。

 一行目の文頭下げのミスはちょっとわかる(提出の際のコピペミスなど)のですが、主人公の名前が誤字ってるのは致命的……。

 それと、ところどころ一人称と三人称がミスってます。

 技術的なところで言うと「~する光菜」と体言止めがものすごい多いので、意識して減らしましょう。脚本などなら構いませんが、小説では悪手とされる部分です。

 最後を半分投げてしまっている(二年生編~など)ので、そこは普通に話の引きに全力を尽くしましょう。メタ的な視線を作品に入れるべきではありません。話の展開でそう思わせるようにしましょう。

 単純にまだ書きなれていないのかな。そんな印象です。

 キャラを作ることの意識はできているようですから、もう少しキャリアを積めば上手になっていくでしょうね。

 

 病むほど人を好きになる、がテーマなのかな。

 まぁ本気だからこそそうなるというのは事実ですし、面白い着眼点だと思います。


2-25 吸血鬼の杉宮さんは、俺の血をちゅーちゅー吸っていたい。


 ラブコメですね。

 必要な情報は過不足なく並んでいて、ラブコメの鉄板要素の自分だけ要素もしっかり提示できていました。

 全体的に文句の付けどころのない構成だと思います。

 しいて言うなら、題材とキャラにインパクトがないことですね。

 テンプレの範囲に収まってしまっているのがもったいなく感じました。

 キャラの強化だけでかなり良くなると思います。


 第二会場は全体的にレベルが高かったなと感じました。

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