第四十二話 覚醒するチートジョブ
時は男との戦いから数分後。
場所は村外れの林。
現在――。
「よし、身体の怪我は治ったかな」
「ゾイ……すごいわ! とっても、とってもすごいわ!」
と、言ってくるのはクレハだ。
彼女は狐尻尾をふりふり、ゾイへと言葉を続けてくる。
「私は信じていたわ……ゾイはやれば出来るゾンビだって、信じていたもの」
「ありがとう、勝てたのはクレハのおかげだよ」
「私の? でもゾイ、私は何もしていないわ……ゾイが頑張ったのよ?」
「ずっと祈ってくれたよね?」
くじけそうな時。
あぁいうささいなことが、とても大きいものなのだ。
故に、ゾイはクレハの頭を撫でながら。
「とにかく、助かったよ」
「?」
ひょこりと、首を傾げてくるクレハ。
きっと、ゾイの言っていることが、よく理解できていないに違ない。
まぁ、クレハのこういうやや鈍いところも、ゾイが落ち着く要因となるのだが。
さてさて。
それにしても。
(どうして僕はさっき、あんな流れるように攻撃ができた?)
ゾイが言うのもアレだが。
ゾイはクソ雑魚だ。
結局斬られたとはいえ。
攻撃を躱した後、隙をついて攻撃。
なんて芸当が、ゾイに出来るとは到底思えない。
おかしい。
となれば、見るべきものは一つ。
ゾイのジョブだ。
考えたのち。
ゾイは意識を集中させる。
すると――。
「これは……ジョブ 『格闘家』と『槍使い』が使えるようになってる!?」
なるほど。
だから、ゾイは一連の反撃ができたわけだ。
けれど、これら二つは『身体強化』を使っている時しか、使えなかった。
「どういうことだ? いったい――」
「簡単だわ」
と、聞こえてくるクレハの声。
彼女は狐尻尾をふりふり、ゾイへと言葉を続けてくる。
「ゾイが強くなったのよ……そのジョブ本来の持ち主より。不本意だけど……この男のおかげよ」
「この、男?」
と、ゾイはクレハの指の先を見る。
そこに居るのは――。
「あぁぁぁあぁああああああ……うぅううあぁああああ……」
ゾンビだ。
先ほどゾイが殺した男――奴がゾンビ化したのだ。
「この男と戦っている間に、ゾイが強くなったのよ」
と、言ってくるクレハ。
彼女はゾイへと言葉を続けてくる。
「つまり――この男との戦闘を通して、ゾイの戦闘経験値が一定を超えた……だから、ジョブが使えるようになったんだわ」
「なるほど……確かにそれなら納得できるか」
「私……役に立てた?」
と、ゾイの手をきゅっと握って来るクレハ。
ゾイはそんな彼女の手を握り返し、言葉を返そうとした。
まさにその時。
「お~~~い! 誰かいるのか!?」
「おかしいな、こっちから確かに声が聞こえたはずなんだが」
「気を抜かない方がいいわ! 魔物が居るかもしれないんだから!」
聞こえてきたのは、そんな冒険者達の声。
やばい。
(男一人でも、あれだけ苦戦したんだ。いくら少し強くなったからといって、いきなり複数相手に勝てるわけがない!)
どうする。
どうすればいい。
などなど、考えている間にも。
「あ、おい! そこに誰かいるのか?」
と、ついに聞こえてきてしまうそんな声。
同時、近づいて来る足音。
「っ!」
ゾイは必死に考える。
なにかあるはずだ。
と、自らのジョブを必死に見返す。
●ジョブ
『荷物持ち』『錬金術師』『商人』『剣士(劣)』『槍使い』『格闘家』
(『剣士(劣)』ってなんだ? 前まで(劣)なんてついてたか? いずれにしろ、今この場の対処には使えない!)
他になにか使えそうなものは。
早く――。
「!」
瞬間、ゾイはとあるアイデアに思い至る。
故に、ゾイはクレハへと言う。
「クレハ! 僕を斬りつけてくれ!」
「……!?」
と、戸惑っている様子のクレハ。
けれど、今はそんな場合ではない。
故にゾイはクレハへと、再び言う。
「早く!」
直後。
ゾイの身体を斜めに一閃。
クレハの斬撃がはしるのだった。
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