第三十話 ゾンビは治療する②
時はあれから数分後。
場所は変わらずゾイの寝室。
ゆさゆさ。
ゆさゆさゆさ。
と、ベッドに横たわるマオの身体を揺らしているのはクレハだ。
すると間もなく。
「んっ……ぅう」
と、目を覚ました様子のマオ。
ゾイはそんな彼女へと言う。
「おはよう、マオ! よく寝むれたかい?」
「ひっ……ぞ、ゾイ……う、うぬがなぜここに!」
「何故って、ここ僕の部屋だし」
「我にあんな事をして、あとでどうなるか覚えておるのじゃぞ!」
と、なんとかといった様子で身体を起こすマオ。
彼女はゾイを睨み付けながら、言葉を続けてくる。
「うぬも、うぬが大切にしているクレハも……みなグチャグチャに壊してやるのじゃ」
「いやマオ様、少し考えてみてくださいよ。この状況でどうやって逆転出来るんですか? というか……グチャグチャにされて無様を晒しまくったお前が、そんな事言っても説得力ないんですけど」
「黙れ、黙るのじゃ! 我はそんなの知らないのじゃ!」
と、頭を抱えて丸くなってしまうマオ。
本当に惨めになったものだ。
しかも何やらマオ、小声で――。
「こんなの嘘じゃ……こんな、こんなの! 我が我が……」
などと、ずっと呟いている。
以前思った通り、メンタル弱すぎる。
この調子だと、もう少し虐めたら壊れてしまうかもしれない。
もっとも、それはそれで面白いが。
ゾイはそんな事を考えたのち、マオへと言う。
「マオ、わかるか? お前はもう僕の奴隷なんだよ。それがこれからのお前の生き方だ」
「ち、違うのじゃ!」
と、ゾイを睨んで来るマオ。
彼女はそのまま言葉を続けてくる。
「我は魔王じゃ! 我は魔王なんじゃ!」
「魔王ね~……じゃあさ、お前いまの自分のジョブを見てみろよ」
「ジョブ……じゃと?」
…………。
………………。
……………………。
しばらくの沈黙。
その後。
「なん……じゃ、これは?」
と、驚いた様子のマオ。
彼女は布団を握りしめながら、ゾイへと言ってくる。
「ジョブ 『ゾイの奴隷』? な、なんじゃ……これ」
「ぷっ、ぷはははははははは! よかったなマオ! これで名実共に奴隷じゃないか!」
「ふざけるでない! これはなんじゃと聞いておるのじゃ!」
「言葉遣いに気を付けろ……と言いたいところだが、僕は優しいから教えて上げますよ」
言って、ゾイはマオへと説明する。
それをまとめると、こんな感じだ。
マオの元々のジョブ 『魔王』は、ゾイが奪った。
その結果、彼女のジョブは『なし』になっていた。
そこに――。
ゾイによって色々されまくったマオ。
彼女は一時的とはいえ、ゾイを主として受け入れる発言をしてしまった。
結果。
「マオのジョブは、そうなったってわけ。シンプルでしょ?」
「ち、違う……我はゾイの奴隷になったなどと、一度たりとも認めたことはないのじゃ!」
と、首を振って来るマオ。
ゾイはそんな彼女へと言う。
「まぁ、言ってなくても心で認めたなら——」
「言ってない、言ってないったら言ってないのじゃ!」
「はぁ……まぁいいや。ところでマオ、体の調子はどうだ?」
「体の調子……じゃと?」
マオはそう言うと、不思議そうな顔をし。
さすがバカなマオ。
言われてようやく、気がついたに違いない。
「っ……か、体が……あ、熱い? ぞ、ゾイ……うぬは、いったい何をっ?」
と、頬を紅潮。
身体をもじもじさせ始めるマオ。
ゾイはそんな彼女へと言う。
「別に悪いことは何もしてませんよ。マオ様にとってはプラスになることをしただけです。なんせ僕は、マオ様のゾンビ化を治してあげたんですから」
「そ、それだけではなかろう!?」
と、必死な様子でゾイを睨みつけてくるマオ。
さてさて。
マオに投与した治療薬。
実はあれ、重大は副作用があるのだ。
それは――。
とんでもない依存性。
一度取り込めば定期的に薬、もしくはゾイの体液に準じるものを取り込む必要がある。
でなければ、こうして身体が昂った状態になってしまうのだ。
だがこれでいい。
これが最高なのだ。
「おまえは僕の尊厳も、クレハの尊厳も奪おうとした。だから次は僕の番だ……僕が、俺が……おまえの尊厳も、何もかもを奪い尽くしてやる!」
言って、ゾイはマオへと近づいていく。
そして、彼女へと言葉を続けるのだった。
「……さて、治療の最終段階を始めよう。俺がしっかり、お前を治してやるよ」
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