第二十九話 ゾンビは治療する

「できた」


「できたのね……」


 と、言ってくるのはクレハだ。

 ゾイはそんな彼女へ、窯の中の液を見せながら言う。


「これが僕が作ったゾンビ化を治す薬だ。これさえあれば元々の感染源が僕――つまり、僕由来のゾンビ化なら百パーセント抑制できる」


「じゃあ、ああいう……完全なゾンビも、ゾイは治すことができるのね?」


「クレハがいう完全なゾンビっていうのは、ゾンビ化が進行しきったゾンビのことだよね?」


「そうよ……とっても臭いわ。ゾイからも時々臭いはしてくるけど、ゾイのはとってもいい匂い……お腹がすく臭いよ」


 なんだそれ。

 ゾイは美味しそうな臭いでもするのだろうか。


(そういえば僕、昔自分で自分の事食べてたな……)


 と、ゾイは一瞬変な事を考え始めてしまう。

 故に顔を振って思考を変え、クレハへと言う。


「まぁ、僕からする臭いはおいおい話すとして……結論だけ言うと、完全にゾンビ化した奴等には、この薬は効かないよ」


「進行したゾンビ化は強いのね。だったら……早くマオにその薬を使わなくていいの?」


「マオはまだ生きているし元々が強い魔物だから、ゾンビ化の進行は遅い。でも、クレハが言う通り早く使った方がいいに決まってる」


「何か手伝うことはある……?」


「んーそうだな」


 正直、手伝ってもらう程の事はない。

 けれど、クレハの様子からは伝わってくるのだ。


 何か手伝わせてほしい。

 そう彼女の狐尻尾ふりふりが訴えてくるのだ。

 故にゾイは彼女へと言うのだった。


「じゃあちょっと手伝ってもらおうかな、この薬には問題点あるし」


「問題点があるのね……難しいわ」


      ●●●


 それから十数分後。

 場所はゾイの寝室。


「ゾイ……これでいいの?」


 と、言ってくるクレハ。

 クレハはゾイへと、言葉を続けてくる。


「マオをゾイのベッドまで移動させたわ……」


「うん、ありがとうクレハ。特に問題は起きなかった?」


「マオ……気絶してた静かだったわ。でもいいの、拘束しなくて? 起きたらきっと……マオ、暴れるわ」


「大丈夫。マオは起きても、確実にそんな余裕なくなるから」


 言って、ゾイは注射器を腕へと刺す。

 そして、その中の薬をマオの体内へと送りこんでいく。

 さてさて。


「お待たせマオ、治療を始めようか」

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