第二十七話 ゾンビは錬金する

 マオをゾンビ達、そしてついでにクレハの好きにさせてから数日が過ぎたある日。

 事件は起きた。


「ゾイ、起きて……大変よ」


 それは朝一、クレハのそんな大変そうじゃない声と共に発覚した。

 なにはともあれ、そう言われて放置するわけにはいかない。


 ゾイが寝起きのボケっとした頭で、クレハへとついて行く。

 そうしてついた先は――。


 牢屋だ。


 一瞬、ゾイはマオが逃げ出したのかもしれないと考えた。

 だがしかし。


 マオは気絶したまま、床にぶっ倒れていた。

 きっと、ずっと色々され続けていたに違いない。


(あれ……大変ってまさか、死んだとかじゃないよね?)


 そういえばマオ、全然動いていない。

 それは困る。


 ゾイはまだまだ、マオを虐め足りないのだ。

 と、ゾイがそんな事を考えたその時。


「ゾイ、大丈夫……マオは生きているわ」


 と、ゾイの思考を読んだかのように、言ってくるクレハ。

 彼女はマオを指さし、彼へと言葉を続けてくる。


「よく見て……マオは強力な魔物だから、進行が遅いけど」


「よく見るって、いったい何を――」


 瞬間、ゾイはようやく理解した。

 それすなわち。


 マオがゾンビ化し始めていたのだ。


 元から白かったマオの肌。

 その色がより白く――まるで死体のような色に、変色し始めていたのだ。


(なるほど。マオが自分で切り落とした腕が、いつの間にかくっついてたの――あれはマオの能力かと思ったけど)


 ゾンビ化していたからこそ、くっついた可能性がある。

 などなど、ゾイが考えている間にも。


「どうするの?」


 と、ひょこりと首を傾げてくるクレハ。

 彼女はゾイへと、言葉を続けてくる。


「このままじゃマオ……ゾンビになって死んでしまうわ」


「どうするって――」


「ゾイはどうしたいの?」


「僕は……」


 決まってる。

 その答えは先ほど、すでに出している。


「僕はこれからマオのゾンビ化を治す……もしくは抑制する方法を見つける。それが僕のしたいことだ」


「どうやって?」


 と、言ってくるクレハ。

 ゾイはそんな彼女へと言う。


「方法ならあるよ」


 そこで、ゾイは自らのステータスへと意識を集中。

 見るのはジョブだ。

 中でも注目するのは――。


 ジョブ『錬金術師』。


 ゾンビ化を毒だと考えるなら、これで対抗薬を作れるに違いない。

 となればあとは――。


「クレハ、頼みがあるんだけど」


「ゾイの頼みなら、どんなことでも聞くわ……教えて?」


 狐尻尾をふりふり。

 クレハそんな事を言ってくるのだった。

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