第二十六話 元魔王は完全敗北してみた

「ぅ……くっ」


 気がつくと、マオは暗くジメジメした牢に居た。

 いったいどうなったのか。


「たしか、我……ゾイにっ」


 そうだ。

 マオはゾイに無理矢理いろいろされたのだ。


「あのクソゾンビめ! 我にあんなことして……我を牢に入れるとは、絶対に許さないのじゃ!」


 と、マオはそこでとある事に気がついてしまう。

 それは。


 牢の暗がりに何かが居るのだ。

 それも一体ではない。


「ん……なんじゃ?」


 と、マオはそれへと近づいていく。

 だがすぐに――。


「ひぅ!?」


 マオは後ろに下がると同時、尻もちをついてしまう。

 理由は簡単。


 暗がりに居た物の正体。

 それを見てしまったからだ。

 すなわち。


「こ、こやつらは……ゾイが、ゾイがゾンビにした村人!?」


 その数、十体以上。

 マオはすぐさま立ち上がり、攻撃を加えようとする。

 だがしかし。


(っ……ダメじゃ。ゾイにやられてから、何故か上手く身体の力が――)


 と、マオがそこまで考えた瞬間。

 突如、彼女は背後から何かに組みつかれる。


「なっ!?」


 ゾンビだ。

 きっと、別の暗がりにもゾンビが居たに違いない。

 しかもそいつは――。


「っ……やめ、このデブゾンビめ――重い、のじゃ!」


 まるでのしかかるように、全体重をかけてくるゾンビ。

 それに対し、マオはついつい――。


「っ……ふぎゃ!?」


 間抜けな声をだしながら、うつ伏せに倒れてしまう。

 すると、件のゾンビは間髪入れずにマオへと覆いかぶさってくる。


「お、も……っ、重い、のじゃ!」


 と、マオは脱出するために必死に体を動かす。

 だがしかし。


 ガシッ!


 と、掴まれるマオの四肢。

 ゾンビだ。

 他のゾンビのマオの四肢を掴んできたのだ。


(あ、う……っ、これじゃ動けない、のじゃ)


 などなど。

 マオがそんなことを考えていると。


 ごそごそ。

 ごそごそごそ。


 と、マオに覆いかぶさっているゾンビから聞こえてくる音。

 嫌な予感がする。

 故にマオはただ必死に叫ぶのだった。


「い、や……嫌じゃ! それだけは嫌じゃ!!」



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