第二十四話 ゾンビは魔王へ挑む②

「あぅ……う、嘘じゃ」


 と、ぷるぷる怯えた様子のマオ。

 彼女はゾイへと言葉を続けてくる。


「そ、そうじゃ……こんなのあり得ないのじゃ! い、今のは……わ、我の全力――アオイですら撃ち負ける魔法なのじゃぞ……っ」


「まだわからないんですか、マオ様」


「な、なにがじゃ!」


「普段はともかく、今の僕はマオ様より強いってことが……ですよ」


「そんな訳――っ」


 と、ハっと気がついた様子マオ。

 きっと彼女、ようやく気がついたに違いない。

 ゾイが負の感情を溜めこみ、『身体強化』スキルで強くなったことに。


 などなど。

 ゾイはそんな事を考えながら、マオへと近づいていく。

 そして、彼が彼女の頭部へと手をのばすと――。


「ひっ――!」


 バシッ。

 と、まるで少女のように、ゾイの手を叩いて来るマオ。

 故にゾイは思わず。


「ぷっ、あはははははははっ! おいおい、少しは抵抗するそぶりを見せろよ!? なにをそんなにビビりまくってんだ!?」


「う……くっ!」


 と、一瞬悔しそうにするマオ。

 けれど、彼女はすぐに再び、ぷるぷると震え出してしまう。


 メンタルが弱すぎる。


 ゾイは今まで、どうしてこんなクソ雑魚に従っていたのか。

 これではゾイの方がバカではないか。


(情けない……本当に情けなすぎて、ため息ができる)


 ゾイ自身も、当然マオにもだ。

 と、ゾイがそんな事を考えていると。


「わ、我は魔王じゃ!」


 と、半泣きのマオ。

 彼女は身体をぷるぷる、ゾイへと言葉を続けてくる。


「我は最強の魔王じゃ! 誰にも負けない最強の魔王なんじゃ! うぬみたいなクソゾンビに、絶対に負けたりしないんじゃ!」


「あ? クソゾンビだと?」


「ひぅ……そ、そうじゃ! クソゾンビじゃ! そんな顔して睨んでも、どうせ我には勝てないのじゃ! 死ね! さっさと死ぬのじゃ!」


「…………」


 呆れた。

 どうやらマオさん。

 力で勝てないとみるや、口での攻撃に切り替えたに違いない。


 これでは子供だ。

 けれど、ただの子供ではない。


(マオは我儘で、そのくせ我儘を通してしまえる力を持っている)

 

 つまり、マオはたちが悪い。

 これはお仕置きが必要に違いない。

 と、ゾイはそんな事を考えたのち。


 拳を握り。

 全力でマオの腹へと、それを叩き込む。

 すると。


「おっ……ほ!?」


 と、聞こえてくるのは、なんとも情けないマオの声。

 彼女はそのまま床に倒れようとしている……だが。


 ゾイはそんなマオを抱きとめる。

 理由は簡単だ。


「ついでに、マオ様の力も奪わせてもらいますよ」


 言って、ゾイは彼女の肩へと噛みつく。

 肉を噛み千切り、咀嚼、嚥下するのだった。

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