第十四話 魔王様からのご褒美

「うっ……く」


 気がつくと、ゾイはベッドの上に拘束されていた。

 なんだか、つい最近もこんな事があった気が――。


「痛っ!」


 と、奔る激痛が一瞬、ゾイの思考を絶ち切って来る。

 その正体は。


(そ、そうだ。確か僕はマオ様に心臓を潰されて……それで、それでどうしたんだ?)


 とりあえず状況確認。

 と、ゾイが視線を動かそうとした。

 その時。


「村から帰ってくるのも遅ければ、目が覚めるのも遅い……使えぬ屑とはまさにこのことじゃ」


 足音と共に聞こえてくるのはマオの声。

 彼女はゾイの傍までやってくると、そのまま言葉を続けてくる。


「特別な存在、始祖ゾンビ。そしてそんな存在が、我からスキルを付与された超越者――それがうぬじゃ」


 つんつん。

ゾイの頬をつつきながら言ってくるマオ。

 彼女は更に不機嫌そうな様子で、ゾイへと言葉を続けてくる。


「なのに、蓋を開けてみればあのような雑魚……たかが村の門番如きに手も足もでず、牢屋で人間如きに拷問され泣きわめく醜態……情けなくてとても見ていられなかったのじゃ」


「で、でも最終的には――っ」


「ふぅ……黙るのじゃ、ゾイ」


 と、ゾイの言葉を断ち切って来るのはマオだ。

 彼女は露骨な怒気を放ちながら、ゾイへと言ってくる。


「いったいなんなんじゃ、うぬは? 弱い、弱すぎる……期待外れもいいとこじゃ」


「す、すみませ――」


「謝罪などいらぬのじゃ。謝罪すれば強くなるのか……ならんじゃろ? 村一つ制圧するのにここまで苦戦し、村を制圧したと思えば一晩そこで休んで帰ってくる……どういう思考回路をしているのか、我にはまったくわからぬのじゃ」


「次は必ず期待に――ぐっ」


 突然奔る凄まじい痛み。

 気がつくと、ゾイの右目にマオの指が刺さっていた。


(~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!)


 のたうち回りたい。

 だけど、拘束されているから動けない。

 などなど、そんな事を考えている間にも


「次……次か、うぬはなんとも幸せな頭をしているようじゃな」


 と、ゾイの目から指を抜いてくれるマオ。

 彼女は「はぁ」っとゾイへと言ってくる。


「まぁいい、では次こそは……我の期待通りにあの程度の村など一方的に圧殺し、我を待たせず、我に恥をかかせることなく、無傷で凱旋してもらうのじゃ……なんにせよ」


 のそのそ。

 のそのそのそ。


 と、ベッドをよじよじ。

 ゾイの上へと登ってくるマオ。

 彼女はゾイの顔を跨ぐように立つと、そのまま彼へと言葉を続けてくる。


「次は次、今回は今回じゃ。今回我に見せた失態の数々の罰、それはしっかりと受けてもらうのじゃ……ふっふっ……楽しみじゃろ?」


「あ、あの。そ、それは――」


「我は楽しみかと……そう聞いておるのじゃ」


 言って、ゾイの首へと両手を回してくるマオ。

 その直後、ゾイは息も……声を出すことすら出来なくなるのだった。

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