10話 意図せぬ再会~侵入した罪~
「――よぉ、姉ちゃん。なんか用か?」
振り返るとそこには、さっき酒場で話しかけてきた男が立っていた。
「え? なんで?」
私の後を付いてきたのかと勝手に勘違いをし、急な恐怖が私を襲った。
「なんでって、ここは俺の家だ」
「あ……そうなんだ。じゃ!」
私はその場を立ち去ろうとした。この男はどうも好まない。酒臭いし。
「おいおい、勝手に人ん家入っといて、なんもねぇのか?」
何もないのかって言われても……。
この男に渡す物は持ち合わせていなかった。
「私、何も持ってない」
ニヤニヤと笑う笑顔。エール片手に足元をふらつかせ近寄ってくる。私、この人嫌いだ。
「へぇ。じゃあ体で払うしかねぇなぁ! 人ん家に侵入したっていう代償を、な?」
……は?
思考が停止した。
男は急に真顔になると、ゆっくりと小屋の中に入り近付いてくる。
「いや、ふざけないで……」
咄嗟に後ずさる。が、そう広くない小屋の壁は思ったより近く、寝袋につまずくと、豪快に尻もちをついた。
それを見た男は、笑いを堪えるように腹を抑えたと思ったら、咥えていた煙草を取り、急に大声で笑い出した。
「アハハハ! 冗談だよ、冗談! 姉ちゃん、おもしれぇ面すんな」
全っ然、笑えない。
その笑い声に気が抜けると同時に、羞恥心に襲われた私は、男を避けるように小屋から飛び出した。
「待てよ、姉ちゃん」
男は顔付きが変わると、私を引き留めるように腕を掴んだ。
「……」
無言で振り向くと、男は笑顔で口を開く。
「姉ちゃんよぉ、なんか困ってんだろ? NPCは相手してくんねぇし、俺と行動しねぇか?」
私は大輔以外とは行動しないと決めていた。
だけどこの男は、どう考えてもゲームで仲間になるようなNPCじゃない。それにこの人……今、NPCは相手してくれないと言った。
そういえば酒場でも言っいてたような気がするけど……。
そして次の瞬間、男のひと言で私の他にもこの世界に入り込んだ人間がいるのだと理解した。
「何言ってんの? あんたNPCでしょ」
「あれ? 俺の勘違いか? 姉ちゃん、俺と同じプレイヤーじゃねぇの?」
プレイヤーって……。
――確信する。
これは夢ではない。
私の中でほぼ夢ではないと思っていたが、これで確信に変わる事になった。
このゲームに入り込んでしったのは、私だけではなかったという事らしい。
「プレイヤーって……あんたも?」
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次の更新は09月25日16:03
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