18話 最高の相棒~優しさ~

「はぁ~」


 これからどうしよう。

 キャップもないし、私はこの世界で一人でやっていけるのだろうか。

 大輔は結局いなかったし……ここで待っていたら大輔、来るかな?


「大輔……」


 考えれば考える程不安に押し潰されそうになる。心臓がざわつき、鼓動が早くなる。

 でもやっぱり、考えずにはいられない。一人だという不安が、余計な思考を巡らせていた。


 大輔がいないこの世界で、一人で生きれる気がしない。

 こんな世界を望んではいたけど、それは大輔もいる前提の話だ。


 ――ワォン。


 犬が私を慰めるかのように、トコトコ歩み寄ると寄り添ってきた。


「……はは……っ……」


 私は声にならない乾いた笑いと同時に、涙が溢れ出る。


 ――なぁ裕香、もしこんな世界になって俺達はぐれたら、絶対俺お前を探すから……お前バカだからさ。変な所うろうろすんなよ!


 私の事をバカにしたような大輔の言葉。


 ――うん。でも大丈夫だし! 別に大輔いなくても、一人で生きていけるし!


 あの時はすごいムカついて、強がってあんな事言ってたけど。


 ――こんな世界になったら私無敵だし! 大輔なんかいなくても、一人でも物資探し行くし。拠点見つけて暮らすし。


 とか甘い事、考えてたな。


 ――あー無理無理! お前はゲームでも方向音痴なんだから、一人じゃ無理。わけわかんない所行って地雷踏んで死ぬぞ!


 大輔は私がこうなるの、わかってあんな事言ったのかな。バカにしたような言い草だったけど、実際は心配してくれていたのかな。


 ――はぁ? そんなわけないじゃん。っていうか、私が生きてる間にはこんな世界にならないし。そう言ったの大輔でしょ。


 この話しをしてる時は楽しかったな……。現実味がなかったから笑えたのかな。


 ――ハハハッ! とにかく俺がお前を見つけるまで、どっかに隠れてろよ。まぁ……こんな世界にはならないけどな。


 あの時は、こんな世界にならない前提だったから笑えたんだ。

 でも今は、笑えない。


 大輔……探してよ。


 どうしてるかな、大輔。私がいなくなった事に気が付いて探してるかな。また警察呼んで大事になってなきゃいいけど。


 前に私が買い物に出掛けて三時間帰らなかった時、探しにきた時に警察と一緒だった。

 まぁそれは私が具合悪くなって、コンビニで寝てたのが悪いんだけどね。スマホも持っていってなかったから、連絡出来なかったし。


 それとも……この世界で私を探してるかな。

 警察連れて私を見つけてくれた時みたいに、私を見つけてくれるかな。

 あの時、言ってくれたみたいに……本当に探してくれるかな。


 隠れてろって……そんな事できないよ。そもそもこんな世界のどこに隠れろっていうのよ。


 これからどこに行けばいいの? ねぇ大輔……教えてよ。


 どこに行けば正解なの――

 どこに行けば大輔に会えるの――

 どこに――隠れればいいの?


 私がベンチに座り、俯き目を真っ赤に腫らしていると、後ろから扉を開ける音がした。


「よぉ、姉ちゃん――」

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