12話 試行錯誤~便利なStayGirl~

 色々操作に慣れるまで時間はかかりそうだが、なんとか大丈夫そうだ。

 本当はアイテムも、押しただけで使用できるのか確かめたかったが、インベントリにはブラドパックとプッカコーラしかない。今は体力は減ってないから使うのは勿体ない。

 という事でアイテムは後で試す事にした。


 それにしても、体力の表示はStayGirlをいちいち見なければいけないのだろうか。それに場所を表すマーカーもない。


 ゲームでは画面に体力であるHPとスタミナであるAP、それにマーカーも出ていたはずだ。

 マーカーとは、建造物がどこにあるかわかる道筋みたいなやつ。敵の位置もわかるし結構便利。っていうか、これがなきゃ方向音痴の私にはかなりキツイ。


 んで、それはどこに表示されているのだろう。


 私はStayGirl内をくまなく探した。

 ダイヤルを回していくと、一番最後に設定的なものがあった。

 その設定を見てみると、色々あったがその中にHP、AP、マーカー表示という項目があった。

 私はこれだ、と思ってその項目を押してみた。


 すると――


 ブワンという音と同時に、目の前の空間にそれぞれのメーターが浮かんだ。

 慣れ親しんだ緑色のメーターだ。


「うわっ、なんか出た!」


 視界の邪魔にならない程度に、片隅に浮かび上がる情報。それを確認すると、真上に浮かび上がっているマーカーを見ながら歩みを進める。


 近くに建造物があると、ピックアップされて徐々に大きく表示されていく。その仕様は、ゲームと変わっていないようだ。


「さて……」


 ――と、その前に。


 そういえば、ショートカットってどうやって使うの? そんな疑問に、踏み出した歩みを止める。


 しかしそう思った時、目の前の浮かばあがった情報をよく見ると、小さな四角い枠が四つ繋がってるものを見つけた。

 おそらくこれがショートカットだと思う。ゲームでもこんな形していたし。


 私は再びStayGirlの武器欄を見てみると、下の方にショートカットと書いた項目を見つけた。

 それを押してみると、さっき入手した10ミリピストルが点滅している。

 点滅した10ミリピストルを押して、次に小さな四角い四つの枠のうち、一番左にある四角い枠を押してみる。

 すると、その枠の中に銃のマークが表示された。目の前に浮かぶショートカットを見ても、同じく銃のマークが表示されている。


「よし」


 これでショートカットのセットも完了か。


「ふぅ~」


 じゃあ気を取り直して、建造物に向かおう。

 確かゲームだと、ここを出てすぐの所にロケット墜落地があったな。


 そこには確か……。


 まぁとりあえず行ってみよう。行かない事には始まらないからね。


 私はマーカーを頼りに、一番近い建造物を探す。


「マーカー通りだともうちょい西かな」


 とりあえず、マーカー通りに進み、少しずつ方向修正しながら西に向かおう。


「あっ、こっちだ」


 このまま真っ直ぐ行けば着く……はず。

 方向音痴の私でも、さすがにこれは迷わない……と思う。


 それにしても、やっぱり外は怖いな。これが私の望んだ世界だけど、いざとなったら――怖い。

 ゲームだったら何回死んでもやり直せるけど、今はやり直せない。もし本当に夢じゃなかったら、本当に死ぬわけだし。


 もはや夢という説は、私の中で薄れつつある。


 早く大輔見つけなきゃ。そしたら少しは安心出来る。

 まずはゲームのシナリオ通りに……って、ん?

 そういえば私、Shelter-61で目覚めたはずだよね。


 ――ありえない。


 だってゲームの始まりってShelter-61じゃないから。

 この放射能だらけの世界になる、前から始まるはずだ。


 ――え、どういう事? ストーリーがないって事?


 軽くパニックに陥る。

 そして、私の中に不信感が生まれた。

 この世界でサバイバルして、一人で生き残れとでもいうのだろうか……。


 わけがわからない。そういえばStayGirlを見た時、クエスト欄が綺麗さっぱりなくなっていた。

 今更だけど、私の今いるここでは、ストーリーもないしサブクエスト的なやつもないって事?


 ――なんでこうなったの?


「もう、わけわかんない」


 まぁでも、今ここでそれを考えても仕方ない……か。私は様々な思考が入り乱れる中、それらを振り払うように首を左右にぶるんと振り、思考をリセットする。


 とりあえずロケット墜落地に……。


「あ……」


 余計な事を考えながらとぼとぼと歩いていたが、ふと目の前を見ると、見覚えのある場所が広がっていた。




 ――発見 ロケット墜落地 EXP10



 様々な情報が浮かぶ目の前の空間に紛れるように、左隅に発見場所と発見獲得経験値が表示される。


 そして。


「そうだ、私の記憶が正しければ確かここに――」

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