10話 試行錯誤~感動的な世界~

「うわっ……まぶしっ――」


 一歩外に出ると、目を閉じずにはいられない程の陽光に襲われ、思わず顔を背ける。手のひらを頭上にかざし、少しでもその照りつける太陽を遮断しようとする。


 そして俯き、身をかがめながらまた一歩、踏み出す。


 照りつける太陽のせいで乾ききった土砂に、靴が埋もれる。


 完全に外に出ると、後方のShelter-61の扉がゆっくりと閉まった。

 私はその扉が閉まる様を確認すると、再び前を向く。


 ――そろそろ大丈夫そうだ。


 この眩しさに慣れて来た頃、頭上にかざしていた手のひらを下げ、ようやく細めていた目をしっかりと見開く。


 そしてその陽光の先にあったのは――




 ――発見 Shelter-61 EXP0



 ゲームと同じく、目の前の空間の左隅に、発見した建造物名と、発見獲得経験値が表示された。


 乾いた大地に肌寒い風。

 砂埃が舞うその大地でまず目にしたのは薄汚れたボロ車だった。

 窓ガラスは綺麗に無くなり、ドアが外れて地面に落ち半分、土に埋もれている。

 そんな廃車がいくつか乗り捨てられていた。


 そしてそれらを囲うフェンス。何か物凄い衝撃でも食らったのか、折れ曲がったフェンスは原型は留めていない。


 そしてその廃車が点在する大地に、一際目立つ建物があった。

 割れた窓ガラスの破片が散らばり、外からでも中の様子が丸見えだ。

 中には機械のようなものが置かれていて、その前に背もたれ付きの椅子が転がっている。

 機械の横には赤くて丸い飛び出たボタンがある。

 これはおそらく、今出てきたShelter-61の分厚い扉を開けるスイッチだ。


 そしてこの場所はShelter-61の検問所だったのだろう。


 こんな何もない荒野だが……私は感動した。

 やっぱり私の望んだ世界だ、と。


 『ウェスタランド』に散りばめられた異物の数々。

 本来ならこんな世界では誰も過ごしたくないだろう。

 しかし、そんな不必要な異物でも、この世界では必要不可欠なのだ。


 これぞまさに、あのE.o.W.――


 私は周りを見渡し、機械があるボロい建物に入った。

 建物って言っても小さいプレハブみたいなやつだ。


「わぁ、すごっ!」


 その小さなプレハブに入ると、外からでは見えなかった位置に縦長の金属ロッカーが置いてある。

 ロッカーの中にはさまざまな薬品類や、武器などもあった。


「あっ、これ銃じゃん! プッカコーラとブラドパックまであるよ。ラッキー♪」


 私はさっそく見つけた物をインベントリに入れようとしたが、今更気が付いた。


 ――インベントリって、どこ?


 ゲームをやっている時は、入手した後勝手にインベントリに入ってたけど。

 まるボタンでStayGirlを開き、インベントリもそっから見ていたから……。


 どうしよう。


 とりあえずStayGirlを見てみよう。

 何か方法があるはず!


「えっと……」


 私はStayGirlの横に付いているダイヤルを回し、項目を選んでいく。


 ゲームでは十字キーで項目を選んで、‪✕‬バツボタンで決定だったから、やや、やりづらさがあるが、まぁその内慣れるだろう。


 そして、ダイヤルを防具欄に合わせて、今着用してる服の箇所を指で押してみる。

 ちなみに今はShelterジャンプスーツを着ている。それ以外は何も。


 すると――

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