6話 理想の世界~Shelter-61~

「おぉ! この感じやっぱり……」


 うん、間違いない。E.o.W.のShelterシェルターだ。

 確か、このゲームの始まりはShelter-61。


 私の感情が高ぶる。

 例え夢だろうと私の望んだ、この世界に私は今いる。


 早く外に出て、この荒廃した世界を実感したいと思いつつも、Shelterの中をしっかりと探索。

 何故かというと、この探索・・もこのゲームの旨味だからである。


 E.o.W.は、そこにある物はほぼ何でも入手する事ができる。

 重量というものが存在するから全て取る事はしないが、必要な物を探しながら未知の生物と戦う。


 ――これが楽しいのだ。


 今までは踏み潰せる程小さかった生物も、この世界ではとてつもなく巨大化している。

 虫一匹にしろ、何のためらいもなく襲ってくる。

 放射能を浴びまくっている生物は、攻撃にRADラド を持っている場合があり、食らうとRAD中毒になる場合がある。


 RADは数値として徐々に上昇していき、RADZラドゼータRADXラドエックスを使わないと、回復しない。

 もしRADを放置し限界値に達してしまうとRAD中毒となり……死亡してしまう。


 ちなみにRADは、核爆弾の影響でこの世界――『ウェスタランド』にバラ撒かれた物質。

 言わば放射能の事だ。


 RADとは、とても怖いものである。


「あっ! ブラドパックだ」


 ブラドパックは減った体力を回復するもの。E.o.W.ではとても貴重なものである。


「プッカコーラもこんなに沢山!」



 プッカコーラもまた、回復アイテムなのだが、これは徐々に回復するもので、さらにRAD値が少しだけ上昇してしまう。

 まぁ、この世界に放置された飲み物だから、放射能を浴びているのは仕方ないのかもしれない。


 ブラドパックは非常に貴重な為、普通はプッカコーラから使用する。

 この世界において、プッカコーラは必須級アイテムだ。入手しないと結果的には死んでしまう事に繋がる。


 RADZやRADXも同じで、食らうRAD値を軽減または、食らったRAD値を回復するものなので、入手しておいて損はない。

 むしろRAD値の回復手段がないと詰む。RADが限界値に達して、RAD中毒による死亡。もうどうする事も出来なくなるのだ。


 薬品系は見逃さず入手していかないと、このゲームでは生き残れない。

 夢だろうが、物資回収は怠らない。


「うわっ! ゴキブリみたいなやつ!」


 ゴキブリみたいなやつというのは……見た目はゴキブリそのものの生物だ。


 いや正確には、巨大化したゴキブリだ。


 正式名称は確か――ラドブラックアーズだったはず。名前の通り、攻撃を食らってしまうとRAD値がガンガン上昇する。

 だが、こいつ自体は一撃で死ぬ程に弱いのだ。


「どうしよっ……まだ銃ゲットしてないのに」


 辺りを見渡す。


 すると、都合のいい事にすぐ近くのトランクの上に警棒が乗っていた。

 私は警棒をすかさず手に取る。


 そして――全体重を乗せて、殴る。


 すると、ラドブラックアーズは地面に体液や内蔵をぶちまけ、潰れて動かなくなった。


「うわ! いっぱいいる。キモっ」


 一匹いたら百匹いると思え。

 例のゴキブリと同じだ。


 近寄ってきた巨大ゴキブリ――ラドブラックアーズ――を、後ずさりながら殴り倒していく。


 小さな羽をバタつかせ、こちらに飛んで来たと同時に地面に落下した。

 羽がもぎ取れ散らばっていく。


 あまり見たくない光景だ。


 私は気持ち悪さから、全てのラドブラックアーズを倒すと、逃げるようにその場から立ち去った。


 そして出口を探し再び歩みを進める。


「おっ! これは……」

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