3話 それは突然崩れ去る

 E.o.W.の天敵――それは"地雷"。


 荒野に足を踏み入れ――ピピピピ、という音が聞こえた時にはもう遅い。


 何故かいつも、反射的にジャンプボタンを押してしまうのだが……。

 ジャンプをしたが最後、足が吹っ飛び運が悪ければ死ぬ。


 ダメだとわかりつつも反射的にジャンプボタンを押してしまう。これはE.o.W.をやっている人ならあるあるだと思う。


「あ、地雷! 解除しよっ――」

「クククッ……また死ぬぞ~」

「うっさい! 今集中してんだから、邪魔しないで!」


 ――ピピピピピィ――ボォン!


「あ――」

「ハハハハハハッ! ハハッ! アハハハ!」


 コントローラーを床に置いて、腹を抱えながら涙を浮かべ笑う大輔。いくら何でも笑いすぎだ。

 私はそんな大輔を、頬を膨らまし睨む。


「アハハッ……ちょっと便所。俺いない間にまた死ぬなよ~」


 これはいわゆる死にゲー。心が俺そうになった時は数しれず。だけどいくら死んでも、やっぱりE.o.W.はハマる。やめられない。

 一度ゲームを起動したが最後、コントローラーを手放せなくなってしまう程の中毒性。


「はぁ~疲れた」


 だけどE.o.W.をやっていると、瞬きをするのを忘れるのか目が痛くなる。集中し過ぎるせいだろうか。

 ただでさえ目が悪いのに、これ以上悪くなったら見えなくなってしまう――とか思いつつもゲーム三昧の日々なんだが。


「いや、たとえ目が見えなくなってもゲームやるし、うん」


 ――と、独り言を漏らしてはみるが、やはり目が見えなくなるのは嫌。大好きなゲームを二度と出来なくなる。それだけは避けたい。

 大好きなE.o.W.の世界を見れなくなるのは、私にとっては地獄だ。

 現実で起こらないなら、せめてゲームだけでも体験したい。


「まじで一旦休憩しよう。目を休めないと」


 コントローラーを床に置く。

 酷使した目を癒すのはやはり目薬が一番だ。


 ――染みる。


 目薬が効いている証拠だ。


「ふぅ~」


 冷たい液体を差し込み目を閉じる。そしてリラックスするように吐息をもらす。


 そして一分くらい経った頃だろうか。


 目を瞑っていても伝わる程の強い光を感じた。

 何事かと思い、思わず目を開こうとするが、その光量に再び目を瞑る。


「うわっ――」


 そして再び、恐る恐る瞼を開ける。


 完全に瞼が開くと、光の発生源はテレビからだとわかる。

 光過敏症発作こうかびんしょうほっさを起こしてもおかしくない程の光量だ。


 勿論、E.o.W.に今までこんな現象が起こった事などない。

 E.o.W.のバグなのだろうか……。それともテレビの故障なのだろうか……。


 私は咄嗟にスマホに目をやる。


 そしてGoogle検索を開き、『E.o.W. バグ 光』と入力してみる。


 出てくる検索結果は、他のバグや小技の攻略情報ばかり。


 ――どうしようか。


「ふぅ」


 私の目線は再びテレビへ。


「んっ――」


 すると急に、頭をハンマーのような物で強く叩きつけられたような衝撃が走る。


 ――目眩がする。


 あまりの光量に目が負けたのか――何が起こったのかと――事態を飲み込む前にその時はやってきた。


「眠っ――だい……すけ」


 そして急激な睡魔。


 その襲い掛かる睡魔に、瞼に力を入れる事が出来なくなる。

 徐々に瞼を閉じる。


 薄れゆく記憶の中で、――トイレが終わったのだろうか――大輔が階段を上る足音が聞こえてきた。


 もうダメだ。

 私の意識はここで途絶えた。

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