第4話 あの丘で
思い出していた。椿咲が生きている頃にみんなで祭りに行ったときのことを。2歳の頃から毎年、この祭りに来ていた。椿咲が死んでからは来なくなってしまったけど。
次の朝起きると、机に手紙が置いてあった。その手紙を手に取ろうとしたときだった。ピーンポーンピーンポーンとチャイムが鳴った。扉を開けるとそこには那奈と陽翔が立っていた。
「華奈、それ読んだ?」
私の手にある手紙を指さして那奈が言った。
「読んでない。起きたばっかりだったから。」
「俺たちにも届いたんだ、封筒の裏を見てみたら椿咲って書いてあって」
「ほんとうだ、、、」
「それでね。二人で那奈の家に行って3人で開けようって」
「そうだったんだ。」
二人を中に入れ1人ずつ声に出して読むことにした。
最初は陽翔から。
陽翔へ
いつも優しくみんなを見守ってくれて本当にありがとう。
俺、お前ともう一回だけサッカーしたかったな。
那奈を幸せにしてやれよ
椿咲
短くて不器用な感じも椿咲らしい。
次に那奈。
那奈へ
いつも明るく面白くてもっと那奈たちといたかったなって思う。
これからも華奈を守ってやってくれよ。永遠のかなななでいてね。
椿咲
高校生の時、華奈&那奈でかなななと呼ばれていたのを思い出した。
最後に私。
華奈へ
まず最初に昨日はごめん。俺、母さんに会いに行ったときさ、母さんから見えなかったみたいで、俺みんなにも忘れられちゃったらなんて、最低なこと思って、怖くなって謝ることしかできなかった。それとみんなにお願いがあるんだ。小学校卒業の時に丘に埋めたタイムカプセル覚えてる?それを開けてほしいんだ。そこに俺の華奈への気持ちが書かれてる。昨日あんな事があったし見たくないかもしれないけど、、でも見てほしい。これからも3人で仲良くしててね。
椿咲
「丘に行こう。」
そう私が言ったのを合図に3人であの丘へ向かった。10年越しに開けるタイムカプセルは古くて入れている缶は錆びていた。やっとのことで開けるとそこには思い出の品と手紙が入っていた。
そして取り出した椿咲手紙に書いてあった。
大きくなっても華奈ちゃんのことが好きですか?華那ちゃんと結婚していますか?
椿咲
その手紙を読んだとき涙が溢れていた。
「ずっと華那には言うなって椿咲に言われてたんだけど言うわ。椿咲はずっと華奈のことが好きだったんだぞ。」
「え?」
「そうだよ華奈」
「俺たちに話してくれたんだ。本当の理由を。華奈に会いたくて椿咲はここに来たんだ。お盆の間だけ。」
「そうだったんだね。椿咲」
私達は3人で泣きながら空を見上げた。この街で一番空に近いこの丘で。そうすればなんだが椿咲に近づけたようで。これからも椿咲を忘れない。きっと、またどこかで。
会えるよね?椿咲。
10年後あの丘で 伊吹いつか。 @ibuki_0226
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。10年後あの丘での最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます