むーちちちち!!

「あのさ、ミクリくん…」
夕日が差し込む暗い教室で、俺と彼女、トウコがいた。
トウコはそう言って指を捏ねたり、チラチラとコチラを見ている。唇を微かに震わせている彼女の貌は、いつもより初々しく見える。
「…なに?」
俺は微かに語尾を上げたナントモ情けない声で返答する。
もしかしたら、彼女は俺に甘酸っぱい感情を抱いているのか。そんな淡い期待が脳を支配し、自然と心臓が喜びを待ち兼ねている。
「実は、ね…」
意を決した様に、トウコの喉が上下する。
「…やっぱり恥ずかしいよ…世界でミクリくんだけが聞こえるように…ね?」
トウコが俺の席に近づく。
美しいながらもあどけなさを残す顔が。
細く長い、華やかな指が。
神が設計した様な、均衡の取れた肉体が。
その全てを携えたトウコが俺に近づく。
そして夕日より紅く染まるその顔を俺の顔に横付ける。
プルリと瑞々しい唇を俺のほっぺに押し付けるのか…
そう思い、益々心臓は動き始め、いつの間にか固く握る両手からは汗が滲む。
ついに、この俺にも出来るのか…彼女が…
そう思った瞬間、トウコが耳の横で囁いた。







「死んでくれ、ミクリ・トウヤ。」

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