ジェシカを見守り続けるのは辛いです【後編】~ヴァン視点~
その後もジェシカを見守り続ける。貴族学院が学期末休みに入ると、相変わらず王妃に嫌味を言われるジェシカ。でも、やられっぱなしのジェシカはもういない。
護衛騎士との密会をうまく撮影したジェシカは、それを元に王妃を揺さぶり、黙らせたのだ。さらに侯爵までも、王太子をうまく利用して黙らせていた。
次々と自分の敵だった人物を黙らせていくジェシカを見た私の執事が
「本当にジェシカ様は聡明な方でございますね。周りをよく見て、利用できるものをうまく利用していらっしゃる」
そう言って、感心していた。
私のいない間に、どんどんジェシカは逞しくなっていく。そんなジェシカを見ていると、なんだか不安になってくる。このままジェシカは、どんどん1人で何でもできる様になって、私の事などもう忘れてしまうのではないか。
断罪が終わり、ジェシカの前に現れた時、もう私の事を必要とせず1人で生きていくのではないか。そんな気持ちが私を襲う。
そんな中、王太子と一緒に別荘に向かった。相変わらず最低な王太子の様子に、ジェシカの顔も引きつる。そして事件が起きたのだ。バカな王太子に連れられ森の奥に入ったせいで、クマに遭遇したのだ。あろう事か、あの王太子は婚約者のジェシカを置いて、一目散に逃げていくではないか。本当にどこまでクズなんだ。
1人取り残されたジェシカは、腰を抜かし動く事が出来ず、涙を流している。ここは私の出番だな。そう思い、一気に弓を引き、クマを仕留める。ジェシカの元に向かい、抱きしめたい衝動を必死に抑え、近くの茂みに身を寄せる。
とにかく、ジェシカが無事でよかった。
その後も私は、ずっとジェシカを見守り続けた。時には護衛騎士の格好をして、傍にいた事もあった。ちなみにジェシカが侯爵の部屋に映像型録音機を仕掛けた時も、私が全体が映る様、場所を変えたのだ。
ジェシカは相変わらず設置場所が分かっていない様で、見当違いな場所に設置していたのだ。やっぱりジェシカには、私がいないとダメだな。
その後もジェシカの為に、裏で色々と動いた。王太子との結婚が早まってショックを受けるジェシカに、さりげなくダスディー侯爵の存在を知らせた。
私の期待に答える様に、ジェシカは必死に証拠を集め、ダスディー侯爵令嬢を味方につけた。
そんな中、王太子がジェシカを殴るという非常に腹ただしい事件が起きたのだ。近くにいた私は、すぐにジェシカから王太子を引き離し、そのまま部屋から出した。そんな私に向かい、あの王太子は
「離せ!なぜ止めた。ジェシカが悪いんだ!」
そう叫んでいた。本当にこの男はクズだ。あまりにも腹が立ったので、王太子の紅茶にこっそり下剤を混ぜてやった。そのお陰か、王宮に潜入している家臣の話では、その日の夜は、ずっとトイレにこもっていたらしい。
この程度の嫌がらせ、ジェシカが受けた数々の苦痛に比べれば、屁でもない。本当はもっと痛めつけてやりたいが、それはジェシカ自らやる事だ。そう、断罪の時に。だから私は、この程度にしておいた。
そしていよいよジェシカの17歳の誕生日を迎えた。私も護衛騎士に扮し、会場でジェシカを見守る。ジェシカは背筋をピンと伸ばし、堂々と断罪を始めた。その姿はとても立派だった。
次々とジェシカを苦しめたやつらが断罪され、王宮の地下牢へと連れていかれる。その姿は、本当に見者だった。そして残すところ、あのクズ王太子だけになった。もちろん、このクズ王太子にも容赦なく断罪するジェシカやダスディー侯爵たち。
そしてついに王太子が廃嫡され、第二王子でもあるネリソン殿下が新たに王太子に就任する事が決まった。これで全てが終わったな、そう思ったのだが…
あの男、何を思ったのか、ジェシカの足に縋りついたのだ。本当にどこまでクズなんだ。それにもうジェシカはあの男の婚約者でも何でもない。彼女に触るな!
すぐに引き離そうと近づこうとしたのだが、ネイール公爵に首根っこを掴まれ連れていかれた。本当に最後まで醜態を晒して、恥ずかしい男だった。
ふとジェシカの顔を見ると、それはそれはすがすがしい顔をしていた。私のジェシカは、また1つ逞しくなったな。執事も同じことを思ったか
「殿下、ジェシカ様は本当に素晴らしいお方ですね。それに、肝も据わっていらっしゃる。あの様なお方が、殿下のお嫁さんになって下さったら、私たちも嬉しいのですが」
そう言いだしたのだ。
「ジェシカは私と結婚するに決まっているだろう。そもそもジェシカは、私の為にあいつらを断罪してくれたのだぞ。これからは私が、ジェシカを幸せにするつもりだ」
これからはずっとジェシカと一緒だ、既にジェシカの事は、両親や兄上にも通信機を通じて伝えてある。
どうやら執事からもジェシカの話は行っていた様で、皆ジェシカに会えるのを心待ちにしているのだ。
私も早くジェシカに触れたい。この1年、本当に辛かった。やっとこの苦しみからも、解放されるんだな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます