第27話 王宮所有の別荘に向かいます
思いがけず王妃様が浮気をしている証拠を手に入れた私は、ヴァンが残してくれた説明書を読みながら、データを保存した。念のため、3つ保存データを作った。
データは見つからないように、私がよく屋敷から追い出されたときに眠っていた建屋の奥の、目立たない場所に隠しておいた。ここはほとんど使われていない。きっとバレないだろう。
それでも心配なので、データの1つは持ち歩く事にした。そこまで大きくないので、問題ないだろう。
全て隠し終えた後、カモフラージュの為散歩をする。護衛騎士は多分外を見張っているとは思うが、万が一侯爵家の中にいたら厄介だ。そう思い、見られている事を想定しながら行動している。
部屋に戻ると、その場に座り込んだ。そして、ヴァンが残してくれたイヤリングを取り出す。
「本当にヴァンは、すごいわね。あなたのお陰で、王妃様を黙らせることも出来たのよ。ありがとう、ヴァン」
極力考えないようにしていたが、やはりヴァンの事を思い出すと、涙がこみ上げてくる。それと同時に、無性に会いたくてたまらなくなるのだ。もう二度と会えないとわかっていても、この気持ちはどうする事も出来ない。
結局気持ちがおさまるまで、ヴァンの形見のイヤリングを抱きしめながら、ただひたすら涙を流す。そうする事で、少し気持ちがおさまり、また頑張ろうと思えるのだ。
「さあ、明日はいよいよ王都所有の別荘に行く日ね。物凄く行きたくないけれど、仕方ない。準備をするか…」
明日別荘に行くと聞きつけたお父様が、すぐにメイドに私の準備を手伝う様指示を出した様で、洋服などの必要な物は、全てメイドが詰めていった。後は、映像型録音機も念のため、持って行く。
それから、ヴァンの形見のイヤリング。これも持って行かないと。そっとイヤリングの入った箱も入れた。
よし、準備完了だ。
まだ寝るまで少し時間があるので、鍵開けの練習も行う。一度コツを掴めば、意外と上達は早いもの。何度も練習を重ねた結果、ずっと早く開けられるようになったのだ。
でも、まだまだだけれどね。さすがに別荘に行っている間は、鍵開けの練習は出来ないので、今日のうちにしっかりやっておく。
結局夜遅くまで、鍵開けの練習に費やしてしまったのであった。
翌日、眠い目をこすり、なんとか起きる事が出来た。そして相変わらず無表情のメイドたちに着替えさせられた。今日のドレスは、ネイサン様の瞳をイメージした水色のドレスだ。
準備が整うと、玄関へと向かった。するとお父様と継母が待っていた。
「ジェシカ、今日から王宮所有の別荘に行くのだろう?あそこは非常に珍しい“金”が発掘される場所でもある。王都よりも安く金が手に入るんだ。いいか、金を買ってくるんだぞ。ほら、金だ。本当ならメイドにでも頼みたいのだが、生憎家からのメイドや護衛騎士は連れてこないでいいと言われているからな」
「私は純金のネックレスがいいわ。いい、お金を盗むんじゃないわよ。必ず買ってくるんだよ」
さすが強欲夫婦。どうやら私に“金”を買ってこさせるらしい。そういえば、この国ではあまり純金って見ないものね。
「わかりました。金を買ってきますわ」
お父様からお金を受け取り、玄関から外に出た。今世で初めて見るお金。なるほど、日本のお札とよく似ているのね。お札を手に取り、よく眺める。えっとこれは、1万ゼニーが束になっているのね。多分1束100枚だから、5束で500万ゼニーてところね。
確かこの国ではパンが1つ10ゼニーくらいだと本で書いてあったから、日本円に直すと大体…5000万円くらいじゃない!これは大金だわ。
ちょっと、さすがにこんな大金を持たせないで欲しいわ。無くさないように、すぐにカバンにしまった。
しばらく待っていると、王家の馬車がやって来た。
「おはよう、ジェシカ。今日のドレスも素敵だね」
「おはようございます、ネイサン様。今日はわざわざ別荘に招待して頂き、ありがとうございます」
「君はいずれ僕と結婚して王妃になるのだから、当然だよ。別荘のある王家所有の領地は、本当に素晴らしいところなんだよ。さあ、早く行こう」
ネイサン様に手を引かれ、馬車へと乗り込んだ。
「別荘までは大体6時間くらいかかるんだ。休憩しながら、ゆっくり向かおう。そうそう、別荘のある領地は金も豊富に取れるんだよ。この国では珍しいから、是非買っていくといい」
「はい、両親からもそう言われ、沢山お金を持たされましたわ。ですので、金が販売されている場所に連れて行ってもらえると嬉しいです」
「もちろんだよ。そうだ、せっかくだから、街を散策しよう」
「それは嬉しいですわ。ありがとうございます」
街を見て回れるなんてラッキーだわ。そうだ、せっかく街を見学できるのですもの。この国の人たちが普段どんな風に暮らしているのか、ゆっくり見よう。
自慢じゃないけれど、私はあまり街に出た事がない。というより、出してもらえなかったのだ。だから今世の私は、本当に世間を知らない。いくら本で情報を仕入れたとしても、やっぱり自分の目で見ないとね。
そう思ったら、急に楽しみになってきた。早く着かないかしら!
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