第10話 スペリオルイクス

「コナミが許せないわ」

「唐突に名指しでなにを」

「スイッチでラブプラスを出さないのよ。

極秘に作って社員だけで楽しんでるのかもしれないわ。

独占禁止法だわ」

「意味がわからないものを無理して使うとネルフみたいになるぞ」

「わたしは死なないわ。あなたが守るもの」

「なんだこの下衆ヒロイン」

「戦犯って感じがする」

「自己申告してる…下衆なんだか卑屈なんだか」

「とにかくコナミに任せておけない以上、わたしが勝手にスイッチ版ラブプラスの案をまとめるわ」

「ま、コナミにクレーム電話入れないだけましか」


「勝手にって意気込むのはいいけど、もうかなり完成されてるゲームなんだしシンプルなバージョンアップが一番なんじゃないの?」

「そうね。

追加要素中心に考えていくわ。

真っ先に思いつくのはコントローラーの振動を活かすイベントね」

「3DSは振動なかったしな。

で、おまえの事だからどうせエロくて使えないアイデアなんだろ」

「股間に電マ当てるイベントはどうかしら」

「予防線に特攻仕掛けんなよ!

エロはダメだって示唆したばっかだろ!」

「なぜ?

シノビリフレでは子宮マッサージしてたわ。

任天堂の審査は電マを許すはずよ」

「そりゃ腹に電マ当ててたし電マは許されるかもしれんけど、腹と股間じゃ次元が違う。

それにゲーム的にもキスと肉体関係なきお泊まりが限界っていう健全路線が売りなんじゃねーの?」

「甘いわね上等な料理にパパ活女子をぶちまけるが如き思想ね」

「女体敷きって盛るよりさらにワンランク陰惨な変態だなぁ」

「男も女も性そのもの。

よって男と女の交流は性的なもので至極当然と言えるわ。

もし人間的な交流に終始するのであれば、それはどれほど親しくとも人間の交流であり男女の交流ではありえない。

そしてラブプラスの3名はカノジョなのよ。

人間であると同時に女なのよ。

健全を売りにするのはコンセプトの崩壊と言っても過言ではないわ」

「なげえ」

「エロが好き」

「最初からそう言え」

「ラブプラスがエロであるべき論拠を示したかったの。

今からエロエロにエロくしていくんだもの」

「エロくするって言ってもねえ…それこそカノジョだったら常在戦場でエロい事するのも変だし。

本腰入れたらレーティングの限界に引っかかるし」

「キスできる場所は増やしたいわ。

耳・首筋・手の甲・腹・背中・太腿・足指あたりに」

「ガチ過ぎて怖い」

「実現した暁には学校の廊下で延々ネネさんの足指舐め続けられるようになるわ」

「ネネさんを退学にしたいのか?」

「うろ覚えだけど、確かもともとカノジョたちは休み時間の廊下で千回連続キスできる剛の者揃いだから問題ないわ」

「ラブプラスが怖くなってきた」

「どうしましょう」

「なんだ」

「これ以上なにを言っても気持ち悪くなる気しかしないわ」

「股間とか言い出した時点でもう下水の流れにある事を忘れるな」

「そうね。

開き直って本番行為の話をしましょう」

「あたしは遊泳禁止区域から出てほしかっただけなんだ…」

「どうやったらネネさんとスペリオルイクスできるかを考えたわ」

「なにそれ」

「SEX」

「いまさらカッコつけないで普通にセックスって言え」

「人が性によってのみ生まれ出る性そのものである以上、性教育は性を肯定し推奨するものであるべきだと思うの。

そのための印象向上、そのためのスペリオルイクスよ。

これなら教室で

『あースペリオルイクスしてえぜっ!!』とか叫んでもコロコロコミックのオモチャバトルマンガみたいで爽やかでしょう?」

「いざバトル始まったらコミックLOになるんですけど」

「そこは描写次第じゃないかしら。

『なッなにィッこいつ処女じゃないッビッチだッ!

裏の裏ッ耳年増メスガキ風の会話は全てこの時のための…布石ッ…!

まずいぞ処女用のチューンではビッチとの相性が、やめろ…う動くなッ!

うわあああああふう…』」

「だからそれを絵にしたらエロマンガだっつってんだろがい。

あと処女用のチューンってそいつチンポ改造してんの?」

「SF(サイエンスファック)ね」

「うるせーよ。

まあそのスペリオルだかいうバンダイ式オブラートはいいとして、どうやったらネネさんとスペリオルイクスできるかとか言ってたけどスイッチでやろうとしちゃダメだろ」

「そこよ。

エロならスペリオルイクスは避けて通れない。

だったらスイッチを捨てなくてはいけなかったんだわ。

スペリオルイクス前提ならパソコンで出すしかないの」

「本格的にエロゲ化しちまうって事?

雰囲気壊れるなぁ」

「わたしはそうは思わないわ。

むしろ男女として行き着く所まで行って初めてカノジョは完成するはずよ。

スペリオルイクスできるネネさんとできないネネさん、どちらがより女であるかは自明の理。

スペリオルイクスネネさんが誕生した瞬間キスどまりの旧いネネさんは大きく欠けたごっこ遊びに墜ちる…。

その時よりカノジョなのは、最もラブプラスなのは、スペリオルイクスネネさんだわ」

「うーむ。

まあ成人した身にとって旧作は様々な意味で虚しかったのは事実だが」

「見えるわ…世のカレシ達はタッチスクリーン型ノートパソコンでカノジョを連れ回し、語らい、家に帰ればSFするのよ。

きもちEボタン連打でネネさんを昇天させるのよ」

「うん、観光地とかでカノジョの昇天ボイス流して通報されるとこまで見えるよ」

「かつて人々は弱く情けないカレシだった。

カノジョの望みでもあろう必然の行為を己のために封じ、大人の事情のために封じられ、カノジョのためとうそぶく卑怯者だった。

だがそれもようやく終わる。

ラブプラスエロによってな!

消えろ健全路線っ!」

「こういう変なラスボスを生んでしまうのが健全路線最大のデメリットかもしれない」

「18禁なら性格設定も広げられるわ。

女王ネネさんから快楽堕ち敬語ネネさんまで」

「メスガキリンコも?」

「無論」

「ふむ」

「あとパソコンのハードスペックなら実時間で丸一日家デートとかも可能になるんじゃないかしら。

旧作ではキスの前座にすぎなかったスキンシップもねっとり続けられるわ」

「あ〜…なんだかんだ面白そうに思えてきた」

「決まりね。

コナミはパソコンでラブプラスを出すべきだわ。

今回は以上よ」

「結局は真剣30〜50代エロしゃべり場にしかならなかったか」

「いつもそうでしょう」

「主犯が平然と言うな」

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