第9話 媚び
「媚びを売りたいわ」
「ある意味ラブグッズより買いにくいものを大っぴらに売られても」
「カクヨムは媚びを買った人が現金をくれるシステムと聞いているわ」
「媚び売りたいならオブラート千切り捨てる癖を直せ。
現金じゃなくてカクヨムリワードな」
「流行りの作品を参考に売っていくわ。
うわー異世界に転生したら都合よく最強パワーで活躍してチヤホヤされてしまったー」
「馬鹿にしてんのか」
「要点を抜き出しただけなのに…これを侮辱と感じるのは卑屈じゃないかしら」
「スープ単品で出してどうせこれを飲みたいだけなんだろって腐るラーメン屋こそ卑屈だろが。
麺も具も楽しみたい客にとってその卑屈はまさしく侮辱だ」
「なるほど。
エロゲーやってる人にAV見りゃいいだろって言うようなものね。
わたしが間違っていたわ」
「エロの形にしないと海馬に収まらんのか?」
「媚びるためには全部盛りが望ましいのね」
「まあ媚びじゃなくて面白い面白くないだと思うけどね。
競争相手めちゃくちゃ多いんだし」
「うちは面白が無いから媚びで勝負するわ」
「堂々とウンコ投げんなよゴリラか」
「うわーおっぱいとか諸々モロ出てしまったー映像化したら見られてしまうー。
散るがいい謎の煙よ翳るがいい謎の光よ!
そして見よ!我が神秘をっ!」
「ゴリラのような変質者だった」
「さて、あとは全部盛りを片づけていけばいいわね。
まず異世界から」
「異世界以前にどこなんだここは」
「特に決めてないわ。
獄中かもしれないし病棟かもしれない」
「自分のキャラクターを客観視できてるのはいいが、改めるつもりは無いのか…?」
「ナース萌え」
「ナース見たさで平穏な日常設定捨てたのか…。
おまえはそれで満足だろうけどなんであたしまで病棟入りしてんだよ」
「検温してください。
一番いいのを頼む」
「あたしナースかよ!?
ええいケツしまえケツを!」
「これで映像化への期待はうなぎのぼりだわ」
「媚びたいならそのエロへの絶大な信頼から改めてほしい。
なんだかんだ効果はありそうだけど」
「で、この病棟を足がかりにして異世界へ行くわ。
無難に定番のファンタジー世界へ」
「行くったって…どうやって転生すんの。
まさか自殺とか言わないよな?」
「こういう時文字世界は便利だわ。
うわー魔法テクノロジーを感じさせる中世風の街へ来てしまったー」
「ナース目線で見ると患者の容態が急変したように映るんだが…まあ別にいいけど」
「うわーおっぱい大きい娘がいっぱいだーもみもみ」
「おいワンコマンドで恥晒すな変質者」
「ビンタされたわ」
「住民は健全なようで安心した」
「次は最強パワーで都合よく活躍かしら」
「転生はしなくてよかったのか?」
「転がって生きるからそれで我慢してもらいましょう。
ごろごろごゔぅえオふぅうう」
「三回転半の人生見せつけられるほうが我慢ならんと思う」
「転生は後回しね。
いよいよ醍醐味の最強パワーいくわ。
カタカタカタタァーンと」
「今のキー入力音は?」
「エロMODで街の人々を全裸にしたわ」
「チートならなんでもいいわけじゃない!
おまえみたいな汚染系の悪党見て誰がスカッとできる!?」
「全裸見てれば大抵の悩みは解決するわ。
わたしは主役じゃなくていい」
「全裸モブに全投げする奴は確かに主役ではないな。
しかしどっちにしても今日日の若者は無機質な全裸に食いつくほど飢えてないんじゃないかねえ…?」
『おい君たち!』
「通りすがりの騎士団長が話しかけてきたわ」
「おお初の第三者キャラ。
…まさか全裸じゃないよな?」
「己のマンモスを荒ぶらせながら走ってくるわ」
「万一映像化されたらどうすんのこのシーン!?」
『その格好…君たちはこの辺の人じゃないね?
外で服を着るなんて変わってるから』
「わたしたちが服を着てるせいで怪しまれてるわ」
「さようなら健全だった住民たちよ」
『ちょっと詰め所まで来てもらえる?
実はさっき女の通り魔にその…胸を触られたという被害報告があってね。
その通り魔は服を着ていたらしいんだ』
「えっこれおまえの事?
あれっ…全裸生活者の道徳観でもパイタッチはいかんの?
いやいいわけないにしてもそれ話の軸にする?」
「フィクションといえど痴漢は痴漢として扱われなければならないわ」
「プログラムされた答えしか出せない根暗特有の電卓正義かよ鬱陶しい…きっちりビンタされて教育的表現は済んでるし、フィクションの区別ついてるならそれこそ許容範囲内の根拠だろ。
そもそも区別ついてねえバカの責任はバカのものであって、フィクション側に肩代わりさせるのは誤爆か八つ当たりだ。
…つい熱くなっちまった」
「わたしも杓子定規を揮うつもりはないわ。
媚びの一環よ。
カクヨムユーザーは全員根暗だから相性バッチリの展開だわ」
「うおおい媚び屋で喧嘩売るなよ!」
『抵抗する気かな?
エスコートの作法は学んであるけどまだ勉強不足でね…仕事中のやり方までは知らないからそのつもりで』
「すっごいカッコつけてるけど全裸なんだよね?」
「構えたら内ももにペチーンってなったわ」
「あたしこの騎士団長を訴えたいんだけど」
「郷に入っては郷に従いなさい」
「郷を精神汚染した奴が言うな」
『行くよ…ハァッ!』
「ちょうどいいから彼にチヤホヤしてもらいましょう。
はいボディ」
『ふんげぼ!!』
「き、騎士団長ーっ!」
「ヒールで玉ぐーりぐーり」
『おほほおおうっ…!』
「おまえヒールなんて履いてたのか」
「いま履いたの」
「もうどうでもよくなってきた」
「さあ騎士団長のご主人様はだーれ?」
『あなた様ですもっと踏んで下さいあふぅんありがとうごじゃいましゅうう!』
「チヤホヤされたわ」
「チヤホヤか…?」
「まだ訴求力に欠けるわね。
カタカタカタタァーンと」
『先ほどおっぱい揉まれた者です訴え取り下げますもっと揉んで下さいお願いしましゅうう!』
「なんなのここ水龍敬ランド?」
「男女両方からチヤホヤされた事で読者の幅が広がったわ。
わたしも勇者らしくなったものね」
「今んとこ魔王が世界弄んでるだけなんですけど」
「じゃあ勇者らしくこの世界の魔王と対決するわ。
魔王カムヒア」
『ここは始まりの街です』
「なんで魔王が観光案内してんだ」
「テキストを書き換えてやったわ」
「陰湿なチートしか使わねえなこの魔王型の勇者。
ちなみにこの村人型魔王のお召し物は?」
「筋肉よ」
「魂の衣を聞いたんじゃない」
「筋肉だけど能力値も書き換え済みなので、はいボディ」
『ふんげぼ!!』
「こ、この世界の魔王ーっ!」
「ヒールで竿ぐーりぐーり」
『あっあっあ、ああああうっ!ふう…』
「魔王が果てたわ」
「果て方が求められてるのと違う」
「すぐに復活するタイプの魔王なのよ」
「復活の意味も違う!」
「さてひととおり媚びたけど、なにかやり残しはあるかしら?」
「ハーレムラブコメとか?」
「男女2対2だからギリギリ数は合うわね」
「おい騎士団長と魔王を数に入れんな」
「ドMよ?」
「だからだよ!
おまけに全裸だし!
あたしは服着たノーマル男がいいの!」
「ならこの際男は諦めて、読者層を狭めないために女にもモテておきましょう」
『おっぱい揉んでくだしゃいい!』
「洗脳堕ち女にモテてもガチエロオヤジしか喜ばねーよ!
早く呪いを解いてやれ魔王型の勇者!」
「えっわたしまた何かやっちゃいました?」
「悪を悪と認識できない真の邪悪か!
セリフの使い所が違う!」
「なにぃ〜?聞こえんなぁ〜?」
「それ難聴系主人公じゃなくて南斗系宿敵だから…あーあたしゃ疲れたよ」
「やれるだけの事はやったわ。
今回は以上よ」
「そうだな、魔の王を超えた邪の神には世界を汚すのが精一杯だよな。
転生も結局してないし」
「魔王と騎士団長を転生させときましょう」
『うわーーっ!!✕2』
「哀れだ…奴らも、送られた世界も」
「ここから彼らの物語が始まるのね。
【全裸の僕と全裸魔王で世界救った件】が」
「普通にあたしらより売れそうで切ない」
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