第3話 素材


「そろそろわたしたちのキャライメージを掘り下げておくべきだと思うわ」

「身も蓋もないな」

「わたしたちが12話こっきりの低予算深夜アニメで口パクを躍動させるにもまずはビジュアルが不可欠だわ」

「謙虚と夢を組み合わせたまったく新しい失礼。

確認なんだが…ビジュアルが備わったとして、あたしらのどこをアニメさせるんだよ」

「ザンギエフかしら」

「躍動するザンギエフはもうストリートファイターのアニメだからさ…。

いやその前に、ザンギエフをあたしらの一員みたいに扱ってんじゃねえ」

「ではわたしたちが仲良くカインに乗ってるアニメはどうかしら」

「人間がカインに乗っても食われてるようにしか見えないと思う」

「丸呑みフェチ垂涎のアニメになるわ」

「魔界にコンパスを向けてどうする。

あとそれ呑まれるのあたしらだからな?」

「こんな事もあろうかと、濡れたら溶ける服の準備ができてるわ。

転ばぬ先の杖というやつね」

「立つ前に転ぼうとしてるんだが」

「さっそく始めましょう」


「キャッチコピーからイメージ構築するわ」

「どれ」

「筋肉はゴリラ」

「うん」

「牙は狼」

「うん」

「燃える瞳は原始の炎」

「バイオレンスジャックですね」

「わたし女よ」

「おまえが自分の女らしさ三行で地獄に捨てたんじゃろがい」

「描写不足だったかしら。乳は牛」

「おお!」

「足はサラブレッド」

「おお!」

「尻は寺沢武一」

「他に言いようはなかったのか?」

「顔はジャック」

「バイオレンスジャックじゃねーか」

「いいじゃない。

ジャックかっこいいわ」

「ジャックはカッコよくてもおまえが構築したバケモンはバケモンだ」

「次はあなたね」

「そのままいくのか」

「関東の魔王スラムキングとかどうかしら」

「それやっちまったらただの二次創作だよ!

ジャックとキングのバイオレンス茶番劇だよ!」

「言葉を練りなさい。

そんなありきたりなツッコミじゃなく

『オ〜ッ!』とか『ムッ!?』をしっかり多用していくのよ」

「なぜ執拗に永井ワールドを構築させようとする…?」

「ムッ!?」

「会話が止まるからやめろ」

「これでビジュアルは完成かしら」

「念の為聞くが、もしかして今あたし武者鎧着てる?」

「それはもちろん」

「それはもちろん!?」

「鎧が無かったらどうやってあなたの筋肉を抑えつけるのよ」

「当たり前みたいにスラムキングの設定引き継がさんでくれ!

筋肉はほどほどに!」

「じゃああなたスラムキングの娘ね」

「そんなのいたけど!

正直萌えないやつ!」

「彫刻のように美しい筋肉だわ」

「そもそも筋肉売りにしたくねーんだわ。

あたしも一応女キャラなんだし。

カッコカワイイとかエロカワイイがいい」

「ならキャッチコピーから練り直してあげるわ」

「たのむ」

「大きく」

「うん」

「ぶ厚く」

「うん」

「重く」

「うん」

「そして大雑把すぎた」

「それはまさに?」

「鉄塊だった」

「話聞いてた?」

「筋肉ではなくなったわ」

「鉄塊になったらダメだろ!」

「オ〜ッ!」

「鉄塊に感嘆するな!」

「注文が多いわ」

「理不尽なお通しを断ってるだけだ。

まあいい…そう言うなら単純なオーダーにするよ。

いい女にしてくれ」

「わかったわ。

構築開始。

あなたの機体下部には死角があります」

「下部が死角になってない人間がいるか?」

「加速力がありすぎて普通の人間では乗りこなせません」

「それギャプランじゃね?」

「中を開けるとあら不思議。

いい女が飛び出してきました」

「それギャプランだよ!」

「知らない子のために補足すると、ギャプランって


         巾

       

こんなのよ」

「わかんねえって」

「満足いただけたかしら」

「発注通りやってください」

「中身はいい女よ」

「おまえこのままだとギャプランの横でぶつぶつ呟いてる女体化ジャックだけどいいのかそれで」

「ムッ!?」

「どっちなの?」

「わたしは満足よ。

ああアニメ化が楽しみだわ」

「低予算アニメのギャプランは置物なんだろうなぁたぶん」

「あとは名前ね。

わたしがバイオレンスであなたはスラムよ」

「全てがどうでもいい。

なぜならギャプランだから」

「ふふふ…そのレイプ目セクシーだわ。

いい女だわ」

「モノアイです」

「今回は以上よ」

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