第15話 新しい常識

 異世界というのは“結局何でもあり”ということなのかもしれない。

 事実、クソジジイのお陰でカレンは生きているし、事は何も起きていないのだから。

 でも、それは引き延ばしたことでもある。

 ……俺が何かを変える術を見つける……ね。


 俺は、自身が使っていた部屋に当然のように入り……今はベッドで瞑想をしている。

 「応援で何か変わるものなのかね」

 こうやって……改めて考えると不可能だもんな。

 ラノベの世界とか、アニメの世界とかであれば『これで変わるんだー!』的な出来事があるんだけど……異世界でも別に全てが好転するとは限らねえもん。

 「……ま、友好度はバグってるまんまみたいだけど」

 ……カレンが俺の部屋をノックして入ってくることで、改めてクソジジイのバグらせた世界が本来の世界でも––異世界でも異常なのを改めて実感した。


 カレンが部屋に入ってきて、特にコレといった会話はしないで……抱き着いてきているのを、俺もギュッと抱きしめてこの日は終了した。


 


 翌日。

 俺は巻き戻し前とは違い––この国の勇者が集う場所へと足を運んだ。

 「ここ?」

 そこには、話には聞いていた集会所よりも……何か汚い場所だった。

 ……ま、まあ?趣がある……はず。

 とりあえず、中にはいろう。

 ドア式ではなく、引き戸の入り口をくぐり中に入った。

 「こ、こんちは」

 「……君は誰だ?」

 「えーっと……」

 入口から近くに座っていた、俺と同じくらいの……若い青年が聞いてくる。

 直接会ったことはなかったし、面識ないもんな……。

 「タ、タカシって言います……な、なんて言えば––」

 「君か!!」

 ……俺の肩掴むの止めてくれ、何か暑い。

 俺の身動きをとれないようにした青年は……俺の耳を疑う言葉を発した。

 「君がこの国の指揮やってくれるんでしょ!?」

 「……はい?」

 よくわからないんだけど。

 「王女様が言ってた助っ人でしょ!?何でもできるスーパースターって聞いたよ!?」

 俺は〇チローか!

 「いやいや!どう聞いたんですか!」

 「え!?王女様とかエルフのイリアさんが言ってましたよ?」

 ……おい、イリアさんどういうことだよ。

 「ま、まあ……やれることがあればしますけど」

 「じゃあ!今日からよろしく!!」

 そう言うと、青年は俺に集会所と球場を案内してくれた。

 「あ、自己紹介が遅れました。私はエレンと申します––」

 球場内の案内をしつつ、エレンという青年は自身の話をし始めた。

 「この国に生まれて、初めてのヤキュウは観戦してたんですけど……あれはないですよね!本当に卑怯な手を使ってくるくせに、ドヤ顔するとか。ないっすわ」

 「……本当ですね」

 多分、巻き戻したけど……あれが本当だったら、最低すぎるもんな。


 「だから、今度は僕達が成敗して!より良い生活にしたいんです!!」

 

 エレンはそう言って、整備ができていないブルペンを見せてくれた。

 ……カレンの聞いている話以上に貧乏なんだな。


 

 「––ってなわけで、今日からよろしくです!!」

 そう言って、俺は残りの勇者達の紹介をされ––この巻き戻しの世界がスタートした。

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