第6話 告白と模擬戦

 俺は……死ぬ前にハマった、今でも人生のバイブルと思っているゲームがある。

 【学園魂~あんたの事を食べちゃいたい!?~】

 という、大分昔に流行りもしなかった……ギャルゲーが発売されていた。

 それを、恋愛経験がない俺は1日10時間近く攻略するためにメモを取り、1人1人丁寧に攻略していったものだ。

 そんな、通称“ガクダマ”に登場するキャラを攻略できたか確認できるのは……主人公の言動が数字化され、プラスであればハートの器に赤い液体としてその分を加算され、マイナスであれば減っていく。のだが……。

 

 今、俺が王女カレンに言った言葉の数字は……“miss!!”だった。

 

 「ど、どうなさったの?」

 俺の意味の分からない言葉を聞き返すカレン。めっちゃ恥ずかしい。

 顔から火がでるような顔になっているのだが、俺が悪いわけじゃない!

 「え~えっと、これはですね~」

 そそのかされて言ってしまっただけなんだけど、言った後に理解してるからマジで自分が恥ずかしいんですけど。


 『すいません~』

 少しだけヘラヘラと脳内に語り掛けるイリアさんに怒りたくなった。でも、これで色々な理解も多少できた。

 

 …やはり、成功するか失敗するかは俺の能力だけではなく、その人の能力や感情、場所等ありとあらゆる条件があるのだろう。

 ただ、俺の能力…煩悩を捨てて言うと成功に近づくことができる?……のが、この職業なんだと思う。



 『ちなみに、この職業って数値化できない場合でも必ずダメだったってことじゃないですよ?』

 ほお?

 『タカシさんの世界で言うところの…“フラグ”ってやつです』

 なんで、イリアさん知ってるんですか?

 『私は何百年も生きているんですよ?』

 …答えになってなくないか。


 「さ、ご飯にしましょ」

 王女は未だにハテナ顔でいるが、メイドのルーナさんは食事を運んできて、諸々の会話を終了させた。

 それでも、俺は……恥ずかしい。改めて考えて、本当に恥ずかしい。

 「ところで、タカシさん。なんで、お嬢様に愛の告白させようとしたんですか」

 「ぶっ!」

 口に運んでいた米を吐き出した。

 「お嬢様もお嬢様ですよ?明らかに誘っているんですから」

 「私のせいですか?」

 ……俺の顔をウルウルみないで。

 「まあ、私がお嬢様の恋愛事情等に口出しは致しませんが……そういう関係になるのであれば、段階を踏んでください。でないと、お嬢様の純血が汚れてしまいます」

 「…す、すいません」

 なんで、俺が謝るんだ?いや、何か諸々と話が展開しすぎなんだけど。


 「とりあえず!お嬢様は渡しませんっ!」

 ……あ、これが本音なのね。



 王女のカレンはルーナの言葉の意味を理解し、白い肌は耳まで赤くなっている。

 それは、それで可愛いんだが……。

 「え…い、良いよ?」

 本当に小さい声だったので、俺は聞き逃していた。




 今は、与えられた部屋で一人でのんびりとしている。

 ……若い男が一人ですることって……いや、おかずないし。

 なので、俺は今日の事とか今までのことを近くにあったメモ帳に書き記してみた。

 「あ~……なるほど。完全に理解したわ」

 理解できない脳の処理速度に嘘をついて、今日の仕事を終了させた。

 「さ、寝よ」

 そう思って、毎日ルーナさんが綺麗に整えてくれているベッドに飛びこむと––

 「起きてる?」

 ドアがノックされる音と共に、カレンの声が聞こえた。

 「ん?カレン?」

 「はい。あの、今日の事……」

 「…あ~」

 「と、とりあえず、試合勝ちましょう!」

 「そ、そうだね!」

 ……ヘタレな俺だけど、もしかして……カレンもヘタレなのかもしれない。


 『似たもの同士ですよね。お人好しだし』

 ……イリアさんうるさいですよ。


 

 翌日、決戦まで2日と迫った。

 「模擬戦をします。タカシさんは応援の練習も兼ねて両チームを応援してみてください」

 ルーナさんに言われ、この国の中央部分––勇者が集う場所の隣に作られたヤキュウ場へと足を運んだ。

 この国の王女自身が、監督としてチームを率いるということなので。

 俺、カレン、ルーナさん。そして、鏡から出てきたイリアさんの四人で模擬戦を見守る&練習することにした。

 前にイリアさんに“そっちの世界のヤキュウと同じ”という風には聞いていたが、競技場内へと入ると……まさに、その球場の形だった。

 「へぇ~…なんか、昔の市民球場みたいだな」

 広島の…今はメジャーリーグのような素晴らしい球場の前の姿と似ている。


 「今日は、人数も若干足りないので…3回制にしましょう」

 カレンがそう言うと、グラウンドに集まっている勇者たちに模擬戦の概要を説明していた。

 説明が終えたのか、数分後に「お~!」だったり、言語化できない言葉を発する異人種達を見て……自分の仕事がどんだけ大変なものなのか、何度もきた再認識をしてしまった。


 「…あれ…?なんて応援すればいいんだ…?」


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